5.行きつけの喫茶店
海斗の提案により、卓は喫茶店へと向かった。
5.行きつけの喫茶店
ソクミミショップを後にした2人。
「このあとどうしよっか。卓はどこか俺におすすめしたいところはある?」
海斗は歩きながら卓に聞いた。
「おすすめの場所か・・・」
卓はしばらく考えていると、
「卓が俺に紹介したい場所あればそこが良いな」
「そしたら、千葉にある俺の行きつけの喫茶店があるからそこでお茶する?」
「卓の行きつけの喫茶店・・・行きたい!そこがいい!」
「じゃあとりあえず・・・原宿駅に連れてって」
「あっそっか」
卓が東京に慣れていないことを忘れていた。
海斗は、原宿駅まで一緒に歩き、その後電車に乗って行きつけの喫茶店へと向かった。
何度か乗り換えをし電車に揺られながら喫茶店へとたどり着く頃には夕方になっていた。
2人は店内に入りテーブル席に腰を掛けるなり、
「マスター、コーヒーを2つお願い」と卓がカウンターにいたマスターに声をかけた。
2人が落ち着いたところで海斗が興味深々に
「ここが卓の行きつけのお店か・・・ねぇ誰と来るの?」と卓に話しかけた。
「ん?ほとんど遼としか来ないよ」
「へぇ・・・遼君ねぇ!どんな人なの?」
「んーっと・・・一言で言うと普通かな」
「普通・・・」
「そう。普通をまるで絵に書いたようなフツウの男」
「会ってみたいなぁ・・・ねぇ今度会せてよ!」
卓は少し悩み考えると、海斗の顔をみて
「分かった。今度聞いてみるよ!・・・あっそういえば!」
そう言いながら、卓は今日の戦利品の中から海斗が買おうか悩んでいたペンを2つ取り出した。
「これおそろいのペン!一つあげる。コースターのお礼だよ」
「えっ!?良いの?」
「良いよ!キャラクターのペン恥ずかしくて使えないって言ってたけど、いつかそのペンを使えるまで持っててよ」
「うわぁ…なんかいいなぁ・・・こういうの」
海斗は照れくさそうに笑った。
「こっちまで恥ずかしくなるな。遼はこういうの受け取ってくれないからな」
「遼君とおそろいとかしたいの?」
「うん・・・したい。おそろいのものとかしようとすると、『やめろ。恥ずかしい』って言われるんだ」
確かに男同士でおそろいものはフツウの男だったら嫌がるもんか、と思う海斗。
「遼君は本当に普通の男って感じなんだね」
「そうなんだよ!」
「遼君は恋人とかいるの?」
「んー。高校んとき付き合ってた女性はいたよ。なんか知らない間に別れたけど」
「そうなんだ・・・今は?」
「あまりそういう話しないけど、多分いない」
「そっか・・・」
「海斗は遼にそんなに興味あるの?」
「まぁね・・・一度会ってみたいなっと思って」
「別に良いけどどうしてかなぁと思ってさぁ」
「それは・・・」
海斗が返答に渋っていると、マスターがコーヒーを2人が座っているテーブルへ届けに来た。
「お待たせ致しました。コーヒーでございます。」
エプロンを身に纏った、いかにもな格好をしたマスターは届けるなりカウンターに戻っていった。
2人は運ばれてきたコーヒーを飲みながら、一息ついた。
「んっ・・・このコーヒーうまいっ!」
「だろっ。俺が子供の頃からある喫茶店なんだよね。まぁ子供の頃はホットミルクしか飲めなかったけどね」
「じゃあ本当に思い入れのある喫茶店なんだ」
海斗は辺りを見渡した。この景色が卓がずっとみてきた景色なんだとしみじみと感じていた。
「遼君と3人でここに来てみたいな・・・」
ぼそっとつぶやいた海斗。卓はそれをもらすことなく聞いていたが、コーヒーを飲みながら聞こえていないふりをした。
卓と海斗はコーヒーを飲み軽く雑談をしその後お会計をすまして、喫茶店を後にした。
夕方に入店したせいか辺りは暗く既に夜になっていた。
「今日はありがとう。じゃあ俺ホテルに戻るわ」
海斗は手を挙げて去ろうとした。
「おぅ・・・あっ!いつまでこっちにいるの?」
「明日には大阪に帰るよ。また休みの日にこっち来るからそしたら連絡する」
「分かった。そん時は遼も一緒に!」
「うん。じゃあまたな!」
「じゃあね!」
2人は反対方向に向かって歩き始めた。
卓に会う前にすでにチェックインを済ませていたホテルに帰った海斗は、フロントで鍵を受け取ったあと足早に自室へ向かった。
部屋につくとまずはシャワーを浴び、すっきりした体をフワフワのタオルで拭きあげ、寝間着に着替えた。
半袖短パン姿になって今日買った戦利品たちを机に並べた。
その中には、卓が選んだぬいぐるみと卓からもらったペンももちろん置かれている。
深くため息をつきながら、卓からもらったぬいぐるみを両手に持った。
お前・・・かわいいなぁ
海斗はぬいぐるみに向かってそうつぶやき、片手に持ち替えて卓にもらったペンをつかんだ。
また、会いたいな・・・
次回、卓と遼の喫茶店に舞台は移動!