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と、決めたはいいものの、放課後のことで頭がいっぱいで午後の授業が全然頭に入ってこなかった。


告白したとして、OKされるわけがない。言ってて悲しくなるけど、それは1番俺が理解している。

ただ、そう理解して入るのに、どうしても「もしかしたらOKされるかもしれない」と期待している自分がいる。


期待するだけ無駄だと自分に言い聞かせるも、また期待してしまう。

そんなことを繰り返しているうちに、いつの間にか授業が終わり、放課後になってしまった。


奈々美にLIMEで『いつも通り校門で待ってる』と言っておいて、校門前で待つ。

少ししたら一年の下駄箱から奈々美が歩いてきた。


昼休みの時みたいに暗いことはなく、いつも通り「しーちゃーん!!待ったー!?」と叫びながら走ってきた。

このテンションの代わりようにももうだいぶ慣れてきて、あんまり気にしないで俺は「待ってないから歩いてこーい!」と叫び返してゆっくり奈々美の方へ歩いて行った。


「ごめんねー!ちょっとお友達と喋ってたら遅くなちゃった!」

「おうおう、俺は全然待ってないから気にすんな」

「そう?ならよかったや!で、よりたい場所ってどこどこどこ?」

「普通に駅の近くのモールだよ」


そう言って、ゆっくり歩き出した奈々美の歩幅に合わせて俺も歩き出す。

ここは別に人が多いわけではない。てかなんなら今日は誰1人いなかった。


だから俺は、昨日の奈々美の言葉を思い出した。

どうせ今日フラれるのだから、何も躊躇せずできる謎の勇気が湧いてきて、隣を歩く奈々美の手をそっと握った。


「あ、あれ?どしたの急に?」

「お前が昨日手を繋いどけば逸れる心配なんてないって言ってたから繋いだだけだよ」

「そ、そーなんだ…い、いやー!でもしーちゃんの方から手を繋いでくれるなんてひっさしぶりだねー!!」


そう言って繋いで手をブンブン振り回す奈々美を見る。

やっぱり、贔屓目なしに全然こいつは可愛い。性格も優しくて明るいし、少し元気すぎるところもあるけど基本的に一緒にいてストレスになるなんてことはないし。


きっと、俺の知らんところでたくさん好意を向けられて来たんだと思う。

俺はそういう話を奈々美の口から聞いたことは一切なく、奈々美の友達が教えてくれるくらいだ。


一度だけ奈々美にめちゃくちゃ執着してくる奴がいたらしいけど、その時だって俺には知らせてくれず、ことが終わった後で友達から聞いた、なんてこともあった。


その時俺は、頼ってもらえなかった悲しさと、気づいてあげられなかった不甲斐なさで、ちょっと病んでいた時期があった。でもそんな俺にでも優しくいつも通り接してくれた奈々美に何かお礼をしてあげたかった。


