第43話 偶然と必然
「うわー美味しそー。いただきます!!」
百華が目の前の料理に目を輝かせながらそう言うと、残る4人も続く。
「「いただきます」」
「はい、召し上がれ」
そう答えたのは理巧の母、紗千だ。エプロンを身にまとい、髪を縛ってキャップを被った姿は、カフェのマスターとしての清潔感を出している。エプロンの胸あたりにはフクロウのマークとOwletの文字がある。
そう、忍びの襲撃をしのぎ、疲れた全員は理巧の家、その半地下で紗千が営業するカフェに移動した。
Owletはこのお店の名称だ。店名の割に昼から夜までの営業ではあるが、紗千がカフェを開く前にあったお店の名前を引き継いでいるらしい。
今回は前回来店時と異なり、5人全員がオムライスを注文。あとは大量の揚げたてフライドポテトに、同じ商店街内から届いた熱々のピザがテーブルに並ぶ。
「こほん、ということで、改めて色々整理しよっか」
動画の解析結果について話し合っている途中にあった忍びの襲撃だ。まとめきれてない情報も新たに加わった情報もある。
「まずは、雨宮が拾ったっていう紙切れの話を」
「あぁ、医務室に向かう途中、先生が見つけたんだ。ファイ、さっき送った写真映せるか?」
「はいよ」と答えたファイが空中結像でその紙切れの画像を表示する。ちなみに実物は警察が証拠品として持っていった。
「この紙、ちぎれてるだけじゃなく、大部分が焦げて読めなくなってる」
「そんなゾンビゲームの手記みたいな……」
理巧は、フライドポテトにケチャップを付けながら、血で汚れて読めない的な場面を連想するが、
「まぁ残った文字から大体の内容は読み取れたがな」
優秀な考察系プレイヤーには十分な情報量だったようだ。
「ここが目的、ここが目標、ここが多分実行計画だ。まず、目的は八代と次元、2人の実力を測ることだな」
「なんで私たちが」
「新都心で脅威として認識されたんですかね」
「次元くん、自分のことを脅威というかね」
「あ、そっか僕も含まれるのか」
「待って、それはどういう意味かな?」
理巧の思わぬ返しに、スプーンを止めて百華が聞き返そうとするが、
「多分その線で見て間違いないだろう」
と、那由多の話に遮られた。しょうがないので止めたスプーンを口に運ぶ。おいしい。
「これからまた話すだろうが、忍びはUFO騒ぎに何かしらの形で関わっているんだと思う。そんなこと知る由もなかったが、このサークルが調査を始めて、新事実にたどり着くのを阻止したかったんだろうな」
「じゃあ、『嗅ぎ回るな』って脅すつもりで理巧に攻撃をしかけたってことっすかね」
「私は陽斗と、百華先輩と雨宮先輩は一緒に行動していたので、理巧は1人に見えたのではないでしょうか。ファイちゃん、見た目は雀ですし」
燐の意見に理巧は納得しつつも、
「普通脅すなら脅迫文とかからじゃないの? 初手で実力行使って怖すぎるだろ」
「普通の人は脅迫とかしないですけどね。刑法222条に該当します」
「222……バランス、調和、信頼。まぁ所詮スピリチュアルか」
「なんですか、それ?」
「エンジェルナンバーって言ってさ、各数字に意味があって、ゾロ目だとパワー倍増みたいな。まぁ13が不吉で7が幸運みたいなものかな」
知らない概念に1年組とファイは「へー」と興味なさげな声を返した。
「たまたま人類が10進数使っているだけなのに」
0b1101110、0xDEのどのあたりが特別な意味を持つのか理巧とファイには理解できなかった。
「それにしても前回も今回もAQBの奪取は本命ではないのか。でも、あのとき確かに僕のリュックを狙って……」
「ボクの存在に途中で気がついて、ついでにAQBを奪おうとしたとか」
「ともかく、今回の襲撃で忍びが組織的に動いてることが判明したろ。普通、組織ってのは何かしらの目的があって作るものだ。UFO騒ぎを起こすこと、AQBを奪うことが、今はまだ分からん目的を果たすためには必要なんだろうさ」
那由多の意見にファイが「そうだな」と頷く。
「そういや八代、忍びが襲撃する直前にフェイクの動画がどっちかって話したよな」
「あー、UFOと茜が映っている方が偽物って話? だって、UFOが映ってる動画を投稿したアカウントって使い捨てだったんでしょ?」
「まー怪しいのは間違いないが、それだけで言い切るのは早計じゃないか。例えば普段SNSを使ってない人がたまたま事件に遭って、その様子を伝えようとアカウントを作ったみたいな可能性もあるよな」
「確かにそういう可能性もあるのか……どっちが偽物なのか、何か決定的な証拠が見つかればいいんだけど」
「まぁ可能性としては低い方だし。とりあえず偽物って仮定しとこうぜ」
ファイの意見に百華は「それもそうだね」と賛成する。
「さてさて、動機はさておき、UFO騒ぎの全容についてはいろいろ分かってきたんじゃないかな」
「そうですね。偶然と必然の境界線が見えてきたのは大きい。多分、燐と陽斗の考えたゲリラ豪雨と雷雨喘息のコンボまでは偶然」
「UFOの動画や写真の投稿は、まだおそらくですけど、忍びの属する組織が意図的に行ったもの、つまり必然ということですね。あ、でもUFOの動画や写真の投稿は、全部が全部忍びたちによるものというわけでもなさそうですかね」
「インプレゾンビとか承認欲求モンスターって昔から消えないからね」
「SNSって、そんな終末みたいな世界観なんです?」
あまりSNSを使わない燐が怪訝そうな顔をした。
さて現状、偶然起こった事件に忍びがフェイクを付け足してUFO騒ぎに仕立てたというのが一番有力な仮説だが、
「うーん、そしたら集団ヒステリーは偶然か必然か、どっちっすかね?」
「さっきお前らがくらった精神干渉魔法の効果である可能性か」
「SNSでのフェイクの発信は事件の後でもできますけど、精神干渉魔法は事件現場に忍びがいないと使えないので、偶然なんじゃないでしょうか」
「これに関しては最後の聞き取りで分かるといいんだけどね。明日でしたっけ?」
「そう、明日に期待だね。とりあえず今日は疲れたし、あとは美味しいもの食べて英気を養おう!」




