表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

800文字ショートショート

呪いが解けたあとのハッピーエンドはおとぎ話だけ

作者: 一色 良薬

 ある朝。

 夢から目覚めると自分の顔がカエルに変わってしまっているのに気づいた。

 グロテスクな緑の光沢を持った皮膚。可愛い象徴の限度を超えた巨大なギョロ目。喋る度に風船のように膨らむ喉。

「感染症ですね。巷で人間が動物になってしまうウイルスが話題になっていますよね」

「あの突然彼女が犬になってしまって鳴きやまなくなってしまったニュースとかの……?」

「はい。貴方の場合はカエルのようですね。男性のみに症状が現れる“カエル化現象”というものです」

 病院からの診断に唖然としながら帰宅した。

 日常生活に関しては今まで通り過ごしてもらって別状はない。食事も変わりはなし。処方する薬もないらしく、ただ“カエル化”から戻るのを待つのが対処法だという。

「そんな! なんとかなりませんか。ここに来るまでもいろんな人から気味悪く見られて困っているんです。このままじゃ人生に悪影響だ」

「対処はあるにはあるんですが」

「教えて下さい!」

「それが……“カエルの状態で好意を持ってくれた人とキスをする”というものでして」

 苦しげに言った医師の気持ちも分かる。誰が好んでカエルとキスをしたがるというのだ。自分だったら恋人だったとしてもキスはしたくない。

 最愛の彼女であるまひるも、同じ考えだろう。だからこの呪いと半永久的に付き合っていくしかない。

「いいよ。キスだよね?」

「本当に? 嫌じゃない?」

「だってきょーくんはきょーくんでしょ」

 顛末を伝えた上でのまひるの反応に面を食らってしまう。にこにこと笑っている彼女からは嘘は感じられない。

 本当にキスしてくれるのか? 後光が見えて女神にしか思えない。

「カエルのきょーくんって新鮮だね。その大きな瞳に見つめられるとドキドキしちゃう」

 ゆっくり近づいたまひるの柔らかい唇がカエルの唇に触れた。

 途端、カエルの顔が脱皮するように元の人間の顔が剥き出された。

「や、やった! ありがとう! まひ」

「うわ……何今の。気持ち悪い」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