40.クリスマスの遊園地
いま夏なのにクリスマスを書いている不思議な感覚。。。
40.クリスマスの遊園地
12月25日の昼前。
千葉県内の少し離れた場所にある遊園地に向かうため、卓は遼の家の前で自分の車を停めて待っていた。
軽自動車ではないのだが、乗用車にしては少し小さめの車である。
車内はシロブチ犬のグッズが運転の妨げにならない程度に飾られている。
卓は運転席に座りながら遼に電話を掛けていた。
あいつ…まだ準備してるなっ…ほんと時間にルーズなんだから…
遼が電話に出ず仕方なしと携帯をいじりながら待っていると
トントンと助手席側のドアを叩く音が聞こえ遼がこちらを覗いていた。
窓から覗いていた遼の顔を見て卓はどきんとした。
あぁ…遼可愛い…ここから見る姿めっちゃ可愛い
おっといかんいかん
卓は鍵を開けるとすぐに遼は助手席に座った。
「すまんすまん。準備に時間がかかちゃって」
「いつものことだから平気だよ。それじゃあ行こうかっ!」
卓はそう言うと車を走らせた。
遊園地までは片道1時間位の距離。
ラジオから流れる音楽によりクリスマスムードが一気に増していく。
「結局今年も彼女出来なかったなぁ。やっぱ社会人になると出会いないよなぁ」
遼はクリスマスソングを聞いているうちに恋人がいないクリスマスに急に空しくなったのか、ぼそっとつぶやいた。
卓は黙って聞いていたが"彼女"という言葉に動揺をしていた。
「そういえば、最近ある漫画にハマっててさぁ」
卓は話題を切り返すようにしゃべった。
「おっ…どんな話?」
遼の言葉に卓は少し迷ったが、どんな反応をするか確認しておきたかった。
「先に言っておくけど遼はBL系の漫画は好き?」
卓の中で一つの賭けだった。
「興味ないかなぁー。俺苦手なんだよねぇ」
「あっそうなんだ…」
卓はやっぱりかと思いながら、気持ちが下がっていく。
「ほら、良く少年漫画でもさぁ腐女子が勝手にカップリングとかしてるじゃん。俺、原作が好きだからどうしても嫌な気持ちになっちゃうの」
「それは同人誌の方ね。俺が言っているのはちゃんとした漫画だよ」
「あぁ。そっちね。でも読んだことないなぁ…」
「まぁそうだよねぇ」
「卓は見るの?」
「んー。その漫画がたまたまBLだったんだけど、すごく切ないんだよなぁー」
「ふーん。俺はもう恋愛ものとかはいいかなー」
と遼は、言うと携帯をいじり始めた。
「まぁそうだよなぁ。遼はあんま興味ないよなぁ」
卓はそう言いながら内心モヤモヤとした気持ちが浮いていく。
2人の車内での会話は途切れたり、話したりを繰り返しながら道中のドライブを過ごした。
卓は隣で遼を感じられる、それだけで十分に嬉しかった。
「なんかさぁ…」
と遼はふと呟いたようにしゃべりだした。
「何も話さなくても気まずくならないのって良いよなぁ」
遼のその言葉に卓は一気に距離が縮まったような感覚になった。
普段あまりそう言う事を言わない遼からの言葉。
俺のこと良いって言ってくれた。
それだけでテンションが上がっていく。
「そうだなぁ。確かに…まぁ長い付き合いだからなぁ」
「卓じゃなかったらここまでの付き合いにはならなかっただろうなぁ」
ふがっ!なんて言葉を…
あぁこういうことたまに言ってくるから諦められないんだ。
こいつのツンデレに何度やられたことか…
「卓はなんやかんや俺のそばにいてくれたしなぁ。良い友達を持ったよ」
友達かぁ…俺は…俺は!
「俺は、遼の事…」
「ん?」
「し…親友だと思ってるよ」
「まぁ子供からの付き合いなんてそうそういないからな。確かに親友かもな」
そばにいられればどんな形でも構わない。
卓はそう思いながら運転を続けた。
そうこうしているうちに遊園地にたどり着いた。
2人はチケットを買って入場ゲートへ向かった。
クリスマスだけあって男女のカップルが多く、卓と遼は否めない場違い感を出しながら入場ゲートへと入っていく。
「やっぱりカップル多いなぁ。まぁ俺らは俺らで楽しんでいこうぜ」
遼の言葉に卓は頷くと隣を歩いた。
園内に入るとすぐに見える巨大なクリスマスツリーと円形に広がる広場。
そしてその周りには洋風な建物が立ち並んでいる。
「ここの広場で夜はイルミネーションショーやるみたいだよ。花火もあがるみたい!」
卓はパンフレットをみながら伝えると遼はツリーをみながらへぇーと声を出した。
「まだ夕方まで結構時間あるし、一回りしてみる?」
「そうだなっ。結構広そうだしなっ」
遼はそう言うとスタスタと歩いて行った。
本当にクリスマスに遼と2人で…
卓は胸を弾ませながら隣を歩いた。
次回、遼から卓へのクリスマスプレゼント!?




