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Command Wand  作者: 赤茄子
第1章 Spread Spirits
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第18話 現場検証

「あぁあぁ、こりゃ。酷いね。あっ木村さん、お疲れ様です」


「お疲れ様です、ゴローさん。通報受けて来たんですね」


 敬礼を受けた茶髪の男は、警官と親しげに挨拶を交わし規制線の中へと入る。


 焦げ臭い匂い、そして、魔法の使われた場所特有の平衡感覚の乱れ。一般人はほとんど気が付かないし、気付いても違和感程度にしか思えない。

 しかし、この男は違った。訓練を受けた人間だ。魔法犯罪対策委員会に属する特別司法職員警察、いわゆる魔対と呼ばれる国家公務員である。


「爆心地はここか。気持ち悪いぐらいなんもねぇな」


 男は爆発の起きた広場、もう霧も散った現場を調べる。


「なるほど。違法な魔術による空間の書き換えか、うちの出番だね。ところで、若い兄ちゃんと姉ちゃんが、この爆発起こした犯人を押さえ込んでたって話だけど、その子たちはどこへ?」


「爆発からはうまく逃げられたみたいですけど――」


『ちょっ、私は大丈夫だから、体丈夫だからぁ〜』


『駄々こねるな。なんかあったらオレが困るんだよ』


『先輩、一応診てもらいましょうよ』


「――と、一緒にいた子がそこの病院へ連れて行きました。そういえば、あそこの2人もその子たちの友達だとか」


 なるほど、と男は金髪の少年と黒髪の少女の元へ向かう。


「やあやあお二人さん、君たちが術者を押さえてた子の友達なんだって?」


「はい、そうです」


 黒髪の子が答える。


「それじゃあ、ん。あれ、もしかして燐ちゃんじゃない?」


      ―――――――――――――――――――――――――


「ほらー、言ったじゃん。なんともないって」


「オレは万が一を想定してだなー」


「万が一なんてそう起きないから」


「独立した万が一だって3万回試行すれば確率は9割5分だぞ」


「病院ですよ。静かにしてください」


「ごめん」「すまん」


 独立した万が一に笑いそうになったが、理巧はなんとか堪えて注意した。まったく。


 那由多の提案で念の為軽く検査を受けたが、幸い理巧も百華も目立った怪我はなかった。


 あの現場からはそれほど離れていないので、外で待ってもらっている燐と陽斗と合流するために、一同は病院の入り口へ向かっていたところだ。


 エントランスホールに到着すると、1人の女性が看護師に向かってお辞儀をしていた。


「退院おめでとうございます」


「本当にお世話になりました」


 退院する元患者さんの見送りのようだ。


「本当に病院が近くにあってよかったですよ。いやあ10日は長かったよ」


「本当ですね。――」


 会話の内容に那由多が気が付き、小声で2人に話す。


「なぁ、あの女の人、例の事件で倒れた人じゃないか?」


「だめだよー、盗み聞きなんてしちゃ」


「聞こえちゃったんだからしょうがないだろ」


 今日が14日で事件が起きたのは3日。確かにおよそ10日前だ。現場も近い。


「もう病院出るみたいですけど、事件の話聞いてみますか?」


「うーん、そうだね。体験した人に直で話を聞ける機会は貴重だし、聞いてみよっか」


 3人はそう決め、外に出た彼女を追う。

 陽斗と燐にはもう少し時間がかかると連絡をいれておいた。


      ―――――――――――――――――――――――――


「どうして私の名前を?」


「あぁ、僕はこういう者でね」


 男は上着の内ポケットから何かを取り出し、燐と陽斗の2人に見せる。顔写真のついた身分手帳だ。


「魔法犯罪取締委員会 関東事務所第3係、田口吾郎(たぐちごろう)……もしかして父と一緒に働いている方ですか?」


「そう、黒鉄係長の下で働いてんだよね」


「父がいつもお世話になっています」


「いやいや、お世話になってるのは俺の方だから」


 魔対の男――田口は手をいやいやと振り、謙遜した様子で話す。が、


「そうですね。父は優秀なので、人のお世話にはなりませんね」


 燐はきっぱりそういう。


「お、お父さんのこと好きなんだね」


「はい、心の底から信頼しています。母のこともです」


 どこか自慢げな燐の瞳は、キラキラとしている。そんな様子に田口は陽斗の方を向き直し、


「えっと君は、」


「境陽斗です」


 陽斗が名乗ると田口は口を耳元に近づけて、


「陽斗くん、父親のことがまだ好きな子は落とすの難しいぞ」


「な!!」


 そう言われて、思わず陽斗の顔が赤くなる。


「どうして、分かったんすか?」


「なんの話?」


「俺は、君の2倍近く生きてるんだぜ」


 要は人生経験ということなのだろう。

 この初対面の相手全員にこの気持ちがバレるのはなんとかしたいところだが、相変わらず燐はきょとんとしていた。


「おっと、話がそれてしまった。さっき通報してくれたのは燐ちゃんだったんだね。爆発を起こした容疑者と、制圧にあたった2人の友達について聞いてもいいかい?」

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