第24話 バレバレ
コックリさんがお帰りになってすぐ、那由多がその正体だとバレた。
「なんで分かった? 八代が、」
那由多の問いに「私がって何よ!?」と言いながら百華が答える。
「コックリさんやってる最中にも気が付いてたけどさ、終わった後に雨宮が杖をポケットにしまってるところ見ちゃったんだよね。結局コラッ……コックリさんの正体は雨宮だったんでしょ」
「怒ってる?」
「いや……うん楽しかったよ?」
百華は言い間違えたがなんとか誤魔化せたという顔をする。もちろん周りには最後の最後まで気付いていなかったことはバレバレだが。
「それで、使った魔法は【念力】だな?」
ファイは情報波の流れを観察することができる。その能力を使って那由多の魔法を見抜いたが、
「ご明察……というかファイには見えてたんだろ?」
逆に那由多にその能力を見抜かれた。
「――――」
「なんでそんなこと分かるかって? ファイの能力なら可能性としてはあり得なくはないからな」
11次元の波を機械的に読み取り解析し、どの魔法に該当するのか調べることなど普通はできない。この男、雨宮那由多は外れ値のような状況まで想定していると言うのか。
驚いて理巧と顔を見合わせるファイをよそに百華が話を進める。
「雨宮、わ、私は気が付いてたからいいけど、1年生のみんなを騙した罪悪感はないんですかねー」
「ん、いや多分」
那由多はそういって燐の方を見る。
「理巧と私は途中で気が付いてましたよ」
燐の言葉に一瞬驚くも、理巧は首を縦に振って肯定する。
「え、ホントに?」「マジかよぉ〜」
百華と陽斗がそれぞれ反応する。
「気が付いてたなら、燐はなんで質問したんだよー」
「雨宮先輩なら私の言って欲しいこと言ってくれるかなと」
それを聞いて陽斗は那由多の方にムッとした表情を向ける。
「おい、オレが悪いのか」
「わるい、わるーい。境くんを騙した雨宮がわるーい。まぁ私は気付いてたけどね!」
なぜか私は騙されてないと強調する百華だが、
「あの、えっと、百華先輩は雨宮先輩に話振るまで気が付いてなかったですよね?」
「ぎくっ! あの、その……な、なんで分かったの?」
百華にそう言わせた燐は
「私、人の顔から心を読むのが得意なので。心理学の応用です」
と、自慢げに話す。微表情や瞳孔を観察することによる読心術なのだそうだ。ちなみに陽斗はもちろん理巧もその特技を知っている。なぜか陽斗の好意には気が付かないのは謎なのだが。
「そっか、さっき燐ちゃんが『理巧と私は』って言ったのは、次元くんも気が付いてることを分かってたのか。ん、燐ちゃんは雨宮から何かしら怪しさを感じたとして、――」
「怪しさ言うな」
「――次元くんはなんで気が付いたの?」
「えっと、魔法独特の違和感ありませんでした?」
質問する百華に理巧がそう聞き返した。
「違和感ねー。あったような、なかったような」
魔法は物理法則の下に成り立っているとはいえ、魔素という存在を用いることで、巨大なエネルギーをもって世界を書き換える。そのため世界の書き換わったことに違和感を持つのは当たり前のようにも思われるが、理巧がここで言う違和感はそれとは違うものだ。
魔法独特の違和感は脳の三半規管の近く、熵量器官と呼ばれる部位が”環境”の急激な変化に反応することに起因する。魔法生物学的には妖覚と呼ばれるが、一部の界隈の人間からは第六感なんて呼び方もされるらしい。
とはいえ、妖覚と他の一般的な違和感の違いをほとんどの人間は感じ分けられない。この違いが分かる人間は先天的に妖覚に敏感であるか、魔法の経験が豊富かかのどちらかだ。理巧はどちらかといえば後者に当たる。
「気が付いてないだろ。八代は脳筋だからな」
「脳筋言うなっー!」
そう言いながらぬっと立ち上がった百華は、そのまま白く細い腕で那由多を締めにかかる。那由多は百華より身長が高いので思いっきり膝カックンされたような体勢だ。
「も、百華先輩、ストップです、ストップです」
「大丈夫、冗談だってー」
「じょ、冗談の割には強かったんだが」
那由多が崩れるように百華の腕から抜ける。
「妖覚が鈍いと魔法戦闘では不利ですよね。でも八代先輩は、」
忍びとの戦闘を間近で見ていた理巧がそう指摘する。もっともだいぶ格闘技的な戦闘でもあったが。
「まっ私の場合、戦闘中の魔法には勘で対応できるから、妖覚鈍くても大丈夫って感じかな」
「えぇ……」
理巧は百華の異常さに唖然とする。
表情や行動を心理学的に読み取る燐に加えて、全てを想定した上で推測する那由多に、謎の勘で読み切る百華。それぞれが別々に嘘や隠し事を見破る術を持っている。超自然現象について調査する上では頼もしいものだが、
白函のこと、忍びの独自調査のこと、それに父親がすでに故人であることも、
「理巧、これは色々と隠し続けるの結構大変そうだぞ。」
ファイは心の中でそう呟いたのだった。




