第2話 活動開始
「さてとファイちゃんへの自己紹介も済んだし、サークル活動の説明と行こうか。昨日も話した通りうちは超自然学を扱うサークル、まぁというより研究室に近いのかな。去年私が作ったばっかりで一気に人数が倍以上に増えてとってもワクワクなのです」
八代先輩は楽しいそうに話すと少し声を小さくして、
「まぁ活動の紹介って言っても、実は活動に明確な決まりは無くて……」
「じゃあ去年は何してたんだ?」
「えっと、オカルト系の資料読み漁ったり、学園祭の出し物したり、あとたまーに来る調査依頼こなしたりかな。本当は調査メインでやりたいんだけど、ほら、超自然現象ってそんな起きることじゃないでしょ。だから心霊写真の鑑定とかが多いね」
ファイの質問に八代先輩は自信なさげに話す。
「5人、プラス1羽もいるし、去年より活動ペースを上げられるんじゃないんすか?」
「うん、うんそうだよね。境くんの言う通り! 去年より人数が増えた分、規模も大きく頻度も増やせればいいね」
八代先輩は嬉しそうに頷く。そしたら、いつか……
「いや、あれ、おかしいな活動の説明するはずだったのに、活動方針の提案されちゃったや」
「いいんじゃないか。それにその滅多に起こらない超自然現象が起きたみたいだぞ。ほれ、」
雨宮先輩の話に一同が「えっ」、「ん?」と、驚きと疑問の声を漏らす。
雨宮先輩のケータイの画面の中SNSに投稿された動画には混乱する多くの人々の姿が映っていた。この動画が投稿されているということは一先ず撮影者は無事なのだろう。
「これは、この間新都心でやってたアニメイベントで撮られた映像らしい。そして動画の他に多く出回っているのが、」
見せられたのは雨雲の中に浮かぶ発光する謎の物体の画像。それはまるで、
「UFOじゃないですか」
燐がここにいる全員の言いたいことを代弁する。
「さっきの動画とは別に当時の新都心上空を撮ったっていうこういう写真がいっぱい出回っているんだ。これも、これも、これもだな」
「さすがにフェイクじゃないのか」
ファイの言う通り現在は動画を生成するPOFもまでも開発されており、ディープフェイクとそれを見抜く技術は常にいたちごっこの状態にある。「動画すら且つ之を作る、況んや画像をや。」だ。
「確かに調べれば偽物だと分かるかもしれないな、写真の方はな。」
「何か他にあるのか?」
「いるんだよ。実際に見たって人が、沢山」
未確認飛行物体ーUFO。1964年6月24日にアメリカで初めて目撃されてから早二と半世紀。22世紀の現在も世界各地で報告が挙がり、古くから多くのオカルトファンに注目されてきた絶対的存在。時に上空で激しく発光し、時に戦闘機の前にフラフラ現れ、時に牧場から家畜を誘拐する。宇宙人の乗り物なのか、秘密裏にどこかの軍が開発したものなのか。
ましてやそれがここ魔都彩珠に出没したとなれば、超自然学サークルの活動の絶好の機会なのである。
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情報が共有され、調査の日程を八代先輩を中心に話し合う。
「で、今度の土曜イベント会場に調査に行こうと思うんだけど。まぁ最初だし全員で行こうかなと思います。何か都合悪い人はいるかな?」
「私、午前はちょっと難しいです」
「じゃあ午後なら大丈夫かな」
燐が「はい」と返事する。
「動画が撮影されたのも午後みたいだからちょうど良いんじゃないか」
雨宮先輩の言う通り現場検証は同じ条件の方が好ましい。
「いっそのこと現場を再現するために魔法で雨でも降らせるか?」
「今なんて?」
燐がぴくっと眉を顰めて尋ねる。
「え、だから現場を再現するために雨を魔法でって……」
「ダメですよ。【操天】の非緊急的かつ無許可の使用は|魔対法第四十三条一項の大規模環境改変魔法の乱用に当たります。1年以上10年未満の懲役、または8…もご!」
「燐はこういうところ細かいんです。お気になさらず、」
そう燐を制止ながら陽斗が話す。
「あ、そっか燐ちゃんは魔法倫理法学科か」
「私が細かいんじゃなくて、皆が緩いだけなんだから」
「じょ、冗談だって。だいたい俺の階級じゃ使えないしな」
頬を膨らませて拗ねる燐はひとまず陽斗に任せるとして理巧は話を進める。
「じゃあ何時集合にしますか?」
「そうだね、じゃあ13時に新都心駅集合にしようか」
「了解です」
「まぁまだ平日も集まれるしUFOについて色々調べてみよっか。ちゃんと仮説も立ててから行かないとね」
UFOという超常物の謎に迫るべく、超自然学サークルの5人と1羽の初調査が幕を上げる。