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少数派の恋愛事情~Minority Love~  作者: take
Prologue.
4/108

4.ソクミミショップ

シロブチ犬カフェを後にして、次は、海斗のお楽しみ、ソクミミショップに向かう。

4.ソクミミショップ

卓と海斗は、シロブチ犬カフェで至極のひとときを過ごし、意気投合をした2人の会話からは敬語は消えていた。

「めっちゃよかった!海斗ありがとう!俺1人だとここに来れなかったよ!」

「おおげさだなぁ…」

卓の喜ぶ姿と笑顔をみて胸がいっぱいになった海斗。

「それじゃあ次は、ソクミミショップに連れてって下さい!!」

「了解!えーっとソクミミショップは…」

海斗はスマホで検索をしながら地図を開いた。

「あっ…こっちだな…着いてきて!」

まるで親鳥の後をくっついて歩くひよこの様に海斗の後をついて歩く卓。海斗はその姿を見て愛おしく感じていた。


「えーっと・・・ここの店の5Fだね!」

しばらく歩いていくとソクミミショップが入っているテナントビルがあり、2人はそのビルの中に入っていった。

「うっ・・・香水きっつ…」

テナントビルに入るといきなり匂ってくる香水のコーナーの香り。

「香水の匂い苦手なの?」

と海斗は聞くと、

「そうなんだよねっ。俺、鼻だけは良くて!たからこういう香水の匂いとかは正直きつくて…」

と少し辛そうに話す卓。


2人は少し早足で香水コーナーを通り抜けエレベーターホールまでたどり着いたが、悲しいことにエレベータは8Fの屋上まで上がっており1Fまで降りてくるのに時間がかかりそうだった。


「階段でいかない?」

ふと卓は隣にある階段を指さして言った。

「えっ?階段」

「うん。こっちの非常階段でさ、」

「まぁ良いけど…」

卓と海斗は、エレベーターホールの脇にある階段を利用して登り始めた。

「卓ってじっとしてられないよね…」

「うん。そうなんだよ・・・常に動いていないと生きられない魚みたいでしょ」

マグロかよ・・・

と心の中でつぶやく海斗。

ソクミミショップがある5Fまで階段で登り、エレベーターの前を通ると表示はまだ3Fを指していた。

「ねっ?階段の方が早いでしょ!」

お前は一体何と競っているんだ…と心の中で思う海斗。

卓は少し息を切らしている海斗の肩をポンポンと叩きながらしゃべりかけた。


「あっ?ここじゃない?ソクミミショップ!」

卓が指を指した先には、黄色くて長い耳を持つ丸い生き物のぬいぐるみがずらりと並べられ、ポスターや雑貨なども展示してあった。

「か、かわいい…あぁぁ癒し・・・」

海斗の心は一気にソクミミたちへ引き寄せられていく。

海斗にとってまさに聖地であるこの場所にゆっくりと足を踏み入れていった。


黄色くて丸い生き物に誘われて、海斗のテンションが上がっていく。

「やばっ・・・カワイイ」

海斗の口がにっこりと微笑んでいく。

「ソクミミ。かわいいなぁ・・・限定グッズもいっぱいあるよ」

一緒になって喜ぶ卓。男が二人でニタニタと笑いながらグッズを見ている異様な空間。女性が多い店の中で我を忘れてグッズをあさっていた。海斗はソクミミがついているボールペンを持ち、見つめながら呟いた。

