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少数派の恋愛事情~Minority Love~  作者: take
Chapter of Shared House.
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56.ホワイトデー

56.ホワイトデー

3月14日

寒さの中に春の兆しのぽかぽかさと温かさが交じりあう季節。

卓と遼は千葉の近くの公園で桜を見に来ていた。

桜並木が続き、風でゆらゆらと木が揺れている。


「もう春だねぇ…」

遼がそう言いながらしみじみと桜を見ながらそう呟くと、ウグイスが鳴く声が聞こえた。

「おっ…ウグイス!春の知らせの音だなぁ。遼は春が来たなぁって思うのはどういう時?」

卓は桜を眺める遼を見た。

「そうだなぁ。俺はやっぱり桜かなぁ。卓は?」

「俺は、つくしなんだよね」

「つくしかぁ…そこは確かに目が行かないよな」

「そうなんだ。みんな目がいかないでしょ。でもさ、その目が行き届かない部分でもちゃんと春を感じさせてくれるそんな一生懸命なつくしが俺は好きなんだよね」


卓はそう言いながら桜の下で空に向かって背筋を伸ばすつくしをちょんと触りながら言った。

そんな卓の姿を遼は微笑ましく見つめていた。

人が目につく花形ではなく、陰でひたむきに生きている者に目を向けられる優しさが愛おしいなぁと感じていた。


「あっ、そういえば!これバレンタインデーのお返し」

と遼は、ポケットからチョコレートを取り出した。

「えっ?絶対忘れてると思ってた。ありがとー」

卓は嬉しそうにチョコレートを見ながら微笑んだ。


遼のチョコ・・・うわぁ嬉しい!やばい!


「もしかして、話ってこれのことだったの?」

と卓は、聞くと遼は首を横に振った。


「実は3月から付き合ってる彼女がいるんだ」


遼の言葉と共に春風が吹き付けていく。


卓の頭が真っ白になり心が停止していく。


「そうか・・・良かったね」

心が停止し、ぽっと口からでた言葉。

「卓には話とこうと思って。友達の知り合いで紹介してもらった女性なんだけどさ。今度鎌倉に一緒に行くんだ」

言葉が入ってこない。

何が起こっているのか分からないこの状況に卓は涙が出そうになる。


だめだ・・・ここで涙はやばい・・・


「そうかぁ・・・じゃあ今までみたくは会えなくなるね」

「そんなことないんじゃないか」


あるよ・・・

バカ・・・

そうやってお前は彼女をいつも大切にしないから


「今回は彼女を大切にしろよ」

卓の言葉に遼は

「分かってるよ・・・大切にしないとな」

遼はそう呟いた。


春の風が吹き付け、二人の周りを桜の花びらが散っていく。

卓の思いが春の風に包まれ埋もれていく。


こんな・・・

こんな縁結びを期待してたわけじゃないんだ・・・


目の前にいる遼の顔が、自分の涙で目がにじみそうになる。



喉の奥がいたみと共に淡い記憶が蘇る。


遼に始めての彼女が出来たのが高校2年生の時だった。

テンション高めに俺に報告してきたあいつに俺は同じテンションで喜んだのを覚えている。

俺の思いより遼の思いをもちろん優先したし、少し寂しくもあった。

きっと彼女と一緒に帰るだろうし、休みの日も彼女と遊び、これからは俺が入る余地がなくなるんだと理解していた。

「卓。一緒に帰ろうぜ」

それでも遼は、あいも変わらず俺と一緒に帰っていた。

「彼女と帰らなくて良いの?」

「だって道反対だし良いんじゃない?」

遼の言葉にそういうものなのかと思いながらいつも通り一緒に帰っていた。


内心は彼女と帰らなくて大丈夫かなぁと思う中、彼女よりも俺を選んでくれている。

それがどこか嬉しくもあった。


そりゃあそうだよな。

遼とは長い付き合いだもの。

彼女よりも俺の方が大切なんだ。


でも、それは違った。


遼から彼女から別れ話を告げられたと話を聞いて、あっ俺のせいだと理解した。


『あなたとは友達としか思えない』

少し辛そうに笑った顔は今でも覚えている。


俺が遼と一緒にいたせいで・・・


卓の中でずっとその記憶がずっと残っていた。



遼と別れて、卓は1人になった。

卓は家に帰るとすでに夕飯が用意をされていた。

重い足を引きずりながらリビングへと向かった。

「お帰り!ごはん出来てるよ」

「うんー」

卓は2階の自室へと上がり荷物を降ろした。


シックな紺色の紙袋に入ったホワイトデーのチョコが卓の目に入った。


なんでこんな日に・・・

こんなこと聞きたくなかった…

俺じゃダメなんだ。

あーちきしょぉ…


月夜の灯が部屋を照らす。

ベットの横でもたれながら座る。

こらえていた気持ちが涙となって溢れ出す。


だめだ…止まんない…

止まれ…くそぉ…涙が…


卓は、縁結びのお守りを財布から出して手の中でぎゅっと握った。


「卓ー?ごはん冷めちゃうんだけどー!卓ー?」

卓の母親が階段をどんどん登ってくるのが分かった。


まずい…このままじゃ…


卓は真っ赤な目を必死にこすったが、どうしても泣いた跡が残っている。


うわぁ…ダメダ!

泣いてたのがバレる!


がしゃん


卓母は卓の部屋の扉を開いた。

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