38.卓の恋話
今回の話で誕生日会編は終了します。
そして次回から、クリスマスとお正月編スタートします。
38.卓の恋話
友達の家での誕生日会。
まるで小学生の時のような誕生日の一時を過ごした卓たちは、近くのスーパー銭湯に汗を流しに来ていた。
「誕生日っていつになっても良いよなぁ」
卓は湯船に浸りながら先ほどの事を思い出していた。
「本当だよなぁ。まさかこの年になってあんな誕生日会を開いてもらえるなんてなぁ。卓の家族は本当に温かいよ」
と海斗はしみじみと言った。
「俺も卓の家族を見ると自分の家族に会いたいなぁって思うもん。ずっと一人暮らしだからさ」
と遼も応えた。
「遼は家に帰ったりしないの?そんなに遠くないんじゃない?」
「んー。まぁたまに帰るよ。ただ一人暮らしも結構楽しいしな。たまにで良いかなぁ」
と遼はぐーんと体を伸ばしながら言った。
「でも、一人暮らししてると太ってきちゃうんだよなぁ」
と遼はお腹をつまみ
「へぇーどれどれ」
と海斗も遼のお腹を揉んだ。
そこそこあるなぁと笑い、肉をつまんでいた。
それをみて卓は羨ましいと思いながら黙ってみていた。
「まぁあるっちゃあるけど、そんな太りすぎでもないじゃない?」
「これでも前は痩せてたんだけどね」
と遼は言いながら自分のお腹を隠した。
「次は、4月、遼の誕生日だね」
3人の話題は再び誕生日の話に戻っていた。
「そうだなぁ。俺の誕生日はそんなに盛大に祝わんででも良いよ」
と遼は言ったが
「いやだ!盛大に祝う!」
と卓は、ふんと言葉を突き返した。
「卓は、一度決めたら絶対だからなぁ」
と海斗は苦笑いをすると
「本当、頑固なやつ」
「いや。遼には言われたくない!」
と卓は言い返す。
「なんでよ」
「なんでって遼も結構頑固だよね?」
と海斗に聞くと
「うーん。自分の譲れない部分は頑固だけどそれ以外は任せる感じだよね。2人そろって。2人は似たもの同士だよ」
と海斗は返すと、卓と遼は向き合った。
「そうかなぁ。俺は遼と似たもの同士…」
うれしいなぁと卓はそう思っていた。
「そんなに似てるかなぁー?」
と遼は返したが、卓は自分の妄想で精一杯だった為、遼の話を流した。
「正反対の2人だけど根本は似てるよね。朝と夜みたいな感じかな。朝は卓。夜は遼」
「じゃあ海斗は?」
「俺はなんだろうなぁ?夕暮れ?」
と海斗はうーんと色々考え悩んだが結局、答えは出ずに終わった。
スーパー銭湯を後にしてさっぱりした3人は再び卓の家へと戻った。
途中で買ったお酒やツマミを卓の部屋の机に置いた。
「それでは、改めまして、卓、誕生日おめでとうカンパーイ!」
そう海斗が言いながら乾杯をした。
ふーっ!ウマい!
3人は酒を堪能しながら会話を楽しんだ。
「そう言えば、2人ってずっと子供の頃から一緒だったんでしょ?恋話とかしないの?」
海斗は酔った勢いで聞くと
「俺も、卓もしないなぁ。俺も自分から好きになることあんまりないしなぁ。卓はどうなのよ?」
遼の答えに卓は、考えながら
「好きな人いるよ…」
卓の答えにぶっと海斗は噴き出す。
「ちょっとどうしたの?海斗!」
「ゴメンゴメン。ちょっと咽ちゃって」
「それは今だよね?それとも過去?」
と遼は言うと
「現在進行形…片思い中」
卓の言葉に、なぜか一番ドキドキしている海斗。
「へぇー卓の口から恋話が出るとは思わなかったなぁ。それでどんな人なの?」
と遼は聞いた。
「どんな人…。
そうだな1番信頼してて、クシャって笑う笑顔が凄い好き。
生き方が器用って周りからは思われるけど、
実はすごい不器用でさ、そういう所を俺にだけ見せてくれるから、あぁ愛おしいなぁって思う。
いつも俺の事を微笑ましく見てくれて、普段は全然優しくないのに、たまに見せる優しさにキュンとする。
あ、あと、俺が結構アプローチかけてるけど全然向こうは気づいてない。
超鈍感なんだよね。もうかれこれ10年以上片思いをしてる。
未だに良く会うんだけど多分友達としか思ってないんじゃないんかぁ。
あとそれから…」
卓…それ遼のことじゃん。分かりやす過ぎる。
と海斗は思いながら、多分遼は気づいてないんだろうなぁと思って眺めていた。
「卓…それって…」
!?
気付いたか!
「めっちゃ好きなんだね。その人の事。そんなに人を好きになったことないから羨ましいよ。でもそんな話初めて聞いたなぁー誰だろー?」
いやお前だよ!
と海斗は突っ込みを入れたが黙っていた。
「…わりかし近くにいるかも」
「へぇー!会社の人とかなのかなぁ」
いや鈍感かっ!あほなのか!こいつ
そう思いながら、海斗は遼の事を見たが
全く気にも留めずにお酒を飲んでいた。
次回、クリスマス編へ突入!




