80.日光東照宮
80.日光東照宮
3人は次の目的地、日光東照宮へ向け出発した。
ちょうど到着した頃には昼時になっていた。
有名な場所ということもあり、多くの人が参拝に訪れていた。
ちなみに海斗の要望で有名な観光地に行きたいという理由で決まったのだった。
石鳥居をくぐり境内に入ると五重塔がそびえていた。
3人は各々五重塔を写真に収めて拝観料を支払った。
表門を抜け、煌びやかで趣のある建造物が並んでいた。
3人は順路に従いゆっくりと境内を見て歩いた。
卓は、たまに遼を横目で見ながら
"あぁ可愛いなぁ"と思いながら風景を撮るふりをして遼の横顔を写真で撮っていた。
3人は三猿が掘られている神厩舎に立ち寄った。
「これが有名な三猿か!見ざる・言わざる・聞かざる」
と海斗は見ていると、遼が後から付け加えて説明をした。
「悪いことを見たり、聞いたり、言ったりせず、良いことだけを受け入れて成長をして欲しいって意味が込められてるんだって」
「ほぉーそれでか・・・でも悪いことって何をもって悪いって決めるんだろうねぇ」
と卓はうーん、と納得がいってない様子で見つめていた。
それをみた遼は、うわっでたっ卓のこのモード始まったぁ~と思いながら見ていた。
「たまに卓って的を得た事を言い出すよな」
「違うよ、海斗。卓は偏屈者なんだよ」
「なんだよ!それ!だって変だなと思ったんだもん」
遼の言葉に卓はムッとした様子で言った。
2人の様子を見ていた海斗もうーんと考えながら
「結局、良い悪いを決めるのは誰かじゃなくて自分だと思うよ」
と海斗は遼と卓に言うと続けて言った。
「世の中の大半は良い面と悪い面があって見方によって全く違う。
だから悪いことって言うのはきっと他人の悪い面ってことじゃないかな。
他人の悪い所をみないで良い所だけ見てあげましょう!的な、そうしたらすっと入ってこない?」
海斗の言葉におぉぉっと2人は言うと
「なるほどねぇー!そう言う事か!」
「卓、納得出来た?」
と遼は子供に諭すように言うと
「うん!海斗の考え、採用!」
と卓は頷きながらそう言った。
卓は、良くも悪くも物事を深く考える癖があり
分からない事に違和感をもってしまうと、
それを自分の中で解消しないと気が済まない性格だった。
遼は、卓のそういう所が少しめんどくさいなぁとは思いつつも
そこが卓の良い所でもあると思っていた。
3人は東照宮をぐるりと回り終えると時間は14時を過ぎていた。
「そろそろ帰ろうかー」
と海斗は言うと、3人は東照宮を後にして駐車場に戻ることにした。
途中、参道で少し遅めの昼食を済ませ、3人は千葉へと車を走らせた。
3人が千葉へと戻る頃には18時を回っていた。
帰る前にどこかお風呂でも入りに行くか~
という流れになり、3人は千葉にある温泉付きのスーパー銭湯に立ち寄ることにした。
休日ということもあり少し混雑していた。
せかせかと体を洗った後、3人は露天風呂に浸かりながら、
今回の旅行の話で盛り上がっていた。
「ねぇ、次どこいこうか?」
と卓は遼に聞くと
「もう次の予定決めるのか」
と遼は少し驚いた様子で聞いた
「だって、連絡しても返ってこないから、直接次の予定を決めた方が良い!」
と卓は言うと
「じゃあ次は富士山が良いなぁ!まだ近くで見たことないんだよね」
と海斗はまだ行ったことない場所をあげた。
「富士山かぁー近くに湖があるからそこに寄るのもありだなぁ」
と遼は言うと
「おぉじゃあ次は、富士山に決定!んでいつ行く?」
と卓は言うと
「そうだなぁ・・・8月の始めなら空いてるよ」
と遼は予定を思い出しながら言った。
「じゃあその辺でいくということで!」
「卓のその行動の速さ凄いよね」
と遼は感心していると
「だって、絶対2人とも今度行こうぜって言って
結局口だけになるだろ!だからもうここで決めるのだ!」
と卓は2人に言うと、まんざらでもない様子で遼と海斗は笑った。
銭湯を後にした3人は遼を家まで送り届け、
卓と海斗は家路へと向かった。
「なんか卓と遼の仲の良さが今日分かったよ」
と海斗は運転しながら助手席の卓に言うと
「えっ?どういう所」
と卓は聞いた。
「遼は卓にとって大切な友達できっと告白しても大丈夫だってことだよ。
遼ならきっと告白しても卓のこと嫌いになったりしないよ」
海斗の言葉に、卓は少し考えるように頷くと
「でもそしたら、海斗は・・・俺は海斗とも一緒にいたい。
3人仲良く・・・だから俺はこのまま3人仲良くずっといられたらいいなぁって思ってる。
俺のこの気持ちは一生伝わらなくても構わない」
と卓は言うと、海斗は
「そうか・・・でももし俺が卓の邪魔になるんだったら、俺は卓の元から消えようと思う」
海斗の言葉に間髪いれずに
「そんなこと言うなよ。海斗は俺にとっても大切な人なんだから」
と卓は言うと海斗は少し寂しそうな顔をして
「うん。そうだな・・・ゴメン」
と海斗は言った。
2人の間に静かな空気が漂い始めた。
それから3人で8月9月10月と
車で移動出来る範囲でいろんな所に出かけた。
帰りに毎回次の旅行の計画を立てるのが定番になっていた。
9月には海斗の誕生日会を行い、
この3か月の間で卓と遼と海斗の間に確かな絆のようなものが芽生えていった。
そして11月になり、海斗が1か月ほど大阪に単身赴任することが決まった。