しかし、結局何もしてあげられず、さらには勝手に好意を押してつけようとしてる自分がちょっと嫌いになる。


けれど、そんな考えているなんて知るはずもない奈々美が俺の方を見つめてくる。

不思議そうな顔をしながら「どしたの?」という言葉でようやく俺は我に帰った。


「いや、なんでもないなんでもない。とりあえず、モールに寄りたい理由は普通に気になってる本を買いたいだけだから、さっさといっちまおう」

「了解しました!私はしーちゃんにどこまでもついていきます!!」


そう言って繋いでる手は解かず、空いてる手でぴっしと敬礼をして俺にいつも通りの笑顔を向けてくる奈々美。

俺はちょっと照れ臭くなって顔を逸らし、もう目の前にあるモールの中に入っていった。




そのあとは特に変わったこともなく、普通に本屋に寄って目当てのものを買って、奈々美と本屋を出る。

モール内に入ってからも奈々美は繋いだ手を離そうとしなかったが、俺もこうしていられうのは嬉しいので放置していた。

ただ、本を探すときもレジで会計してもらってる時も、離そうとしてくれなかったのはちょっと困ったけど、可愛いからよしとした。


「とりあえず、目当てのものは購入したし、こっからどっか寄ってくか?」

「んー。私はどっちでもいいよ?」

「じゃあ、ちょっとスタベにでも行きますか」

「おお、いっつも高いから行かないっていってたしーちゃんが自分から行こうと提案するとは…さては、何かあるな?」

「何もねえよ。ただ、ちょっと付き合ってもらったからお返しにと思ってな」

「ふーん。なんか怪し〜」


そう言って疑いの目を向けてくる奈々美。

スターベックス(通称スタべ)はちょっと高いけど、たまになら別にいいだろうと思って提案したのに、なんか疑われるのは少々気に食わんが適当にはぐらかした。

そして、俺は奈々美と手を繋いだまま、怪しい怪しいと言われながらも目的地に足をすすめた。


店に入り適当に注文して、奈々美にも好きなのを選ばせて俺が奢る。

奢ると行った時に「え〜?別に奢らなくてもいいよ?」「付き合ってもらったお礼だから気にすんな」というやりとりはあったものの、すんなり引き下がってくれたおかげで何も問題なく注文したものを受け取り店を出た。


暑いから日陰に行こうということになり、俺らは人がいない静かな日陰を探して入った。

そこで、ふと今ならすんなり告白できるんじゃないか?という考えが頭をよぎったので告白するために奈々美の方へ向き直ろうとした。

が、なぜが奈々美が手を離してくれない。


「おい、ちょっと手離そうぜ」

「やだよ!せっかくしーちゃんから手を繋いでくれたんだから!離したらもうつないでくれないかもしれないでしょ!!」


なんて言いながら、奈々美は俺を軽く睨みつつ、手を握る力を少し強めた。

俺は少し、離すのをためらった。でも、なんとなく、この手を離して告白したいと感じた。

ほんとに、ほんとにただなんとなくそう感じただけだ。でも、俺はそのなんとなくを信じてみることにした。


「あぁっもう、今から話すこと聞いて、それでもまた繋ぎたいっていうんだったら、毎日だろうが手くらい繋いでやるから今くらい離してくれ」

「その言葉に、嘘偽りはないのかね?」

「もちろんありませぬよ、奈々美様」

「わかった。お主がそこまでいうんじゃ。仕方ない。さっさと話してみ」


そう言って、ようやく離してくれた。

正直、ここまで俺から手を繋いでくれたという理由だけでわがままを言われると勘違いしてしまいそうになる。

ただ、俺は勘違いしないよう必死に務めた。最後の最後に勘違いしたまま突っ込んだら、より辛くなるのは分かりきっているんだから。


だから、俺は覚悟を決め、奈々美の目をまっすぐ見た。

正直すっごく照れるし、目を逸らしたくなる。顔ぽきっと真っ赤になってる。

でも、目を逸らさず、ちゃんとこの気持ちと向き合うと決めたからには、最後までやり通す。


俺は、覚悟がなくなる前に、大きく息を吸い、ようやく口を開いた。


「奈々美。俺は、ずっと昔から、お前が好きだった」

「えっ!?あ、いや、おお、幼馴染としてってことだよねぇ〜!!わかってる!」

「わかってないだろ。俺は、異性として、お前が好きだ」

「えっ、えっ、え。えっ!?」

「正直、お前がいつもくっついてくるからこっちは何度も勘違いしそうになった。でも、お前のその無邪気な笑顔見ると、昔と何も変わってないから、どうせ俺は見向きもされてないって思って、諦めてた。でも、今日友達に言われてさ、初めて危機感覚えて、いてもたってもいられなくなって、こうして告白したんだ。

最後にもう一度言う、俺は奈々美のことが、大好きです!付き合ってください!!」


そう言って勢いよく奈々美の前に手を出した。

こんなことしたら、もう前見たく仲良くすることなんてできやしない。

わかってる、けど、どうしてもやった後で後悔してしまう。


でも、仕方がない。振られたら振られたで、新しい恋を探す。

この告白を、何年後かわからんが、笑い話としてみんなに話せるくらいになってやる。

そう、俺は決めて誰の手も乗っていない自分の手を見た。


奈々美は固まったままずっと動かない。これが奈々美の答えなんだろう。

わかったんなら、さっさと動こう。この場を離れよう。


そう思い、足を動かそうとするも、足はピクリとも動いてくれない。

動かない理由なんて、わかってる。フラれたショックと、まだ可能性があるかもしれないという期待が心に存在するからだ。


動けない。

というか、期待してしまってるんだから、いっそ奈々美の言葉でしっかり振ってほしい。

今の状況を例えるなら、俺は死刑台に上がって、拘束された身で、奈々美という死刑執行人に殺されるのを待っている状況だろう。


動けない俺を、奈々美の言葉で楽にしてほしい。

決して楽ではないのだけれど、何も言われない方が、ずっと辛い。

だから俺は、願うことしかできなくなった。

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