63.3人の喫茶店
4月9日 遼の誕生日
海斗が千葉に引っ越してきたことで3人の関係が徐々に・・・
63.3人の喫茶店
4月の初め
卓・遼・海斗の3人は
卓の熱烈な誘いで『とある喫茶店』で食事をしていた。
テーブルには3人分のブレンドコーヒーが置かれている。
「そういえば、3人でここ来るの初めてだね」
卓は、甘いコーヒーを飲みながら言った。
「そうなんだよ!ずっと3人でここに来たかったんだ!二人の愛が育まれたこの場所に!」
ぶほぉ!海斗の言葉に卓は吹いた。
「愛って!そんなんじゃ」
何を言い出すんだ!バカッ
「あれ違った?二人とも仲が良いから」
と海斗は、にやっと笑いながら言った。
「まぁどっちでも良いけど。それよりシェアハウスはどんな感じ?」
と遼はそんなの気にもせずに話し始めた。
さすが鈍感男。
こんなことじゃ卓の気持ちなど気づくこともない。
「まだシェアハウス始まって何日も経ってないから分からないよね」
と卓は心の体制を立て直しながら言うと
「でも、順調だし楽しいよっ!」
と海斗はマウントを取るように言った。
その返しに遼はちょっとムッとして
「ふーん。まぁでも、お互い嫌な所がそのうち見えてきて
どうなるか分からないから、気をつけないといけないよね。
まぁ俺は卓とはずっと友達だから
多少の嫌いな所があったとしても許しちゃうけどね」
と遼は、嫌味ったらしく返した。
「それに関しては、全然ご心配なく…
卓の嫌な部分が見えても全然平気だからね」
と海斗は、さらに熱が入った言い方をした。
「そうかなぁ。卓はその大きさで意外といびきうるさいぞ」
えっ…遼そんな事思ってたの?
「あぁそんなの全然大丈夫。
俺なんか卓が洗濯機に雑に脱いだ服、
ちゃんと裏表戻してから洗濯してあげてるし!」
それはもう済んだ話だろ…
「そんなのまだ序の口で卓の足はめっちゃ臭いから
その匂いを毎日感じると思うと住めたもんじゃないよ」
お前俺の足の裏嗅いだことあんのかよ…
「それ位平気だよ。俺、卓がトイレで歌う鼻歌聞いてても愛おしいなぁって思えるし
全然嫌な部分見せても平気だから」
うわっ…あれ聞かれてたの?
トイレの神様歌ってたのバレてた?恥ずかしっ
「でも卓のおなら臭いだろ。兵器かと思うほどの悪臭するから。
あっごめん。まだ心許してないから、海斗の前ではおならしたことないか」
「ストップ!どうしたの?二人とも!途中から俺の悪口大会になってるから!」
卓は2人の会話に止めに入った。
「ごめんごめん!ついノリで」
と遼はニヤニヤと微笑みながら卓を覗いた。
卓は遼の表情に顔を真っ赤にした。
「ったくもぅ・・・」
遼の顔を直視出来ずに下を向いて
平然を保つようにコーヒーを口に入れた。
かわいいぃ・・・卓・・・
あぁ今すぐ抱きしめたい!
卓が必死に平然を保とうする仕草と真っ赤になった表情を
目にした海斗の心は騒がしかった。
「卓ってからかいがいがあるよなぁーそういう反応とかみてて楽しいし!」
遼はそう言いながら、コーヒーを飲んだ。
卓をみつめるその表情は、まるで弟をみてからかう兄貴のような顔をしていた
そしてその遼の言葉に卓は嬉しそうにニヤけながらも
必死に平然を保っているのが手にとるように海斗には分かった。
「それで本題なっ!今日皆を集めたのには理由があって」
と卓は仕切りなおすように二人の顔を見て話した。
「遼って明日まで空いてるよね?」
「空けといてって言われたから予定空けてあるけど・・・何やるの?」
「フフフ!来週4月9日は遼の誕生日だろ?
でも来週はきっと彼女さんとイチャイチャするだろうから、
今日遼の誕生日会をうちでやりましょーーー!」
と卓は言うと、二人はえっという顔をした。
「ちょっ…せめて本人は言わないと、ってか同居人の俺には言おうぜ」
「サプラーイズ!」
「いや、俺にまでサプラーイズしなくてもいいだろ」
「そっちの方が楽しいかなと思って。
遼今日も明日も空いてるみたいだから、
今日はうちで遼の誕生日パーティーということで」
「お…おぅサンキューなぁ…」
少し照れて笑う遼の顔に嬉しさがにじみ出ていた。
この年になって誕生日を祝われる事などまず無いし
誕生日会という行事すらやらなくなっていた
そういえば…あいつ…俺の誕生日知ってるのかな…
と遼は彼女の事を思いながら心の中で呟いた。
次回、遼の誕生日会




