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Command Wand  作者: 赤茄子
第1章 Spread Spirits
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第37話 満場一致

「よし、じゃあ今のところの聞き込み調査の結果について共有しようか」


 ポスターを貼り終え、再び席に着いた百華がそう告げる。

 現場検証の際は、忍びの一件で通行人への聞き込みの成果はゼロだった。そこで先週、SNSなどで連絡をとって、UFO事件の被害者に聞き込みを行っていたのである。


「では、私から共有しますね。事前に打ち合わせた通り、質問は合わせて3つしました」


 資料を手に燐が話し始める。


「質問って、目撃したUFOの特徴と倒れたときの様子、それから……」


「赤いドレス姿の少女について、だな」


 那由多と陽斗が内容を口にすると、「そうね」と燐が肯定する。赤いドレス姿の少女ーー『つれりあん』の主人公、茜のコスプレをしていたであろう少女だ。そして事件の際、一番最初に倒れた人物でもある。しかし、その後全く見かけていないとう妙な話も以前山本から聞いた。


「今回の聞き込み調査では、理巧にお願いしてアンケートフォームを作ってもらったのと、何人かの人から直接話を聞くこともできました」


「あれ次元くんが作ってたのか。資料読みも頼んでるのにありがとねー」


 百華は理巧がフォームを作ったのを知らなかったらしく、驚きつつも礼を告げた。


「まぁフォームつくるの自体は簡単なんですけど、質問の内容考えるのが大変でしたね」


「ん、質問ってさっきの3つじゃないのか?」


 那由多が当然の疑問を投げかける。事前に打ち合わせていたはずの質問をすればいいのではないか、と。

 その問に燐が答えた。


「今回はSNS上でDM(ダイレクトメッセージ)に送る形でアンケートを実施しました。本当は返礼がある方が回答率や質の向上に繋がるのですが、今回は用意するのが難しくて。そこでまず、回答率を上げるために、原因が解明した後はインターネット上に調査結果を公表することにしました」


「はい、それは私が許可しました。雨宮もいいよね」


 と百華手を挙げて雨宮にも事後確認。


「あぁ、お前がサークル長だしな。うん、確かに被害者なら原因をすぐにでも知りたいだろうが、今のところはっきりとしたことは公表されてないから、協力してもらう価値は提供できるかもな」


 病院からも、警察、消防からも、なぜだが発表がないのが現状だ。

 燐が「それから」と続けて話す。


「調査結果の公表も回答の質の向上にも繋がるとは思うのですが、念のため、アンケートの質問内容に冗長性を持たせて5問としました」


 燐の言っていることはつまり、あえて同じような回答を含むであろう質問にしたということだ。その目的は、


「なるほど、同じ人物からの回答の中で整合性を測るのか」


「えっ、私言われても理由なんて分からなかったのにっ」


 悔しそうな顔をする百華。燐も思わず目を見開いた。ただ冗長性を持たせたと言っただけで、那由多は目的まで理解したのだ。この頭の回転力の引き換えに普段サークル部屋で寝ているわけだが……。


「で、結果はどうなったんだ」


 百華の悔しそうな顔など気にしない風で那由多が尋ねると、それに理巧が答える。


「アンケートとかの結果を分析するツールがあるのでそれを使って42人分の回答を調べました」


「今までアンケートとかほとんどやってなかったけど、私達、結構アナログだったんだな。今の子達は違うな〜」


「いやっ、先輩たちと1年しか違わないっすけど」


「それに、コンピュータにここまで精通しているのは理巧だけですから」


 百華の反応に陽斗と燐が困った顔でツッコミを入れる。


「それで結果の方が、まずUFOの特徴が『円盤』、『ライト』、『グレー』というのが多く書かれていました。あと、ライトは『6』という数字と共起、すなわち関連して書かれていました。」


 理巧の指差すモニターにテキストマイニングの結果がワードクラウドで示される。ワードクラウドとは単語の重要度や出現数に単語の文字サイズが対応するように書かれた図で、今回は文字サイズが大きいほど出現数が多いことを示す。特徴として上がったのは映像で見た通りのUFOの特徴だ。


「次に、倒れたときの様子についは、『頭痛』、『寒気』の他に『ドレス』、『赤』、『少女』が多く書かれていました。最後の3つは特に共起していたようです。最後に、赤いドレス姿の少女については、『最初』、『倒れる』がほぼ全ての回答に含まれていたようです」


 モニターに3つのワードクラウドを表示して、しばらく眺めてみる。


「これって整合性ってどうだったんだ」


「個人個人のアンケートの整合性の平均が0.843ですね。評価指標として使った統計量の値域が0から1なので、自然言語の曖昧さも考えると悪くない数値です」


 那由多の問に理巧が答える。


「なるほどな。それと次元、回答全体としての整合性って調べられないか?」


 理巧は「はい」と返事してターミナルを開きコードを打ち込んでいく。

 しばらくして結果が出た。


「0.828……」


「どう思う」


「個人個人の平均に対して変わらなすぎです。ほとんど矛盾のない回答を全体として行っていることになります」


 理巧の返事に那由多が頷きモニターの方を向いた。


「ワードクラウドを見てみても、UFOの特徴に『グレー』とか『灰色』はあっても他の色はなかったり、ライトの数なんて『6』しかないな」


「確かに私も目を通したとき、まるで同じものを同じ場所から見たのかといったような回答だとは思いましたけど」


「同じものを見ていても、見る人の位置が違えば見えるものも違う、か。色なんて特にね」


 続けて燐と百華も違和感について口々に言う。


 さて満場一致のパラドックスというものがある。統計学において、全員の回答が一致した場合、信頼性が極端に減少することを示す用語である。例えば工場で何か製造していたとして、そこの製品の不良品割合が0だったとすれば、工場が完璧なのだとは考えずに、不良品を判定する機械が壊れているか、誰かが隠蔽している可能性を疑うべきである。

 イベント参加者という母集団が数百人だとしても、42人もいれば1人くらい違うことを言うだろう。ライトの数が6ではなく5、UFOの色はグレーではなく黒。もし全員が同じ回答をするのだとしたら、


「これの原因が集団ヒステリーってことっすね」

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