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すこし昔の話をしよう。

私はずっと昔からしーちゃんにくっついてばっか過ごしていた。


しーちゃんがあっちに行くといえば私もついていく。こっちに行くと言えば私もついていく。

ずっとそのまま。いつしか、私の人生においてしーちゃんは絶対に必要で、他の誰にも変えられないほど大きな存在になっていた。いや、何らいなかったら死んでいるかもしれない。


昔は当然ずっと一緒にいたいのと、今一緒にいられることの喜びですぐハグしたりたまにキスしたりなんて平気でしていた。

ただ、こんなことが許されるのは小学生に入るまでだと思っていた。

だけど、しーちゃんは意外と今までの関係を保ってくれていて、私はなんとなくずっとこのままいられるのではないか?なんて心の奥底で期待していた。


まあ、そんな未来がやってくることはなく、小学校中学年くらいになって頃についにしーちゃんは今まで通りの行動を許してくれなくなった。

避けられたのだ。たった数時間だけど。

今までも学年が違うので一緒にいない時間がほとんどなかったわけではなかったので私は前々から覚悟していたし大丈夫だろうと勘違いしていた。


実際は、覚悟していたはずなのに持ったのはたった数時間。

数時間したらしーちゃんが2度と私と一緒にいてくれなくなる気がしたり、その他にもたくさんの嫌な考えが頭をよぎった。

嫌な想像ばかりしていると自然と涙が溢れるもので、涙が出るにつれさらにネガティブな思考は加速してまた泣き始める。


そしてしまいには行かないで、行かないで何て泣き叫んでしーちゃんが折れてまた構ってくれるようになった。

ただ、やっぱり元通りになんてなるわけがなく、ハグもキスも許してもらえなかった。

手を繋ぐのくらいは私からやれば許してくれるが自分からは決してやってくれなかった。


そりゃあ最初はすごくショックもうけたし、自分の覚悟はなんだったのか昔の私に問い詰めてやりたくもなった。

でも、私がこうやって考えてるだけじゃしーちゃんはどうせ何も変わらない。だから、私が変わらなきゃ。


いつからかそう考えるようになった。


それからは簡単だった。

アプローチをしまくるだけの日々。もちろん、そのアプローチをするのは私がただしーちゃんをいたいだけなのもあるが、より強固な絆を得るには恋人になるしか方法が思い浮かばなかったのだ。


ただ、そんな雑な作戦はそうそう通るはずもなく、いつも軽くあしらわれてばっかり。

そのことを友達に相談したら「奈々美は本当にしーちゃんさんを好きなの?ただ依存してるだけじゃない?」と言われてしまった。


今考えればもっともな話だが、当時のは私はそんなはずはなく、ただ純粋にしーちゃんが好きなのだと思い込んでいた。

ただ、そんな思い込みは時間と共に簡単にくずれ、私が中学三年の時、しーちゃんが同じ学校にいなくて、会おうにも会えない状況になった時、恐ろしいほど自分がしーちゃんに依存していることを思い知らされた。


