17.鎌倉の夜
卓は自分の気持ちに気づいた最初の夜
どんな夜になるのか・・・
17.鎌倉の夜
海斗と卓は、海沿いの道をゆっくりと旅館へ戻りながら、自分たちの今までの生い立ちを話していた。
卓も話していくうちに、だいぶ落ち着いてすっきりとした様子だった。
「もう落ち着いた?大丈夫?戻れそう?」
「うん。もう大丈夫。色々ありがとう」
卓は、海斗を見ながらそう言った。
「それでこれからどうするの?告白する?」
「ううん。もう少し気持ちを整理する。でも自分の気持ちに嘘をつくのはやめる。俺は遼の事、好きだ」
卓の心に迷いが消えていた。
「そっか。落ち着いて良かったよ」
と海斗は背筋を伸ばしながら言った。
「もう帰ろうか…時間も時間だし!」か
「うんそうだね。帰ろう」
卓と海斗はそう言うと、旅館に戻っていった。
旅館に戻ると、布団が2組敷いてあり準備をされていた。
「なぜ、2組?」
「3人いるのに…」
「俺もイヤホンしてて試合に見入ってたら気づいたらこんな形に…」
「ちょっとフロントに行ってくるよ」
と卓は言うと、海斗は腕を掴みすぐに動きを止めた。
「いいよっ!夜も遅いし!」
「俺も別に良いよ。まぁくっつけて寝れば2組で3人分いけるでしょ」
と遼は言った。
こうして3人は2つの布団を分けて寝ることにした。
そしてその夜…
ね…ねれない…
卓のすぐ横に寝ている遼。
そう卓と遼は1つの布団で2人に寝ていたのだ。
というのも、卓は人より小さく、海斗は人より大きい…
そこで、小さいのと中くらいので1つの布団で寝ることにし
海斗は1人で悠々と布団を使っていた。
顔が…近い…
すぐ目の前には遼の顔がある。
今まで泊まって寝ていてもなんともなかったのに…
好きって分かったからかなのか!?
寝ている遼の吐息が聞こえてくる。
近い…近い…近い…
卓は、寝たふりをしながら遼の顔をちょろちょろと見ていた。
寝顔も良いなぁ…
こんな間近で見たことないよぉ…
卓は遼の顔をまじまじと見つめていると、寝相の悪い遼が横向きになった。
真正面にくる遼の顔。
そして足が卓の足へと落とされた。
うぉっ!
ドクンドクンと脈を打つ。
足が!遼の足が俺の足に乗ってる…
ちょっと待って確かこいつ浴衣の下…
ノーパンじゃん!
ノーパン…!
ノーパン!?
ぶほぉ!やばいやばいやばい…
寝顔カワイイ…触りたい…近づきたい…ぬわぁぁぁぁ…
いかんいかん…だめだ…それはさすがにダメだぞ落ち着け…でも触るくらいなら…
卓は、そっと手を伸ばして遼の手をつなごうと距離を縮めた。
ごめんよ…遼…でも手をつなぎたい。
卓は指を近づけて遼の手の関節と卓の手の関節が触れ合う。
心臓が高鳴り、今にも飛び出しそうになった次の瞬間、反対へ寝返りしてしまう遼。
うぉっ!
一瞬起きたのかと思い焦る卓だが
寝返りをしただけだと安心する卓。
またこっち向かないかなぁ。
卓は、遼の再びの寝返りを待った。
「まだ起きてたのか…卓」
その声に卓は目を開くとこちらを見ている遼。
「卓ってよく見ると可愛いよなぁ」
遼の言葉に卓はびっくと目をまんまるくさせる。
「遼…どうしたの?急に…」
「俺、実は前々からお前の事が気になってたんだ。卓、好きだ」
顔が近づいていく遼。
まさか…これは…両想い!
卓の顔に近づいていく遼の顔。
唇と唇がわずかに触れていき、そのまま唇と唇が重なりあっていく。
遼を感じる。布団の中で触れ合う唇のぬくもりに愛を感じた。
唇と唇が触れ合うと遼は微笑みながら
「卓の唇やわらかいね」
唇と唇が再び重なり合いながらゆっくりと口を開いていく。
遼…もっともっと遼を感じたい…
俺、遼の事本当に好きだっ。
と、次の瞬間、ぱあぁぁっと現実に戻され目を開くと隣で寝息を立てながら遼が寝ている。
夢か…そりゃそうだよなぁ。そんな上手くいく訳ないよなぁ…でも最高の夢だったなぁ。
卓はもう一度目の前にいる遼の顔を見た。
気持ちよさそうに寝ている遼の顔は愛おしくてたまらなかった。
遼にもっともっと触れたい。一緒にいたい。独り占めしたい。
そうか。これが人を好きになるという事なのか。
卓は、自分の心を初めて許した。
今までごめんな…俺は俺自身を苦しめていた。
この気持ちはなくしちゃいけなかったんだ。
それを気づかせてくれたのは…
卓は海斗の方をみつめた。
布団をはだけて寝ている海斗をみながら
卓はありがとう…と心の中で呟いた。
次回…鎌倉旅行二日目突入!




