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︎︎  作者: かきくけ子
10/12

あなたは全部知ってるみたいに笑ってた。

今回は、ミカの“違和感”に焦点をあてました。

今まで見せなかった彼女の「一瞬の沈黙」や「妙に優しい言葉」が、今後への伏線になっています。

「ユナちゃん、今日の君、ちょっと元気なかった?」


夕暮れの空が、いつもより赤く見えた。

放課後、帰り道。イヤホンの奥からミカの声が軽く跳ねる。


 


「……別に。いつもどおりだよ」


「うそぉ、いつもどおりの“超陰キャ”さんは、もっと無の境地って感じだったのに」


「……ひど」


 


そんな軽口を交わすやりとりは、最近少しだけ、日常になっていた。

ふと、誰かに「今日なにしてた?」って言ってもらえること。

「別に」って返せることが、どこか安心だった。


 


でも、今日はミカの声が少し違って聞こえた。


 


「ミカ……さ、今日のバグ、強かったよね」


「うん。ていうか……最近のバグ、明らかにおかしいよ」


「……うん」


「現実世界と“あっち”が、少しずつ重なってきてるんだと思う」


 


(あっち?)


そのとき、イヤホンから少しだけノイズが混じった。


「ミカ……?」


「あっ、ごめんごめん!こっちの機材がちょっとバグってたー」


「……ミカって、どこにいるの?」


ユナの声に、少し間があった。


 


「んー……今は、遠く。ちょっと寒いとこ」


「……北の方?」


「そうそう、北海道の上あたりってことで」


軽く流されるけれど、なぜかその嘘にユナは気づいていた。


本当は、もっと遠くにいる。

いや、“どこにもいない”のかもしれない。


 


ミカは、いつも「なんでも知ってる」みたいな声をしていた。


けれど、今日のミカの声は、ちょっとだけ寂しかった。


 


 


* * *


 


その夜。

ユナは夢を見た。


見知らぬ夜の街。

そこに佇む、自分そっくりの“ラピス”がいた。


けれど、その目は濁っていて、なにかを失った顔をしていた。


 


「また、壊しちゃったね」


 


その声に、ユナは何も言えなかった。


何を壊したのか。

誰を、何を、失ったのか。

自分にはまだ、わからなかった。


 


 


* * *


 


翌朝。

学校に向かう途中、ユナはコンビニの前で足を止めた。


ニュースが流れていた。


「“空中に浮かぶ少女”を目撃したという報告が多数寄せられています──」


 


「またか……」


最近、目撃情報が増えている。


それでも、誰もユナだとは気づかない。


──でも、もう長くは隠し通せない気がした。


 


(いつか、全部バレる?)


(それとも……終わっちゃう?)


 


ふと、イヤホンからミカの声が聞こえた。


 


「ユナ。もしも、世界がぜんぶ敵になっても、ミカはユナの味方だからねっ」


「……急にどうしたの?」


「んふふ、なんとなく〜。言いたくなっちゃったの」


 


そして、続いた言葉は、ユナの胸にひっかかりを残した。


 


「もし、ミカのこと……ちょっと変だなって思っても、ぜんぜん気にしないでいいからね」


 


「……え?」


 


けれど、それ以上は何も言ってくれなかった。


ミカの声は、またいつもの明るさに戻っていた。


 


──でもユナは、なんとなく思った。


ミカは、知ってる。

この先に起こることも、ユナの運命も──


そして、ミカ自身の終わりのことも。


 


ユナは、そっと胸に手を当てた。


今日も戦う。

でも、心のどこかで“終わり”が近づいていることを、感じていた。

ユナとミカの関係に、少しだけ影が差しました。

ミカの正体については、次回からさらに深掘りしていきます。


「すべてを知っている人間の優しさ」は、ときに残酷で、でも誰よりも温かい。

そういうテーマを意識して、物語は終盤に差しかかります。


次回、第11話――どうか最後まで見届けていただけたら嬉しいです。

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