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Command Wand  作者: 赤茄子
第0章 Occult Occasion
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第5話 Hello, Occult World!

 彩球魔法大学は南北を一般道に分けられ、その道路の上には3本の連絡通路が設けられているのだが、道路の下には地下鉄薔薇線の彩珠魔法大学駅があるため、アクセスにとてもいい大学だ。


 サークル棟は大学構内の南区間の中程に建っている。理巧、陽斗、燐の3人はそのサークル棟の3階の例の一室の前に来た。コンコンとドアをノックすると、どーぞーと中から返事がある。部屋に入ると、


「おーやっぱり君だね!」


 クリーム色の髪を靡かせながら少し小柄な先輩が勢いよく扉の方に駆け寄ってくる。


「およ、そちらのお二人さんは? 君たちも入りたいのかな!」」


「「見にきただけです。」」


と2人、陽斗と燐が即答すると、


「クインテットにはなれなそうだな」


と、奥から男性の声が聞こえてきた。

 部屋を見渡してみると予想通りといった感じだった。ピラミッドやUFOの模型、水晶玉によくわからない遺物らしきものまである。やはり、走り疲れ頭の回っていない状態でこのサークルに入ると返事したのは失敗だっただろうか。


「どうどう?サークル部屋を見て興味は増したかな!?」


「メンバーはお二人だけですか?」


 燐がスルーして質問。


「うん、そうだね。このサークルは去年私が作ったからさ。去年は勧誘しても誰も入らなかったんだ」


「おいおいオレはどうなった?」


「勧誘しなくても入ってきたんでしょうよ。あっそうだ。2人は初めましてだもんね。改めて自己紹介するよ。私は2年の八代百華。で、あっちのが、」


「人のことを指さすな。オレは雨宮那由多(あまみやなゆた)だ。……八代、あれ言わないのか?」


「あっそうだった。んっうん、目に見えるものが真実とは限らない。何が本当で何が嘘か。ネッシーは本当にフェイクだったのか。天動説は本当に間違えているのか。魔法は本当に現代から使われ始めたのか。コn……ゲホゲホ、む、咽せた……」


「なんか詐欺くせぇな」


「大丈夫ですか?」


 陽斗と燐がそれぞれコメントを入れる。


「と、まぁ見た目はただの怪しいサークルだが、ここの目的は科学を超えたと誤解された、いわゆる超自然的(オカルト)現象を解明して、科学の範疇に収めることだ」


 と、雨宮先輩は説明を続けた。


 あれ?思ってたのと少し違うかもしれない。


「例えばだ。スカイフィッシュって知ってるか?」


「空飛ぶ魚、とかですか?」


 理巧が名前から推測する。なんの捻りもない。


「遠からずってかんじだな。スカイフィッシュてのはUMAの一種、だった。こんなんだ」


 タブレットの画面の画像には細長い何かが写っていた。


「だった、ってことはもう正体は分かってるんですよね」


「あぁ、これはハエなどの小さな虫の残像が写真に映ることで、あたかも細長い何かが空を高速で飛行しているように見えているんだ。」


 モーションブラー現象。空中にサイリウムで文字を書いたりするのに使うあの現象だ。


「なんか、あっけないですね」


「そうだな。でも昔は本気でいると信じられていた。今も信じている人はいるかもな。そしてこの現代にも、スカイフィッシュのように科学的に説明がつくのに正体不明だとされる現象は多く残っているはずだ」


「そういった事象を対象とするのがこのサークルである、と」


 燐がその続きを代わりに口する。


「んーまぁそうだ。合わなかったら途中で抜けてもいい。3人とも、とりあえず入ってみないか?」


 若干の怪しさは残る。だが理系の探求心と好奇心をくすぐられた3人は、目線を交わし頷くと


「「「入ります」」」


そう合わせて答えた。


超自然学(オカルト)の世界へ、ようこそ」


「ちょっそれ、私のセリフ!!」


      ―――――――――――――――――――――――――


 全員が部屋のホワイトボードに名前を書き、軽く自己紹介を終えた。


「まぁ初めの挨拶はこんなもんで、これから3人ともよろしくね。今日はオリエンテーションで疲れただろうし実際の活動は明日からとします」


 八代先輩が軽く自己紹介をしめる。2年生ではあるがこのサークルを立ち上げたサークル長なのだそうだ。副サークル長は雨宮先輩だ。


 燐は八代先輩と談笑中。雨宮先輩は何やらパソコンで作業していて、こちらも残った2人で会話の最中だ。


「入ってよかったのか?」


「――ん?」


 陽斗はそう首を傾げて聞き返す。


「天文とかサバゲーは?」


「まぁただの趣味で個人でもできっからな。それに、」


「それに?」


「理巧と燐が頷いちゃったら、一緒に頷くしかねぇだろ」


 そう小声で話す。まぁそれを利用してサークルまでついて来てもらったので若干罪悪感があるのだが、ここはちゃんと切り込む。


「およそ僕じゃなくて燐の方だろ」


「べ、別にそんなことは、」


「なんか私の話した?」


 八代先輩と話していた燐が、地獄耳を発動させたらしくやって来た。語尾からどちらへの質問か判別。燐は基本的に敬語を使うがなぜか陽斗には使わないのだ。幼馴染だからだろうか。


「いや、別に、」


 自分が問われていると理解した陽斗が、なんとかごまかす。自分も、本日もう何度目の冷や汗か分からない。恐るべしカクテルパーティ効果だ。ん?うん。


「そう、ならいいけど」


「応援してるぞー」


 少し離れたところで作業する、雨宮先輩の声がした。テレパシーかなんかなのか。2人はゾクっとしたが、燐は、はて?とした顔をしている。こういうところは鈍感で助かった。


「あの、どういう」意味ですか?と聞こうとするも


「あっそうだ!新メンバーの歓迎会開こうよ!」


 と、良くも悪くも先輩の声にかき消された。


「ありがたいですけど、いつやるんですか?」


「今日、この後すぐ! みんな予定入ってたりするかな?」


 各々が予定なしの旨を返事して提案通り今日に決まった。先輩は思いついたらすぐ行動に移すらしい。そこに燐が質問を入れる。


「まだ他に入るかもしれないのに歓迎会なんて開いてもらっていいんですか?」


「問題ない。もう人、入らないからな」


「へ?」


「もうメンバー募集の閉じた。あまり人が多いのは落ち着かないからな。落ち着きないのは、こいつだけで十分だ」


 顎で八代先輩をさして言う。パソコンで作業していたのは、大学の掲示板でメンバー募集を締め切るためだったようだ。


「やんのかー!?」


 指さすなと言われたのに、顎でさされて顔を膨れさせる。


「にしても『今日はオリエンテーションで疲れただろうし』って言ったのはどこの誰だったか」


「グハッ、じゃあやっぱりまた今度にしようか」


 雨宮先輩の指摘は八代先輩に効果バツグンだ。


「行きましょう。今日行きましょう! 全然疲れてないっすから!!」


 すかさず陽斗が歓迎会の実行に賛同した。


「冗談、冗談。で、どこいくんだ? ファミレスか?」


 雨宮先輩が尋ねると、気が付いたら復活していた八代先輩が答える。


「それがねぇ、こないだ行ったいいところがあるの」

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