「うわぁ…このペン!めっちゃ可愛い!これは、使えないよぉ・・・」

「いや、そこは使おうよ。使わなきゃもったいないよ」

「でも人前で使うの恥ずかしいしな」

海斗はそう言いながら元に戻して、他のソクミミ達をみながら卓に質問をした。

「卓は、シロブチ犬ハマっているのって隠してる?」

「んー。隠してるつもりはないけど、言ってない。でも皆知ってると思う」

「そっか・・・俺は家でこっそり集めてる。会社の人にも言ってないし、バレないように隠してる。でも今日は東京だから知ってる人あんまりいないし楽しい!」

「そっかぁ。良いんじゃない?わざわざ言う必要ないよ」

卓は、ぬいぐるみの顔を見定めるため手に取りながらしゃべった。


「でもなんか、必死に隠してるのにたまに疲れるというか・・・悪いことしてないのに、自分に嘘ついて生きてるみたいでなんかしんどいんだよね」

海斗は、卓をみつめた。卓はソクミミの顔を選ぶのに必死になっているようだった。

「ぬいぐるみってさ1個1個顔違うじゃん。手に取ってみて自分がビビビッてきたもんを買うじゃん」

卓は、選びながら海斗と話を続けた。

「まぁ、そうだよね!俺もそうする」

「それみたく、相手に対して自分の何を見せて何を隠すべきか選んでる訳じゃん。そして悩んで悩んで決めたのが海斗自身が選んだ答えな訳だ。うーん・・やっぱこの子かな・・・」

選びながら話を続ける卓。

「よしっこの子だな!」


卓は、ソクミミのぬいぐるみを一つ選んで、海斗の前にみせた。

「こいつが俺のお気に入り!悩んで悩んで、選んだものは尊いわけだよ!俺が選んだソクミミ、少し耳が垂れてるの。そこがこいつを選んだポイントかな!あぁカワイイ!」


そっか。そうだったのか…

呆然と卓をみつめる海斗。


「ん?どうしたの?海斗?」

海斗は、卓をみつめ手に持っているソクミミをみた。

「卓が選んだそのソクミミが欲しいなっ」

「えっ・・・」

卓は少しうつむいて悩んで

「分かった!良いよっ!俺の顔選びのセンスが良いってことだしっ!」

卓は、そう言いながらぬいぐるみを渡した。


2人は、その後もソクミミショップで限定商品などをカゴの中に入れていった。

「やっぱり可愛いものっていいねぇ」

「うん。最高!」

「でも、問題はここからだよね・・・」

「うん・・・」

2人は息をのんでレジへと向かった。

そしてお会計をみて悲鳴を上げた。


「あ~また、買いすぎちゃったよ」

「かごの中に入れてる時は、アドレナリンが出てるから気づかないけど、レジでぞっとするよね」

2人は、自分たちが出したその金額にドン引きしながら、ショップを後にした。

「でも俺のお気に入りのソクミミが手に入ったし」

海斗は、そう言いながら袋から先ほど卓が選んだぬいぐるみを出した。

「ありがとう!そうだ!写真を撮りたい!」

「いいよっ!どこで撮る?」

「卓?ちょっとソクミミ胸の前で抱きしめて」

「?・・・こう?」

卓は、海斗に言われるがまま胸にソクミミを抱いた。


海斗は、スマホを縦に構えた。

「えっ?」

「これは!カワイイ×カワイイ!」

海斗は、そう言って微笑みパシャリと写真を撮った。

「ちょっと!」

海斗はスマホを見ると、きょとんとした卓の表情とぐてんとしたソクミミのぬいぐるみが映っていた。

「やっぱりね」

カワイイ×カワイイは罪だ!犯罪級にカワイイ!

心の中で歓喜する海斗。

「なんだよ。やっぱりって・・・」

「ん?卓ずっとズボンのチャック開いてるよ」

「えっ・・・うわっ!」

卓は急いで下を向いて、すぐにチャックを閉めた。

「いつから?」

「シロブチ犬カフェでトイレいったでしょ。あんときから」

「気づいたら言ってよー!」

「いやぁ、そういうとこ可愛いなぁと思って」

「全然可愛くないよ!」

卓は照れくさそうに笑った。


悩んで悩んで選んだ答えはどんなものよりも尊いものか・・・

俺が選んだ一番の尊いもの・・・

海斗はソクミミのぬいぐるみと卓をみながら

心の中で呟いた。


次回

卓が海斗にお勧めを紹介!

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