第一話 転生?
今日は月曜日、会社に通勤しなければいけないので、けだるい体をなんとか起こす。
「くああ…」
チュンチュン…ピヨピヨ…
「ん…?」
俺は家で寝てたはず…
辺りを見渡すと、広大な草原。
ここはどこなんだ…!?
おかしい、こんな場所は目にした事がない
俺はどこに来てしまったんだ?
来てしまった、と言ったが移動した記憶はない。
なんだ?夢遊病か?
しかし、俺の家は東京のど真ん中、こんな青々とした場所なんてないはずだ。
草木が、サワサワと音を立てている。
あ…なんか癒されるかも。
……
のんびりしてる場合じゃないな。
きょろきょろと辺りを見渡すと、自分の背中側に村があることに気がつく。
村だ!俺は少しほっとした。
村があると言うことは、人がいるはずだ!
とりあえず村に向かって、村人にここがどう言う場所なのか聞いてみよう。
そうだ、そうしよう!
名案だ!と思いバッと立ち上がる
あれ?
なんだか視線がいつもより低い。
身長は170センチはあったはずなのだが…
この視界から察するに、130センチにも満たないだろう。
そこで、俺は何かに気付いた
「ほあ!?」
自分が、可愛らしいピンク色のスカートを履いている事に
何かがおかしい、いや最初からおかしかったのだが。
自分に女装癖はない
とてつもなく恥ずかしい…!
着替えたいが、他の服はない…!!
おろおろとしていると、また俺はとある事に気付いた。
自分の声がいつもより高い…?
試しに少し声を出してみる
「あ…あー?」
自分から、かわいらしい声が聞こえてくる
「なんで声が高いんだ!?」
……ああ、かわいい。
昨日までの俺の声は特に可愛いわけでも、かっこいい訳でもない平凡な声だった。
服が変わっていたのはまだしも、声や身長はもう意味がわからない。
現実的に考えてありえないことだ。
「何してるんだ?」
急に近くから人の声が聞こえてくる
「ひゃあっ!」
びっくりして変な声を出してしまった。
声の主を見るために背後を振り返ると、身長2メートルはあるであろう大男が立っていた。
「だ、誰…?」
ああ…俺の声、かわいい…
「ああ?どうしたんだ?」
大男は、少しきょとんとした後に、にやりと笑みを浮かべた。おそらく俺がふざけていると思ったのだろう。
「お前の父親の、カルジャだろ?父様のこと忘れちまったのか?ひどいなぁ」
ち、父親ァ!?
俺にはこんな父親は居ない。
こんな、というか存在していないはず。
聞いた話だと、俺が生まれた一年後に両親は事故で亡くなってしまったらしい。
その後は祖母に育ててもらっていたのだが…
どういうことなんだ!?
そもそも、ここはどこなんだ!?!?
ああ…色々考えすぎて頭がクラクラしてきた。
俺が考え込んでいると、カルジャと言う俺の父親を名乗る男がまた喋りかけてきた。
「ああ、そうだ!お前に伝えたい事が……ってカヤ!?大丈夫か!?」
視界がぼやけたと思ったら、体からフッと力が抜けていって、空を見上げていた。
――――――――――――――――――
「…知らない天井だ」
一度言ってみたかったセリフをついに言えて、少しテンションが上がる。
気がつくと、知らない部屋のベッドに寝かされていた。
どうやら、気を失っていたらしい。
ここはどこだろう、カルジャ?とやらが連れてきたのだろうか。
木造のほっこりとした雰囲気の部屋だ。
可愛らしいうさぎのぬいぐるみや、ふわふわのクッションが置いてある。
俺が住んでた家は、自分があまり物を買わない事も相まって、殺風景だったので少し見慣れない。
きょろきょろと辺りを見渡していると、そこに手鏡がある事に気がついた。
そうだ!今自分はどうなってしまっているのだろうか。
声も身長も変わってしまっているはずだ。
ドキドキしながら鏡を覗いてみると、
…そこには可愛らしい子供が写っていた。
!?
