31.ゴーストマンション
まいらぶランドのお化け屋敷。2人はそこで恐怖の体験を目撃する。
心臓の悪い方はご注意を・・・
キシシシシシシシシシ
31.ゴーストマンション
ゴーストマンション。亡霊うずまく屋敷の中を1組ずつ散策していくウォークスルー型のアトラクションである。
卓は順番を待ちながら、出てくる人を注意深く観察している。
笑ってる…笑ってる…泣いてる…笑ってる…
「卓どうした?」
卓の不自然な動きに海斗は聞いてみた。
「いや、皆の反応を見ているだけです」
卓の不自然な敬語に緊張している様子が伺える。
「大丈夫だって。子供だましのお化け屋敷だから」
「そうだけど…でもほら…」
卓は、海斗の手を自分の胸に押し当てた。
・・・!?
急なボディタッチに海斗はどきんと心臓が高鳴る。
卓の異常なほどの心臓の音の速さが伝わる。
「めっちゃ緊張してるじゃん」
そういう海斗の心臓もドンドンと別の意味で打ち付けてきていた。
「そう…もう心臓が吐き出る」
「戻して戻して」
そうこうしている間にも、徐々に2人の番が近づいてきた。
「それでは、お次の方どうぞ」
その言葉と同時に重い軋んだ音を立てて扉が開いた。
中は暗く、2人は最初の部屋へと案内された。
入った扉はゆっくりと閉じ、辺りが見渡せない程の闇に包まれた。
ただ部屋の中の一か所を除いて・・・。
部屋の中央の壁際に暖炉があり、暖炉の灯りでその周辺は照らされていた。
暖炉の上には小太りで髭を蓄えた金持ちそうな男性の肖像画が飾られていた。
その額縁は長方形の金色の豪華なものであり、肖像画の左右には蝋燭の炎が風もないのに揺れていた。
蝋燭の隣には胸に抱えられそうなほどの大きさの、人のような悪魔のような木像が1体飾られていた。
卓と海斗はその暖炉に近づき、壁に建てられた肖像画の前に立った。
「なになになに?何が起こるの?これ?」
卓はビビりながら海斗にしがみつく。
そうこれこれ!これを待っていたのよ。
海斗は心の中で喜びの雄たけびをあげる。
『お前たち、ここに来てはならない』
壁に飾られていた肖像画の男の表情が真顔だったものから徐々に苦痛に顔を歪ませながら語り掛けてくる。
「う・動いてる!絵なんだから動くなよ!なんで動くんだよ!」
卓はビビりながら叫ぶ。
『我々家族の様になってしまうぞ!』
男は額縁の中でそう叫ぶと、部屋の蝋燭が順番に灯り始めた。
部屋の四方には母親・娘・息子と思われる家族が苦痛の顔で助けを呼びながら額縁に閉じ込められ飾られている。
『全てはあの呪いの像“ゴルディータ”の呪いなのだ!この屋敷は呪われている!早くお前たちここから出るんだ!』
男は必死に卓たちに伝えていると、次の瞬間、ゴルディータと思われる先ほどの木像がニヤリと微笑み、"キシシシ"と部屋全体に広がる不気味な声が広がる。
『何をする!おい!やめろ!やめろー--!』
像から放たれた青い稲光が部屋全体に広がると、蝋燭や暖炉の灯りはすべて消え、暗闇に包まれ全く見えなくなった。
「なに?停電?稲光のせい?」
卓の天然ボケがさく裂し、海斗はぷふっと笑みをこぼす。
そして再び灯りが暖炉と蝋燭に灯った時には、肖像画の人物たちはみな白骨化しており、ゴルディータの姿もなくなっていた。
『私は忠告したぞ…お前たちの様な愚か者が呪われてしまうのだ…』
部屋に響く男の声。そしてギシシと次の扉が開かれた。
「海斗逃げよう!ここは危険すぎる」
「えっ…ちょっと」
卓は海斗を手を握って引っ張って、もと来た扉を開けようとした。
「無理だって。もう前に進むしかないの」
「よしっ分かった!じゃあとっとと進もう!早く終わらそう」
と卓は、海斗の手を引っ張った。
「えっ…ちょっと」
思ってたのと違うんだけど…
なんかくっついて怖いねぇとかそういうんじゃないの?
卓は海斗の手を引っ張りながら、部屋を後にすると、扉が勢いよくバタンとしまった。
「はいそこ!もっと扉は丁寧に閉める!」
と卓は、扉に注意をした。
扉の奥には長い廊下が続き、左右には扉がいくつもあった。
「ここは突っ切っていけばいいのね」
と卓は、そう言いながら早足で歩き始める。
「ちょちょちょ…ちゃんと部屋見ていこうよ」
「はぁ何を言っているの?絶対なんかいるじゃん!賭けてもいい!扉開いたら何かあるパターンだよ!」
「でも…」
「分かった分かった。じゃあ開けていこう」
と卓は、一番最初の扉に手をかけた。
「いるよ。絶対なんかあるよ!」
扉が開くと、骸骨がぶら下がっていた。
「ほらね。骸骨くんこんにちは」
と卓は扉を閉じた。
卓…お化け屋敷はそういう風にツッコむんじゃないのよ
と海斗は思いながら卓に引っ張られて次の扉へと向かう。
「つぎ開けるよ!どうせまた何かあるんでしょ」
卓は、扉を開くと壁一面に人の顔が型取られていて、生き埋めにされたような苦痛な表情をしている。
「壁の部屋ね!そしたらこれ扉いらなくね?設計ミスだね」
と言い扉を閉める。
卓…お化け屋敷に突っ込み入れて回ってる…
「はい次の扉!どうせ何かまたあるんだよ!絶対なんかある」
卓は扉を開いたが、なんてことない普通の部屋。
「いや!なんもないんかーい!」
卓はすぐ様扉を閉める。
「はい次の部屋!うわぁコウモリがいっぱい!部屋の中で飼うペットと、ちゃうぞ」
ってかなんで関西弁。
「はい次。」
うぅぅ…
「はい!ゾンビ!腐っとる」
卓はすぐに扉を閉じた
ってか大喜利になってない?
