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少数派の恋愛事情~Minority Love~  作者: take
Chapter of Happy Holidays.
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46.帰りの車

真夏(※掲載当時)のクリスマスの話もこれで終わり。

『Last Christmas』を聴きながら読んで頂けると100倍楽しめると思います。

#まいらぶ

46.帰りの車

クリスマスのイルミネーションのショーが終わり、カップル達はみんな遊園地のゲートを抜け駐車場へと向かっていた。

もちろん卓と遼もそれに合わせて、車へと向かっていた。


車に乗り込んだ後も、帰宅ラッシュの渋滞に巻き込まれ思うように進まず、2人を乗せた車はゆっくりと動いていく。

助手席で遼は、大あくびをしながら目がトロンとしてきていた。

「眠かったら寝ていいよ」

卓はそれに気づいて遼に声をかけると、"大丈夫起きてるよ"と声は聞こえたが、おぼつかない小さな声であった。

これは寝ちゃうなぁと卓は思いながら運転をしていた。

案の定、間もなく遼は首を傾げながら目をつぶっていた。

卓は渋滞で止まっている時に遼が寝ている姿を確認し、その無防備に寝ている姿が愛おしくてたまらなかった。


遼の寝顔可愛いなぁ・・・

この前は薄暗くて見えなかったけど

今なら遼の寝顔がじっくり見られる…


卓は遼の顔を覗きながらじっくりと堪能していた。

出来ることならこの時間が永遠に続けば良いのにとすら思えるほど、

卓にとって幸せな時間が流れていた。

そう言えば、俺が初めて遼を意識した時も…

こんな感じだったよなぁ~


卓は中学生の夏の時期を思い出していた。



中学2年生の夏



電車で30分ほど行った場所に大きなプールがあり、卓と遼の2人で行ったその帰りの電車…

卓は鮮明にその時のことを覚えている。

徐々に日が落ち始めてきている夏の夕方。

まだあまり人が乗っていない電車。

遼は今日の様に疲れてウトウトしていた。


「眠かったら寝ていいよ。駅着いたら起こすから」

卓の言葉に、遼は大丈夫…起きてるよ…と眠そうな声で卓に言う。

すでに眠そうなその声に、卓は"俺がしっかりしなきゃ"と自分も眠い気持ちと格闘していた。

遼はウトウトしていたが、やがて寝落ちしてしまい、ゆっくり卓の肩へと寄りかかった。


遼の頭が卓の肩にそっと触れた瞬間、

卓の心臓がうるさく鳴り響いた。

遼の火照った体のぬくもりとやわらかな感触。

すーっという寝息が耳の奥を刺激する。

とくんとくんと脈をうつ遼の心臓の音が卓の中にも響いていく。

汗の匂いがほのかに香る遼の匂い。

目をすぐ横にやると気持ちよさそうに眠る遼の寝顔。


卓が遼を意識したのはこの時からだった。


電車の揺れる振動と遼の鼓動。

そのぬくもりを今でも鮮明に覚えている。

好きという感情がこの事を言うのだと初めて知った中学2年生の夏。

卓は遼の心臓の鼓動が心地よく、釣られて電車の中で寝たのを思い出した。



「あんとき結局一緒に寝ちゃってさ、電車急いで降りたっけ。懐かしいなぁ」


あの頃から十数年・・・

俺たちは体も心も大人になったかもしれない。

でもこうして今でもそばにいる。


それにしても渋滞で動かない道。

車のラジオからクリスマスソング特集で

『Last Christmas』が流れている。


ずっと俺が手繰たぐり寄せた遼との絆。

それをたった一言。

"好き"という気持ちの言葉に発した瞬間、

俺らの絆は切れてしまう。

今日そのことがはっきりと分かってしまった。


遼は非同性愛者ノンケだ。


俺がどんなに好きだとアピールしても気づかないのは遼が鈍感だからではない。

あいつは男が好きという同性愛者ゲイの概念を持っていない。

ありえないことだと思っているから。

だから俺が好きだと気づいてもらおうとしても、鼻から無駄だったのだ。


そのことを・・・

うすうす気づいていたし分かっていた。


でも

心のどこかで

もしかして…

俺の事を・・・


と思っていた。


そんなものは幻想に過ぎない。

都合の良い俺の勝手な思い込みだ。


分かっていたじゃないか。

最初から・・・


前に戻っただけだ。

自分の気持ちに正直になると決める前のあの頃に・・・


すぐ隣にいる遼が

こんなにも遠く感じてしまう。


『ノンケに恋するなんて無駄なだけだよ。諦めた方が良い』

卓が見たネットの言葉が浮かんできて、自然と涙が零れた。


諦められる位なら…

忘れられる位なら…

最初から好きになんかならなかった。


好きという気持ちが消えない。


ダメだと分かっても消えない。


届かないと分かっていても遼への思いが止まらない。


俺は一体どうしたら良いんだろう…



「あっ。ゴメン!気づいたら寝てた」

遼が目を覚ますと、卓は車を運転しながら

「すごいぐっすり寝てたよ!もうそろそろ遼の家に着くから」

「本当サンキューなっ。今日は楽しかったよ」

遼の言葉に卓は少し震えた声で

「俺も、楽しかったよ」

「どうしたの?卓?泣いてる?」

「ん?泣いてないよっ!泣くことなんかないだろっ」

強がりが言いながら卓は震えた声を必死に抑えた。


家の前に到着すると、遼は車の扉を閉めながら

「じゃあなっ!良いお年を」

と遼は返事をした。

「うん。良いお年を」

2人はそう軽い挨拶をしてクリスマスの夜は終わった。

次回は少し時が進んで

新年あけましておめでとうございますの回です。

よろしくです。

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