驚いたような顔でこちらを見ている。
「うええええええ!?!?!?!?」
にわかには信じ難いが、俺は子供になってしまっているようだ。
アポトキシン4869でも飲んだのか?
さらに、子供は子供でも、男じゃない。女の子だ。
まさか自分がこんな事になるとは夢にも思わなかった。
どうりで声は高いし身長は低いしスカートを履いているし…。
ん?
突然ピンときた。
この展開は何か聞いた事がある。
あれだ。
俗に言う異世界転生と言う物ではないのだろうか。
友人が異世界転生モノにハマっていたので少し知っている。
しかし、転生というものは大体トラックに跳ねられるやら線路に落ちるやら、何かアクションがあってから転生する物じゃないのか?
俺はただ寝ていただけなのに。
ああ、だめだ、考えすぎて知恵熱が出そう。
ぐるぐると考えていると、ガチャ、と言う音が聞こえた。
カルジャが部屋に入ってきたようだ。
「おお!カヤ!目が覚めたのか!」
言葉を返す暇もなく、ガバッと抱きつかれる。
く、くるしい…!!
「いきなりお前が倒れるから心配したんだぞ!」
骨がミシミシと鳴っている気がする。
「カ、カルジャ?さん、話してください…!苦しいです」
「えぇっ!!?」
カルジャが素っ頓狂な声を上げた
「えっ?」
つられて俺も声をあげる
「カ、カヤ…?」
おそらく、カヤというのは俺の名前なんだろう。
とりあえず返事をしてみる。
「……はい?」
「な、なぜそんな他人行儀に話すんだ…!?どこか頭を打ってしまったのか!?数刻前まで父様、父様と呼んでくれていたではないか!!しかも敬語で話すなんて…!!!」
と、慌てたように大きな声で叫ばれる。
少しうるさい。
どうやら、敬語はまずかったようだ。
「え、ええと…。ごめんなさい!カヤ、寝ぼけていたみたい!」
ニコッと微笑んで返事を返す。
これでいいのか…?ドキドキとしながら敬語を外してみた。
「ふう…!カヤ、あまり父様を驚かすな」
カルジャは少しほっとしたような顔でこちらを見ている。
これであっていたようだ。俺も安心する。
「あはは…ごめんなさい。」
「ああ、そうだ!朝飯を持ってきたから食べなさい。」
「あ、うん…!」
「父様は仕事に行ってくるからな。倒れてしまったから、今日は一応安静にしてるように、家から出たりするなよ?」
はあい、と返事をすると、カルジャはふっと微笑んで家から出ていった。
…
「とりあえず飯を食べるか。」
ぽつりと独り言を言う。
食べ終わった。食事はパンとスープと何かの木の実だった。
パンはとても硬くて、噛みちぎるのに苦労したがスープはとても美味しかった。コンビニ弁当以外の食事はかなり久しぶりだったので、心に沁みる…。
久しぶりの安寧に心を休めていると、ふと重要なことを思い出す。
そうだ、のんびりとご飯を食べている場合ではない!
これは、転生してしまったと言う事でいいのだろうか。
まあ十中八九そうなんだろう、こんな事それ以外でありえない。と、自問自答をする。
もし自分の身にこんな事が起きてしまったら、九割の人間は元いた世界に戻りたいと願うだろう、だが俺は違う。
なぜって?なぜなら、俺は所謂、社畜だったからだ
恋人も居ない、両親は生まれてすぐに交通事故で帰らぬ人に、育て親の祖母も数年前に他界、友達は居るには居るが、仕事が忙しくて遊べない。
……
自分で言っていて悲しくなるが、要するに生きていて楽しい事が一つもなかった。
だから、今回の件について俺は悲しむどころか好都合だと考えている。
仕事から逃げられる訳だからな。
……
よし!
今俺は決心した。
拳を上に突き上げ、言う。
「今世では、自由気ままに生きるぞー!」
…
……
声可愛いな。
初めて描く小説で色々と拙いですが、優しく見守っていただけると幸いです。




