27.誕生日ケーキ
海斗の家で誕生日会を開催!
27.誕生日ケーキ
「通天閣はすごい良い景色だったよ。遼にも見せたかったなぁ」
卓は、喫茶店で通天閣に登った話を遼にしていた。
「そっかぁ大阪行ってみたいなぁ!」
遼の行ってみたいなぁには2パターン存在する。
1つは本当に行きたい。
興味がある。
この時の遼の表情は、一見興味がなさそうな顔をしているが
実はすごく興味があって行ければ一人でも行こうと思っている。
その時の最大の特徴が、行きたい気持ちが少し前のめりになっているため少し早口になるのだ。
そしてもう1つは興味がない。適当な相槌。
この時の表情は、真顔。
もしくはどこか遠くを見つめている。
声のトーンは全部一定。
等間隔に放たれた言葉がより一層興味がないのを感じられる。
これらを一瞬で見分けられることに優れている卓。
そして今回の大阪の行ってみたいなぁは本当に行ってみたいとすぐに察知した。
「今度2人で海斗の家に行ってみようよ」
と、卓の言葉に
「そうだなぁ。海斗の家にも行ってみたいし」
と遼は返した。
この言葉は俄然、乗り気な時に出てくる遼の言葉である。
卓は心の中でガッツポーズをした。
「それで海斗の家にいった話を詳しく聞かせてよ」
と卓は、大阪の話に戻した。
海斗と卓は、海斗の住むマンションへと戻ってきた。
誕生日のケーキとピザと安いシャンパンを買って2人でパーティをすることにしたのだ。
「遼も来れたなぁー」
海斗は、卓が言う前に言葉に出した。
「そうだねぇ。遼は連れないヤツなのよ」
卓はそう言いながら玄関の扉を開けた。
「ただいまー」
と卓は元気よく言うと
「おかえりー」
と海斗は一緒に入り、
「ただいま」
と海斗は再び返して
続けて卓が
「おかえり」
と返す。
2人はそんなやりとりを自然と交わしつつ家の扉を閉めた。
部屋に入るなり、2人はパーティの準備を始めることにした。
膝位の高さの透明なガラステーブルにピザを並べ、シャンパンをグラスに注いだ。
「なんか本格的だね。やっぱテーブルが違うよなぁ」
と卓はガラスのテーブルを覗き込んで言った。
「このテーブルは兄貴のもらったやつ。このソファーも」
「へーっ。良いお兄ちゃんじゃん」
「そんなことないよ。最近はあんまり会ってないし、さぁ食べよう!飲もう」
「おぅ。じゃあ改めて、お誕生日おめでとー!カンパーイ!」
「カンパーイ!」
カンという音共に2人はシャンパンを口にし、ピザを食べ始めた。
一息つき、ふと卓は気づいた。
「それにしてもグッズが少ないよねぇ。俺のうちには溢れてるよっ!」
「あぁここにはねぇ、、、ないのよ…
実は、隠し部屋があってさぁ…誰も入れたことないんだ」
「どうしてよ?」
「だってほら、この部屋の方が普通でしょ。隠してた方が楽だし」
「じゃあこの部屋は海斗の表の部分なんだねー。」
「まぁね…
、、、
何?入ってみたいの?」
「うん!入りたい!」
「、、ん~良いよ!」
と海斗立ち上がりその部屋へと案内した。
「他人を入れるなんて初めてだよ。親にも入れたことないのに」
そう言って海斗が案内したその部屋には、
ソクミミやシロブチ犬などのキャラクターグッズが棚に綺麗に並べられていた。
壁にはキャラクターのポスターが飾れている。
どれも埃が入らないようにショーケースの様に丁寧に入れられていた。
「うわぁ!すごい!ソクミミがいっぱい!うわぁこれ限定物だぁ!うらやましい!」
卓はソクミミのピンバッチセットを見ながら言った。
「そうそう…これねっ!数量限定でなかなか手に入らないピンバッチでさぁ…」
2人はグッズを見ながら大好きなキャラクターの話をしていた。
今まで他の人には隠していたり、共有出来なかった話を
自分のお気に入りのグッズを見せながら話せるなんて、、、。
なんて幸せな一時なんだろう。
卓はその部屋を堪能した後、2人は食事の途中であった為、リビングへ戻ることにした。
「こんな風にソクミミの話出来るのって幸せだなぁ」
海斗はそう言いながらそっと扉を閉めた。
リビングに戻りピザも食べ終わり、ソクミミのテレビシリーズのDVDを見ながらゆったりとした時間を過ごした。
「そろそろケーキ持ってくる?」
「いいねぇ!ちょっと待ってて!」
海斗はそう言うと、冷蔵庫から買ってきたホールのショートケーキを持ってきた。
プレートもちゃんと用意されており海斗の名前が書かれている。
「待って待って。ロウソク持ってきてフーっしようよ!」
「えぇ―恥ずかしいから良いよぉ」
「良いじゃんほらぁ!」
卓は、ケーキにロウソクを刺していく。
「年の数だけ立てたら火事になっちゃうから5本くらいにしとくか」
卓はそう言いながら5本のロウソクを立てて、火をつけた。
「電気消すよー」
卓はそう言うと照明を消した。
ガラスの机の上にロウソクの温かい光が反射して
ホールケーキをより美味しそうに引き立てている。
卓は、手拍子をしながら海斗の為に誕生日の歌を歌った。
こんなにうれしい誕生日は生まれて初めてかもしれない…
卓の歌を聴きながら、海斗はそう心から思えていた。
ありがとう…卓…
海斗はロウソクの火を吹き消した。
次回、布団の中で




