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少数派の恋愛事情~Minority Love~  作者: take
Chapter of Kamakura.
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15.夏の夜

夏の海が2人の気持ちを揺れ動かす。

15.夏の夜

3人は脱衣所で浴衣に着替えて、そのまま併設されているコインランドリーに向かった。

到着すると1つの洗濯機の中に3人分のさっきまで来ていた洋服たちを入れた。

「乾燥はどうする?」

と海斗は聞くと

「別にしなくても良くない?部屋に干しとけば乾くよ!」

と遼は海斗に言った。

早速コインを投入し洗濯を始動させコインランドリーを後にした。

途中売店に立ち寄り、部屋で楽しむためのお酒やツマミなどを買った。

3人は部屋に戻ると先ほど購入したトランプを使ってババ抜きなどをして楽しんでいた。


「そろそろサッカーが始まる時間だから、俺ちょっと準備するわぁっ」

遼はそう言うと、カバンからタブレットとイヤホンを取り出した。

ついでに買ってきたポテチとコーラを用意し自分だけの空間を作り始めた。


「そういえば、洗濯もそろそろ終わったかな!ちょっと見てくる」

と海斗は立ち上がった。

「あっ!俺も行くよっ!1人じゃ大変だろっ?」

卓はそう言うと、海斗と一緒について行った。


しばらくして部屋に戻ってくる卓と海斗。

部屋にあるハンガーやタオル掛けなどを使い綺麗に干していく3人。

「旅行の時の必需品!」

海斗はそう言うと、リュックサックの中から小物用のハンガーを取り出して洗濯物を干していく。


洗濯物も干し終わり

「そろそろ卓と散歩に行ってくるよ!」

「そうだね。邪魔しちゃ悪いし、じゃあ遼!サッカー楽しんで!」

外に出ようとする卓と海斗。

遼は既に集中モードに入り始め、左耳にイヤホンをつけながら右手をあげた。



浴衣姿で外出し、近くの浜辺へと足を運んだ卓と海斗。


辺りは暗く、街灯もポツリポツリと立っていて

浜辺沿いに続く歩道を

2人は波の音を感じながら歩いていた。


涼しい風が波の水しぶきと共に優しく包み込む。

潮の香りが夏の夜を感じさせていた。






「なぁ…卓」


海斗は、聞こえるか聞こえないかの小さな声で尋ねた。


「ん?何?」






「卓は、遼の事好きなのか」






海斗の言葉に、卓の動きが止まった。




「違うよっ!男同士でそんなことあるわけないだろっ!」




卓は苦笑いを見せる。暗闇で見えないが空気で察知した海斗は、卓に告げた。




「安心して・・・俺は男が好きだよ。だから卓を否定したりなんかしない」




海斗は卓にカミングアウトをした。




「人にこの気持ちを伝えるの・・・やっぱり勇気がいるなぁ。」




海斗の震える声が卓の心に染み込んでいく。



卓は海斗の言葉を聞いて、深呼吸をして

「海斗・・・俺は、別に男が好きなことに偏見はないし、否定もしない。でも俺のこの気持ちは違うんだ」




卓は暗闇でうっすらとしか見えない海斗の顔を見てそう答えた。

近くにある街灯の電球が不具合なのかチカチカと点滅している。




「自分に嘘つくなよ。卓!」


海斗は卓の両肩を持ち、強い言葉で卓に伝えた。




「だから嘘なんかついてないって!この気持ちは・・・」




違うんだ。




もしこの言葉を口に出してしまったら




遼はそれを望んでいない。






「遼は、普通の人なんだ。だってあいつ傷つけちゃうだろ」




卓の言葉、震える声。肩から、全身から伝わる不安や葛藤が海斗の手に伝わってくる。




「だから、俺は・・・」




卓の言葉を遮るように

海斗は卓を力強く抱きしめ

卓を自分の胸の中へと包み込んだ。



電灯の明かりは卓と海斗だけを照らした。


「良いんだよ、卓。思ってていいんだ。その思いは・・・気持ちは、大切にして良いんだよ」




今まで自分の中で否定してきた感情の波が

海斗の心臓の音に伝わって、卓の心を刺激する。






大切な思いは、無い事になんて出来ない




海斗のぬくもりを触れた卓は

気持ちが一気に噴き出し言葉となって形になる。






「海斗、、俺・・・遼のことが・・・好きだ」




その言葉は、かぼそく小さな声で震えていた。

けれど心の蓋が外れてそっと出た本当の気持ちだった。




「うん」




「好きで好きでたまらない…」




「うん」




2人の言葉は波の音と爽やかな風と共に夏の夜に流れた。






次回、卓の心に触れる。

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