18.鎌倉の朝
眠れない卓はようやく鎌倉の朝を迎える
そして遼を誘って、、、
18.鎌倉の朝
ね…寝れねぇ…
結局あの夢のせいもあり、寝ているのか起きているのか分からないまま朝を迎えた卓。
まだ夜と朝の境目…鳥がちゅんちゅんとさえずり徐々に日が昇りつつあるなか、遼と目があった。
「おはよう」
「ん…おはよう…」
そう言いながら再び寝ようとする遼の体を卓はゆすった。
「ん!何…」
「ちょっと朝日見に行かない?もう少しであがりそうなんだよ。海から昇る朝日を見たら綺麗だと思うんだ」
遼は目をこすりながら、ぼーっとしている。
「行こっ。遼…」
「うぇ…まだねみぃよ」
露骨に嫌がる遼を卓はあともう一押しと遼を説得する。
「いいだろっ。戻ってまた眠れば!お願い」
「ふぇえ」
そう言いながら立ち上がる遼。朝が弱いのにわがまま言ってすまない。
「海斗も起こすか…」
「い…いいよっ!海斗は!」
「えっ…なんで!?」
「ふ…ふたりで」
ごもる卓。
「えっ…」
「2人で行きたいんだよぉ」
卓は急に恥ずかしくなり顔を下に向けた。
「変な奴。じゃあ行くか」
遼は卓の変化に気にも留めずに、靴を履き始めた。
「ほら行くよ!卓!」
卓と遼は外に出ると、海風が体を包んでいき、潮の匂いが漂っていた。
「暗くて分からなかったけど確かこっち!」
「また適当な奴だなぁ」
と遼は言いながらスマホで道を調べた。
「あっ、合ってる」
「だから言ったじゃん」
卓は、そう言いながら海沿いの道へと歩き出した。
辺りは徐々に明るくなり光り輝いていた星たちが空の中へと移り変わっていく中、
目の前には水平線の彼方まで広がる広大な海と
これからゆっくりとあがってくるであろう太陽が顔を出そうとこちらを覗いている。
「あと少しであがるなっ!」
なんやかんや楽しみしている遼。
卓は良かったと思いながら、ふと遼の手を見た。
ここで手を繋げたら、どんなに幸せだろうか。
遼は嫌がるかな。なんだよとか言って嫌がるだろうなぁ。
そう思いながら、遼の掌を見た。
綺麗な手…
「ん?なんか言ったか?」
やべっ声に出てたか
「んんっ!何でもない!」
首を振りながらびくっとする卓。
「あっ。ほら見て上がるぞ。太陽」
遼が指さす指先の向こうには真っ赤な太陽がじっくりと顔を見せ始め、海を徐々に照らしていく。
見ているだけで眩しいその太陽を覆うように2人は手で影を作った。
「すげぇなぁー。幻想的な景色だなぁ」
と遼が太陽を見ているその姿を見た卓は、かわいいなぁと遼の顔をみながら胸が張り裂けるように苦しくなった。
「本当!ありがとうな卓!起こしてくれて!おかげで良いもの見れたわっ!」
「ううん。良いよっ」
俺は遼の、その、くしゃって笑う笑顔を見れるだけで幸せなんだ。
と心からそう思いそしてこの笑顔は今は俺だけのものなんだと嬉しく感じた。
「おーい!」
卓と遼が太陽を見ていると海斗が手を振りながら走ってくるのが分かった。
「気づいたらいないからさ2人ともどこ行っちゃったかと思ったよ。
もしかしてと思って外出たらやっぱり海を見にきてたのか」
と海斗は肩で息を切らせながら言うと
「わりぃわりぃ。あまりにも気持ちよさそうに寝てたからさぁー」
と遼は頭をかきながら言っているのを卓は見て
自分をかばっていることがすぐに分かった。
「起こしてくれれば良かったのに、日の出見逃しちゃったかー」
遼…なんで海斗にそんな嘘を…俺が2人っきりで見たいって言ったのに…
それをやんわりと隠した遼の優しさに卓は胸をときめかせる。
「じゃあ戻ろうぜ。朝風呂入りたいしな」
遼の言葉に3人は海を後にした。
「卓…凄いじゃん!ナイスだね」
海斗は遼から聞こえないような小さな声でそっと囁いた。
「気づいてたの!?」
「うん。2人でいきたいんだよぉのとこめっちゃ可愛かったぁ」
海斗はニヤニヤと笑いながら言うと
「は…はずかしぃなぁ…もぅ」
照れてる卓を見て海斗はこういう所なんだよぉなぁ…あぁ良ぃ…
と心の中で叫びながら
「でも、あれだね…遼って超鈍感だね」
「だろっ!」
どうりで卓が、10年間も片思いしても気付かない訳だ。
と遼は心の中で思っていた。
「何こそこそ話してんの?」
遼は後ろを振り返りると、卓はビクッと体を揺らし
それをみた海斗は卓を見てニヤつきながら遼の方を向きなおし
「何でもな~い!遼には秘密!」
「何だよ!それ!」
遼はそう言いながら海斗を追いかけた。
次回、鎌倉旅行二日目の目的地は・・・