そう知ったと同時期ぐらいに、告白をたくさんされ始めるようになった。

中学3年生だから受験にみんな必死だと思ったのだが、実際はそんなことはなかったらしく、結構いろんな人が私に告白してきた。


そのことをしーちゃんに話せばしーちゃんは嫉妬してくれるかな?なんてバカな考えが少しは浮かんだが、すぐに告白してきた相手ごと切り捨てた。


ただ、その中に1人だけものすごく粘着質で鬱陶しい奴がいたけど、塩対応かましているうちにいつの間にか消えていった。

ただ、問題があるとすればそのことを私の友達が後から毎回毎回しーちゃんに伝えていたそうで、心配させてしまっていたことを初めて知った。


だから、それからは自分の依存していると以外のほとんどをしーちゃんに全部伝えようと努力した。

けれど、やっぱりしーちゃんは変わらない。いっつものらりくらりとかわしてのける。


そんな、進むことも戻ることもない状態が続いているうちに、ワタシはついに高校生になった。

ただ、高校系になろうが何ら現状が変わることはなく、前と変わらずの時間を過ごしていた。


いつまでも気づいてくれないストレスから色んな運動部のスコットに参加したりしてちょくちょくストレスを解消するなか、新たな危険因子が現れた。


そう、それが3年の先輩、高坂先輩だ。

あの先輩は何かとハイテンションだが優しいししーちゃんのことも可愛がっている。

だからこその危険だ。


ヤタら距離が近いし私にはわからない2人だけの話をしょっちゅうするし、本当に先輩にしーちゃんを取られるのではないかと、最近思い始めていた。


少し時は進んである日のお昼休み。

私は1番にしーちゃんを迎えに2年の教室に来た。

そして、その時しーちゃんの友達がそう叫んだのだ。


『ないとは思うけどお前の告白がOKされるかもなっ!!!』


最初はこう思った。

しーちゃんじゃなくて、他の誰かの可能性があると。でも、考えればその人が話していたのはしーちゃんただ1人だった。

次に思ったのはその告白の相手が私なのでは?というものだった。

ただ、それはあり得ないとすぐに悟った。


だって、友達さんの言い方から考えるに、その人から告白をOKされる確率は低いものだと推測できる。

それなら私はありえない。こんだけ好き好きアピールをしているのに告白して成功しないとかどう考えてもできるわけがない。


そうなってくると、残された選択肢全ては、私にとって絶望でしかない。

そんな絶望から、昔からの癖でついつい悪い方向にばかり考えてしまい泣いてしまう。


その後も高坂先輩の乱入だのなんだの色々あったにはあったが、そんなことは私の頭には一切入ってこない。

私はしーちゃんが私の前からいなくなることへの恐怖で完全に支配されていた。


胸が尋常じゃないくらい痛い。本当に死ぬのではと錯覚するほどに。

それと同時にものすごく息苦しい。ろくに呼吸もできない。


ただ、まだ確定してすらいない未来をかってに想像するだけで、しーちゃんが私の前からいなくなるのを想像するだけで死んでしまいそうになるなんて…私は、どこまでしーちゃんに依存しているのか、自分でも全くわからなくなってきた。


しーちゃんと放課後にショッピングモールに行くことになった時も、怖くてトイレにこもって震えていた。

そのせいであんまりしーちゃんを待たせるわけにはいかないと自分に言い聞かせなんとかしーちゃんのとこに向かう。


しーちゃんと校門を出るや否やしーちゃんから手を繋いでくれた。

あり得ないと思っていたからこその不意打ちが私に突き刺さり、つい小躍りしてしまいたくなるくらい嬉しかった。


私はどうしてもその手を離したくなくてぎゅっと握り締め、はなそうとしても必死で抵抗した。

スタベによったあと、人があまりいない場所まで行くとまたしーちゃんが手を離そうとしてきた。


私はつい反射的に軽く怒鳴るような形で抵抗の意志を示してしまった。

やってしまった後で私の中で後悔が渦巻いたが、しーちゃんはあっさり受け流して私を説得してきた。


しーちゃんが言ってくれた条件は私にとって何ら問題はなく、私がしーちゃんと手を繋ぎたくなくなるわけがないので安心して話を聞こうとした。


しかし、しーちゃんの口から出た言葉は、私に大きなショックを与えた。


告白だった。


私は昼休みに話していた好きな人が私だったことに嬉しさを隠そうにも隠せないのだが、どうしても気になる点がある。


「何度も勘違いしそうになった?」


勘違いさせるために必死こいて私はアプローチしたのに、それをただの幼馴染で片付けようとするの?


「どうせ俺は見向きもされてないって思って」


見向きもされてない相手がこんなに関わってくると思ってるとか、ちょっとは現実の幼馴染を見てほしい。


そして、トドメの「昔と何も変わってない」の一言で私の怒りは爆発した。


「なにが昔と何も変わってないだ!!変わってないのはしーちゃんでしょ!!ずっとずっとずっとずっとアプローチし続けて!なんで勘違いひとつしないの!!なんで見向きもされてないって思ったの!!バカなの!?普通幼馴染でも異性じゃ好きでもなきゃこうまでして関わるわけないでしょ!!!ばか!!しーちゃんに好きって言ってもらうためにどれだけ苦労したか知らないでしょ!!というか!しーちゃんは知ろうとしなかったでしょ!!!それなのに何生意気にものいってるの!!もうほんと意味わかんない!!!バカ!!!私の今までの努力が全部無価値なものに見えてきた!!もうほんと嫌!!!」


みたいなことを延々と怒鳴り散らした。

今考えれば相当酷い内容だし、住宅街でやってれば近所迷惑になるレベルの大声で叫んでた。


せっかく好きと言ってもらえたのに、こんなこと言ってしまっては台無しになる可能性のが高いのに、それほどまでにムカついていた。


そして、私は唖然としているしーちゃんの唇に思いっきり自分の唇を押し付けた。

強引なキスだが、これで流石に伝わっただろう。


でも、今ここにいると嬉しさと怒りでごっちゃごちゃになりそうなので、私は


「今のが私からの告白の返事だから!!!今のでもわからないとか抜かしたら!!本当にもう絶対に許してやんないから!!!!」


とだけ叫んでから走りながら家に帰った。

そしてこの時、ようやく気付いた。

私のこの気持ちは正真正銘の恋であると同時に、恐ろしいほどの依存性を持った明らかに歪な恋だと気づいた。


でも、さっき来たメールを見る限り、しーちゃんが私からいなくなるなんて未来は当分起こらないだろう。

そう考えるとついつい頬が緩み、これからのことを勝手に想像してはニヤニヤしてしまう。

でも、きっとしーちゃんはこんな私でも愛してくれる。だから、しーちゃんにもっと私を必要としてもらって、共依存と呼ばれる形になってほしい。

そう心から願った。

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