兄の恋
「振られちゃった」
「よく頑張った」
戻ってきた妹の肩を抱いて、慰めるのは兄の俺。
妹なんて思ったことないのに、三つ下の血の繋がらない妹。
両親がバツイチ同士、それぞれ子連れで結婚。
最初に彼女にあったのは十歳。俺が十三歳。
おかっぱに大きな瞳の彼女はとてもかわいくて一目で恋に落ちた。
だけど、彼女は俺の妹だ。だから気持ちを押さえ続けた。
兄としてしか慕われない。
だけど、ブラコンではなくて、次々に彼女は恋する。
高校二年生、俺が大学二年生。
彼女はまた恋した。
かわいい彼女の恋はいつも叶う。
だけど、今度の恋は違った。
寄りにもよって、俺の友達を好きになった。
俺とは違って、がたいのいい男だ。やつは幼馴染みにずっと恋をしているが、告白できずにいるヘタレだ。
俺は余計なことをした。
奴に発破をかけて告白された。結果は大成功。二人は付き合うことになり、彼女は失恋。
だけど、果敢に告白。
そして降られた。
「世の中にはたくさんの男がいる。また探せばいいさ」
俺は思っていないことを口にして、慰める。
俺は?俺を選んでくれたら、ずっと大切にできるのに。
そう願いながらも、口にはできない。
俺こそヘタレだ。だけど俺の気持ちは口にできない。嫌われたくないから。兄と思っている俺に告白されるなんて、嫌だろう。
軽蔑されたら立ち直れない。
だから、俺は今日も兄として振る舞う。