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少数派の恋愛事情~Minority Love~  作者: take
Chapter of Our love story.
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97.二年越しの再会

97.二年越しの再会

遼が海外出向に行ってから二度目の春が来た。

日本はまだ肌寒い3月の始め、遼から卓に連絡が届いた。


卓の本を読んだ。

感想が言いたい。

今度日本に戻るときに会いたい。


短い文だったが久しぶりの遼からの連絡に卓は複雑な思いだった。


場所は告白をしたあの公園。

日時もあの時と全く同じ。


卓は重たい足を動かしてその場所へと向かった。

あの時と天候も同じで、思い出さずにいられない。

ふられた時の感情が卓を襲った。


一体何を言われるのだろう。


卓はこの2年で仕事を辞めて

小説家として執筆活動に全力を注いでいた。

あの時とは考え方も少し大人びた卓の心は静かだった。


遼と会うまでは・・・


公園の丘の上に彼は待っていた。

あの時と少しも変わらない姿で。


「おっ・・・久しぶり」

遼の声は緊張で少し震え顔も少し強張っていた。


「うん。遼が約束の時間より早いなんて珍しいね」

卓はそう言いながら遼の顔が見た。


あの頃と何も変わらない遼の姿に胸が急に苦しくなった。


さっきまで普通だったのに・・・



「本読んだよ。サイン欲しくてさ」

遼はそう言うと2冊カバンから取り出した。

「俺の分と、あと会社の同僚がどうしても卓のサイン欲しいって」

「読んだんだ・・・嫌な思いさせただろ・・・勝手に本にされて」

「そう思ってたらサインなんてもらいに来ねぇよ」

遼はそう言うと本を卓に渡した。

「それもそうか・・・それで本の感想がどうとかって言ってたっけ」

卓は本を開いてサインをしながら遼に言うと

「そうだ。この本のモデル俺にしては大分イケメンすぎないか?」

遼の言葉に卓はぷっと笑うと

「そんなことを言うために・・・わざわざ・・・

遼は俺にとってこの本の内容通りだったし、

俺の気持ちは1つも嘘じゃない。

まぁ本だから多少誇張してるし現実とは違うかもしれないけどさ」


卓の笑顔を久しぶりにみた瞬間、

遼の心の蓋が一気に噴き出すように溢れた。


「会いたかった・・・ずっと会いたかった」

ぼそっと出した声に卓はえっ?と聞き返した。

「なんでもねぇよ!

それよりもこの話の最後の“俺の初恋は終わった”ってあれ!

1人で勝手に終わらすなよ」

「そこは嘘を書きたくなかった・・・

ふられた事実だけは捻じ曲げたくなかったしな」

「そうだな。あんときは何でこのタイミング?って思った。

フィリピンで単身で海外に行くのってやっぱ不安だったし。

お前には応援して見送って欲しかったのに、

急に告白してくるし、

勝手に友達辞めるって言われるし、

なんだよって思った」

「ゴメン・・・あの時は自分勝手だった・・・」

「でも、フィリピン行って卓と離れて・・・

ずっとずっと俺は・・・寂しかったんだ。

お前の事を思い出すたびに胸が苦しくて・・・

だからお前の事を綺麗さっぱり忘れようと思った」

「それってもしかして」

「いいから最後まで聞けって!

でも、卓の事忘れるなんて事出来なかった・・・

そんな時にこの本を読んだんだ。

お前の本当の気持ちが詰まったこの本を・・・それでやっと分かった・・・」


遼の心の底にずっと秘められていた思いが言葉となって外へ飛び出した



俺の初恋はお前だよ!卓!



2人の間にほんのり暖かな春のそよ風が吹き包み込んでいく。


遼の思いにただただ茫然とたちつくす卓に

遼はさらに溢れ出る思いを打ち明けた。

「俺はずっと前から、卓を愛していた。

でも、男が好きという現実から逃げたんだ。

逃げて逃げて!お前の気持ちを考えもせず、普通でいることを俺は大事にしていた。

その方がずっと楽だし、生き方としては賢い生き方だし・・・

きっと誰もが普通に生きる方が正しい道だと言うと思う」

でも!

「普通に生きることよりも俺はお前と一緒にいる未来の方が大事だ。

正しくなくて良い。楽じゃなくても良い!

卓と一緒ならどんな道だって構わない!

この気持ちが恋と呼ばないのなら何が恋って呼んでいいのか分からないほど俺はお前が好きだ!」


今も卓の気持ちが変わらないのなら

俺と一緒に生きて欲しい

遼の心の叫び声が卓の胸の奥に刺さる

何度も夢見た瞬間が卓の目の前で現実で起こっていた。


卓の目から溢れ出る涙と一言

「おせぇよ・・・バカ・・・」


卓の言葉に遼の目からも涙が零れた。

「悪い・・・いつも待たせちゃって・・・」

2人は丘の上でハグを交わした



ずっと・・・ずっと会いたかった

俺も・・・ずっとこうしたかった




俺達はずっと両想いだったことを


今日初めて気づいたんだ。


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