45.クリスマスマジック
次回でクリスマス最終回・・・
45.クリスマスマジック
クリスマスの夜。
卓と遼が来た遊園地ではイルミネーションが開催されている。
今日は閉館30分前の19時30分からイルミネーションと花火のショーが開催される予定である。
2人はショーを鑑賞するため、大きな広場までやってきた。
その広場には巨大なクリスマスツリーが飾られ、開始10分前になる頃には人が集まってきていた。
クリスマスツリーは色鮮やかに光が輝いており、周囲の建物も黄色にライトアップされていた。
「すげぇ綺麗だなぁー」
遼はクリスマスツリーを自分の携帯で撮り始めた。
卓は遼の横顔を見ながら、そっとばれない様に無邪気なその姿を写真に収めた。
「本当に良いよなぁー」
やべぇ、この写真まじで良いわぁ…
この一生懸命に写真撮ってる顔。
たまんねぇ…
ぼーっと口開いて最高すぎる…
卓は今撮った写真をまじまじと見返していた。
「クリスマスって感じだなぁ」
と遼はツリーを見ながら言うと続けて
「俺、久しぶりだよ。こうやってクリスマスツリー見るの。彼女とかいないとこういう場所に来ないからなぁ。今日は誘ってくれてありがとう。」
「う…うん…」
彼女という言葉に心が動揺する卓。
「遼はやっぱり彼女と来たかったんだね」
「まぁいないから仕方ないけど、いたらやっぱ彼女と来たいかなぁ」
やっぱそうだよなぁ…
あいつはノンケだ…
俺とは違う。
分かっていたけれどやっぱり辛い
胸が締め付けられるような苦しさが卓を襲う。
考えるのは止めよう。
例え遼にその気持ちがなくても今日だけは…
今日だけは遼は俺だけの…
卓は遼がとってくれたペンタ君を強く抱きしめた。
広場には落ち着いたクリスマスのBGMが流れており、
幻想的な空間も相まって次第にロマンチックなムードに包まれてきていた。
「俺は、遼と来れて良かったよ」
卓の言葉に遼はクリスマスツリーを見ながら
「ほんと…俺も卓と来れて良かった」
と返した。
遼のその言葉は、きっと嘘はない。
ただ多分俺と思っている意味合いが違う。
理解はしている。
ただ、それでも俺は言葉に出したいと思ったんだ。
告白をしたい…
周りのカップル達と同じように手を繋ぎたい…
卓の心には、
声に出し伝えたい、
だけどそうできない、
もどかしい感情が溢れてくる。
『ゲイが告白って、自分がすっきりしたいだけだろ』
『こっちの気持ちになって考えてみろ』
言葉に出したいと、
強く願えば願うほど、
ネットの言葉達が刃の様に心に刺さる。
やっぱりだめだ…言えない…
卓は吐き出しそうになる言葉を飲み込んだ。
「そろそろ始まるみたいだよ。みてみて!」
卓は無理やり心を落ち着かせるようにクリスマスツリーを指さした。
辺り一面、ライトが消え暗闇に包まれた。
19時30分
暗くなったクリスマスツリーの先端に飾られた星から徐々に光が広がっていく。
同時にクリスマスの音楽が神秘的な音色を奏ではじめていた。
音楽に合わせ周りの建物たちも次々に金色に輝き始め、大きな花火が打ちあがった。
卓は遼の顔を見つめた。
花火やツリーの灯りに照らされた遼の顔はいつにも増して愛おしく感じた。
手を繋ぎたい…
遼の手を…
卓は自分の手を、
そっと遼の手に近づけた。
その距離は、わずか1cmほど。
もうちょっとで手をつなげるという所で止めた。
サンタクロース、、もし本当にいるのなら、俺の望みはたった一つ…
『遼と一生共に歩みたい…好きだ遼』
卓はその願いを心に秘めて、手を握ろうとした。
その時、遼は手をさっと後ろへと回してしまった。
バレたか…?、と一瞬思ったが
遼は普通にショーを楽しんでいる様子だった。
バレなくて良かったと思った卓の心を見透かしたように
花火がバンバンと上がっていく。
「綺麗だなぁ…」
本当に綺麗だ…
そうか…
これ以上の幸せなことなんかないだろ…
聖夜に大切な人と過ごせる。
そしてこんな美し景色、俺ら二人だけの世界。
これ以上の幸せなことはないだろ!!
馬鹿だなぁ…俺は…
こんな幸せな時間を台無しにしてしまうところだった。
良いんだよ。今は…
遼がどんなふうに考えていても
今夜だけは遼を独り占めできるのだから…
花火とイルミネーション、クリスマスツリー、、、
そして、クリスマスの煌びやかな音楽達が
2人をロマンティックな世界へと誘っていく。
次回、帰り道で…




