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Command Wand  作者: 赤茄子
第1章 Spread Spirits
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第9話 仮説討論会

 百聞は一見に如かず。誰もが知っている(ことわざ)をアドバイスとして残し、錫木先生はそのまま別の用事に向ってしまった。


「今度改めて紹介しようと思ってたのに勝手に来ちゃうんだから。本当にあの先生は、」


「えっと、八代先輩は錫木先生となんか因縁の関係なんですか?」


 親しげ、というにはだいぶアグレッシブな扱いが気になり、理巧が百華に尋ねる。


「いや、あの先生、見た目によらず賢いし、見た目によらず頼りになるけど、見た目通り怪しいじゃん! 私がサークル作るや否や声をかけてきて」


 とりあえず見た目が気に食わないことはよく分かった。


「悪い人には見えませんでしたね。でも心が読めないというか、独特な雰囲気(ふんいき)でした」


 百華に続き燐も錫木先生の印象を語る。

 およそ、サークルのみんなも同意見だろう。とはいえ、今後もお世話になりそうなので、顔と名前はしっかり覚えておく。


「さてと、先生の話はそこらの極限に吹っ飛ばして、今日のメイン、仮説討論会を始めまぁす!」


 理巧が頭の中で無限遠方に飛ばされる先生を想像する。


「じゃあみんなソファーに座って、」


 百華の声に従い、一同が昨日、資料の読み込みの際と同じ位置に腰をかけた。アルファベットのUを書くような順に、那由多、理巧とファイ、百華、燐、陽斗の順だ。


「改めてだけど、私たちは何のために仮説を立てるのでしょうか?」


「仮説を立てることで、何を調べればいいか明確にするためですかね」


「そう、次元くんの言う通り、要は効率を上げるため。x は何かっていう開いた問題が、x は a か否かっていう閉じた問題に変わる。もちろん、x が a でないって結論が得られても、次は x は b か否かっていう問題を考えないといけないけど、優先順位をつけたり候補の範囲が絞れるから、漠然とした状態より何を調べればいいか分かり易いよね」


 魔法芸術科とは思えぬ理系っぷりだが、そもそも魔法自体が理工系なので、この大学にいる以上はできて当たり前だ。そもそも”壁”の内側にいる以上、これくらいの論理的思考は文理問わずできなきゃ困るのだが。


「まぁ最初で慣れないだろうし、私から始めるね。私の仮説は――」


 いつにもなく賢く感じられる百華は、その右手の人差し指を立てながら、ズバリ、と話す。


「宇宙人が本当に来ちゃった説!」


 討論会としては最初にハードルが下がり大歓迎なのだが、百華の賢いオーラ濃度もだだ下りだ。


「ちょ、ちょっと真面目な話なんだってば。ん、雨宮、その細い目をやめろぉ!」


 目を細めるというと、細かい字をよく見たり笑顔になったりといった表現だが、この那由多の細い目とは呆れた目のことだ。もっとも呆れたやつだと凝視している可能性もあるが。


「ちゃんと根拠はあるんだってばぁ〜」


「それじゃあ説明よろしくお願いします」


 頬を膨らませる百華に理巧が傾聴の意思を示す。


「まずねぇ、UFOの実現可能性。結論から言ってできなくはないよね。過去の資料を見る限りUFOの大きな謎の一つはその原動力と機動力。空を飛ぶっていったらその原理は主に3つある」


揚力(ようりょく)に浮力、あとは……」


「それに加えて反作用」


 そう、百華は陽斗の言葉に付け足した。

 飛行機は揚力で、気球は浮力で、ヘリコプターやロケットは反作用で飛ぶ。


「UFOが初めて目撃された20世紀初期に比べて、今の時代は乗り物が高速で空を飛ぶのも珍しくない時代だよね。それでもUFOには特異な性質が残る。機動力だよ。例のUFOの写った映像を見返して欲しい」


 その発言を受けて、もう一度映像を見返してみると確かに違和感を覚える。


「UFOが画面外から勢いよく入ってきて急停止、一瞬画面内に留まるとまた急発進して画面外へ」


「そう、それも来た方向に戻るようにね。普通はこんな動きできない」


 理巧が動画の実況解説をすると百華が追加でコメントする。


 慣性の法則、ニュートンの運動の第一法則と呼んでもいい。物体は力が働かない限り、静止していれば静止したまま、運動中なら等速直線運動を続けるといったものだ。当然、UFOも実在するならばこの法則に従うことになる。

 普通の自動車が道路上で急停止、後ろに向かって急発進すれば、警察のお世話にはなりそうだがこの映像のUFOの動きは地上で再現できるだろう。では空中でもできるだろうか。


「空気中じゃあ、急停止も急発進もできないんだよ。魔法がない限り」


「まぁUFOの飛行技術に魔法が使われてる可能性は分かった。でも、それじゃあ宇宙人じゃなくったって、地球の人間が作った乗り物っていう可能性はどう排除するんだ」


「UFOっていうのは、それはもう昔から飛んでるんだよ。人類が魔術を開発する遥か昔から。じゃあ、その魔術はどうして発展したんだっけね」


 ファイの指摘に、指摘を待ってたいたかのように百華が聞き返す。


「そっか、降魔(こうま)か」


 ここにいる誰もが頭に思い浮かべたことを代弁するように理巧は呟いた。

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