最終話 俺たちの物語
最終話 俺たちの物語
あの日から3年の月日が流れた。
場所はハワイのホテル
「ほら、海斗急いで!」
「大丈夫だよ。卓は本当にせっかちなんだから」
「だって今日は特別な日だよ!」
「分かってるって。
ほら、服装ちゃんとばっちりしていかないと、、
ネクタイも曲がってるし、皆に笑われるぞ」
「お、おぅ・・・あがぐるしぃ」
「あっ・・・わりぃ締め過ぎた」
「結婚式の前に殺す気か!」
「だからごめんって・・・よしっ!これでばっちり」
「ありがとう・・・って、こんなことしてたらまじで時間に間に合わないって」
「まだ全然余裕なんだけどなぁ・・・まぁいいか。じゃあ行こうか」
「おぅ!」
ホテルに隣接された教会の外の丘にある結婚式場。
白い椅子が並べられ、前には鐘と神父さん。
目の前はオーシャンビューになっており
青く透き通った海と青空が広がっている。
人が次第に集まり白い椅子が埋まってきた。
今日は2人の結婚式
手前から順にお互いの両親、家族や親戚達、友人、会社の上司・同僚、と座っていく。
爽やかな風が吹き晴天の中、最高のコンディションで結婚式が始まった。
新郎 飯田 遼
新婦 飯田 リサ
式場の看板にそう書かれていた。
卓と遼は後ろの方に座り、2人の門出を祝福した。
美しいリサのドレス姿に会場中がうっとりする中、誓いの言葉、誓いのキスを行った。
ハワイでの結婚式はリサの昔からの夢だったらしく、
遠いこの地で結婚式を挙げることになった。
挙式も無事終了し、少し時間が空き、そのまま再入場となる。
二列に並んで新郎新婦の通り道を作り、通った二人に花びらを撒く。
幸せそうな2人を見つめながら卓と海斗は花びらを撒いた。
満面の笑みをうかべる2人の顔をみていると
卓と海斗も自分たちまで幸せを感じられた。
そのまま新婦によるブーケトスへと移る。
女性陣が集まる中、卓と海斗は後ろの方で見ていた。
リサは後ろを振り返り、投げるそぶりをしたが
目の前の遼へとブーケを手渡した。
遼はブーケを持ったまま、卓と海斗の前まで歩いてきた。
突然の行動に会場は3人に注目が集まる。
遼は動揺している2人に向かってブーケを手渡して一言。
次は卓達の番だよ
と伝えた。
会場が少し騒めき始めたが遼は構わず、そのまま海斗の方を向いた。
「卓を幸せにしてやってくれ」
遼の言葉に海斗はすぐに
「おぅ!任せとけ」
と海斗は叫ぶと2人でハグを交わした。
そして続けて卓の方をみつめた遼。
「卓・・・俺の初恋の相手だ。幸せにならないと許さないからな」
「遼こそ!俺の初恋の相手だ!二人とも幸せにならないと許さないからな」
と卓は言うと2人でハグを交わした。
「卓、遼・・・これからも俺の最高の友達でいて欲しい」
「あぁ・・・」
「もちろん!」
遼はそう言うと卓と海斗を自分の胸に抱きよせてハグをした。
3人の友情に拍手喝采が沸いた。
リサがどうしてもやりたかったサプライズ演出。
私たちだけじゃなく、皆にとって最高の結婚式にしたい。
その初めの演出がこのブーケトスだった。
にぎやかで晴れやかな結婚式は、出席者全員の心に刻まれる最高の思い出となった。
そして無事遼とリサの結婚式は終わり晴れて2人は夫婦となった。
結婚式良かったな。
卓と海斗は夕暮れのビーチを散歩していた。
結婚式場のプライベートビーチらしく
いまは卓と海斗2人っきりだった。
透き通る青かった海は、時間と共に赤く染まっていく。
「卓さぁ、披露宴の時、動画みて大号泣してたよねぇ」
「だって思い出の写真あんなにあったら懐かしくて涙だって出るよ・・・
それに遼が幸せそうに結婚が出来た事が嬉しくてさ」
「あぁ、そうだな・・・」
「ってか海斗だって目に涙浮かべてただろ」
「バレたか・・・結婚っていいよなぁ」
海斗の言葉にほのかに風が吹いた。
「そうだなぁ・・・俺達にはまだ早い話だな」
卓はそう言いながらどこか寂しそうな表情をしていた。
「卓・・・」
「ん??なに?」
卓は海斗の方を見ると、ひざまずいた。
海斗の手には2つの指輪があった。
「卓。俺たちは結婚はまだ出来ない・・・
これからも出来ないかもしれない。
でも、何があってもどんな時でも一生一緒にいたい。
だから、この指輪を受け取って欲しい」
俺と一緒にこれから先の未来歩いてください。
海斗はそう言うと
卓は笑顔で頷き手を出し、海斗は卓の手に指輪をはめた。
そして、卓は海斗の指輪を取ると
「手出して」
と言い海斗は手を出した。海斗の手に指輪を卓がはめていく。
「俺が海斗を放すわけないだろ」
卓は海斗に指輪を通すと笑顔でそう言った。
「どうだろう。また好きな人出来てひょいっとそっちにいっちゃうんじゃないの」
「もしそんなことがあっても海斗は絶対俺の手を放さない。そう約束しただろ」
「そうだったけ?」
「ひでぇ・・・忘れたのかよ」
「嘘だよ。覚えてるよ・・・忘れるわけないだろ。あんな恥ずかしい思い」
「あぁ、冷静に考えるとあれは恥ずかしかった。でもあの時の思いは今も変わらないよ」
卓の言葉に俺もだと海斗は応えた。
卓と海斗は沈む夕日を2人で砂浜で座りながら見ていた。
「美しい景色だね・・・」
卓の言葉に
「あぁ、2人で見られて幸せだ。・・・なんかさ」
「ん?どうした?」
「卓が生まれてから俺と出会うまでの時間がもったいないなぁと思ってさ・・・
その期間は遼に取られちゃったから」
「我儘な奴だなぁー」
「そうですよ。えぇ我儘なんですよ。だから・・・俺とのこれからの時間は全部大切にしたい」
「そうだな・・・俺も海斗と出会うまでの時間は知らない訳だけど、これから一緒に歩む時間を大切にしたい」
これからもずっと一緒にいよう・・・
海斗は卓の掌に合わせてゆっくりとまじり合いながら指と指が紡がれていく
2人の指輪が夕日に反射してきらりと光る
海斗の唇が卓の唇に合わさっていく
紡いだ手と手がほどけないように握りながら
夕日はゆっくりと沈んでいく
2人で交わした永遠の誓いを忘れぬように体をよりそいあい確かめ合うように絡みあっていく
辺りはすっかり暗くなり満天の星空になった
これからの未来、俺たちの物語は続いていく
あとがき
僕は信じたい
彼らが自分らしく生きている世界を
僕は信じたい
彼らが好きな者を好きと言える世界を
僕は信じたい
彼らがいつか手を繋いで堂々と歩ける世界を
僕は信じたい
彼らが会社や社会で愛していると言える世界を
僕は信じたい
彼らが結婚出来る世界を
僕は信じたい
多数派や少数派で分けられることなく
生きているだけでそこに優劣はなく
皆平等に幸せになれる世界を
そんな未来を紡ぐために
take