「はい次が最後の扉!最後だから絶対何かあるよね。絶対何かあるよ!あぁやだやだ」
卓はそう言いながら目を少し開いたまま扉をあけるとゴルディータがキシシと笑いながら飛び出してきた。
「うわぁ!ゴルディータ!お前のせいだかんな。まじで!」
と卓は急いで扉を閉めた。
「よしっ全部見たぞ!はい次行くよ!海斗!」
廊下の先には登り階段になっており、卓は海斗の手をがっしりと掴みながら駆け足で次のフロアへと向かう。
怖いから手はしっかり握ってるんだね卓。
早く出たいんだね。この屋敷から。
そして少しでも怖くない様に突っ込みをいれる方式にしたんだね、
卓は本当に…カワイイッ。
次のフロアにつくと奥に曲がり角が見えるが、壁に磔にされたり地面に横たわっている骸骨達の間を通りながら進まなければならなかった。
「そんなとこに寝てたら風邪ひくぞ!ってか死んでるから風邪とかないんか」
「卓って、お化け屋敷っていつもこんな感じなの?」
「えっ?知らん。初めてお化け屋敷入ったから。少しでも怖くないようにしてんの。ほら次行くよ!ぱっぱと終わらせよう」
やべぇこのお化け屋敷今まで生きてきた中で一番面白い。
こんな子供じみたお化け屋敷をここまで面白くさせられるやついないよなぁ。
曲がり角を抜けると今度は下り階段があり、階段の壁にはゴルディータが呪いをかけられて額縁に囚われた家の使用人と思われる人達が必死に助けを呼んでいる。
「卓…額縁に囚われてるよ。怖いねぇ」
と海斗は、お化け屋敷ぽい会話にもっていこうとすると
「いや、意外と住み心地良いかもしれないだろ。1LDK家具付き、絵だから飯もいらないし、意外と悠々自適に暮らしてるんだよ」
いや、めっちゃ出してくれ言ってるけど
「わざわざ怖くしないの!ほら先行くよ」
いや、怖いのがお化け屋敷だから
そう思いながら、卓は、海斗の手をがっちり握って最後の部屋へと向かう。
最後の部屋は一直線に廊下が広がり周りは壁で覆われている。
そして突き当りには主人が飾られていた豪華な額縁があった。
「ここで最後かな!絶対なんかあるよ!左右から手がいっぱい出てくるとか後ろから何か追いかけてくるとかそんな感じだろっ?よし予想はできた!行くよ」
卓は海斗の手を引っ張って前へと進む。
卓にひっぱられながら海斗は進み、額縁の前にやってきた。
額縁の中は鏡張りとなっていて2人を映している。
すると鏡の後ろにはゴルディータが宙にフワフワと浮いている。
2人はすぐに振り返るとその場にゴルディータはいない。
そしてもう一度鏡をみるとさらに近寄ってくるゴルディータの姿。
「うわぁ来てる来てる!こわいこわい!ストーカーだぁ」
逃げ場のない恐怖にびびる卓。
すると今度は周りの壁にたくさんのゴルディータが映し出されてキシシシシシシという笑い声が部屋全体に広がった。
「何?何が起こるの?」
次の瞬間、2人が入ってきた扉の方にゴルディータの巨大な顔の壁が現れ、キシシシシシシという笑い声と共に近づいてくる。
「こわいこわい!逃げ場ないじゃん」
後ろを振り返ると鏡の額縁は消えてなくなり、ゴルディータに押しつぶされそうになる卓と海斗。
「うわあああああ!」
「くるぅうううう」
目の前にゴルディータの顔が近づいてきた次の瞬間、フラッシュが辺りを包んだ。
フラッシュの後、卓と海斗の脇の壁が引戸の様に開き、外の明かりが2人を照らした。
卓は海斗の手を握り、一目散にそこから外へと抜けた。
「よしっ!終わり!もう終わり!なんもなかった!怖かった――。」
「くふふっアハハハハハハ!やばい!腹いてぇ!」
海斗は腹を抱えて笑い出す。
「えっ何々?」
「だって…ヒィ…卓!お化けになぜか突っ込み入れるし!こんな面白いお化け屋敷初めて…ハハハハハ!やばい止まらねぇ」
海斗はしばらく笑いが止まりそうもなかった。
「お化け屋敷は卓と行くのが一番だなぁ」
「やめてよぉ。二度とお化け屋敷は行かないし」
「そんなこと言わないでさぁ。次はもっと本格的なの行こう。追いかけてくるやつとか」
「いやだよ。そんなの…」
「いやっ卓なら間髪入れず突っ込みをいれるだろうなぁ。なんでついてくるん?とか、ストーカー?とか、言いそうっ。やばい想像しただけでハハハハハッ!カワイイなぁ卓は」
海斗が笑っている姿になぜか照れながら頭を掻く卓。
「そ、そういえば、このアトラクション写真撮ってくれたみたいだよ。」
海斗はそう言いながら、Photo Shopと書かれた受付に行くと、撮られた写真を見せてくれた。
そこにはゴルディータの顔が近づいて叫ぶ2人の姿が撮られていた。
海斗は、あの額縁を模したフレームとその写真を購入して中に収めた。
それはまるで2人が額縁の中に囚われたかのような写真だった。
キシシシシシシシシシシシシッ




