彼
高校の時から好きな子がいる。
その子が好きになるのは年上、顔好し。遊び人タイプだ。
振られる度に彼女は俺を呼び出す。
そして俺は彼女の話を聞く。
大学は同じ大学、就職してからも電話したりして、俺たちはいい友達だった。
ある日、俺は彼女の彼氏が他の女と一緒にいるのを見てしまった。浮気かと思って近づくと、やつの指にきらりと結婚指輪が光るのをみた。隣の女性も同じ形の指輪をしていた。会話に耳を済ませば、驚きの事実。二人は夫婦だった。
俺は慌てて彼女に電話をかけた。だけど信じてくれなかった。
後日、彼女が泣きながら電話してきた。
彼に既婚か確かめたらしい。
素直に既婚なことを認めたけど、関係は続けたいと言われて、殴ったららしい。
彼女にどうして既婚者しかよってこないから聞かれて、正直に答えてしまった。
後日、数ヵ月ぶりに彼女はすっかりイメチェンしていた。
それもそれで可愛かった。
黒髪、眼鏡でも既婚者がよってくると相談されたので、素直に答えてしまった。
それから数週間後、また電話がかかってきた。
会うことになって、また聞かれたから頭にきて、壁ドンして彼女の唇を奪った。
「俺は独身。ずっと独身。君のことをずっと見てきた。俺はだめなの?」
ずっと我慢していた気持ちを吐き出す。
「わからないよ。だって、あなた
は私の友達だったから」
答えはやっぱり予想通り。
こぼれだした俺の気持ちは止まらない。
「だったら今日から友達やめる。俺のこと意識してみて」
彼女は答えなかった。
もう終わりだ。
彼女のいい友達には戻れない。
俺は彼女の前から消えた。