94.海外での日々
舞台はフィリピンへ
遼目線で話は進みます。
94.海外での日々
海外に来てから1年と数か月が経過した。
フィリピンに来た時は不安でたまらなかった。
初日は空港まで日本語が通じる会社の人が迎えに来てくれ、
街の事や会社の場所、危険な所などを教えてもらい
最後に遼が住むことになる社宅まで案内してくれた。
社宅は立派な高層階建てのマンションでセキュリティも充実していた。
俺の部屋は3階。
一人で住むには充分すぎるくらい部屋もそこそこに大きい。
何よりすべてがでかい。天井も高い。
大柄の人でも泊まれるようになっているのか。
日本とは違い靴での生活に慣れるのに苦労した。
中履き用のスリッパを最初使っていたが、
めんどくさくなって最近は靴下で生活している。
人さえいれなければ玄関で靴を脱げば問題ない。
このフロアは俺のような海外出向で来た人たちが多く
どうやら隣の人もそうらしかった。
後で知ったのだが、
その隣人は俺より2歳年上の女性で
俺と同じ部署の先輩だった。
翌日、会社で初顔合わせをした。
俺と同じ部署で海外出向をしてきた女性。
名前をリサと言い、金髪の長髪で身長も高くスラっとしていた。
モデルかよと思う位に綺麗な姿に、思わずドキドキしてしまった。
彼女は日本人とアメリカ人のハーフで
8歳まで日本で住んでいたのだが、
アメリカのなんとか州という所に親の都合で転勤になったらしく
日本語と英語が話せるバイリンガルだ。
気さくな人ですぐに打ち解け
その日は一緒に帰ることにした。
そしてその時に彼女がお隣さんだという事に気付いた。
知らない土地で右も左も分からず、
苦戦していた日々も時間が経つにつれて慣れてきた。
最初のうちは怖くて何も出来なかったのだが、
今では普通に外食くらいなら出来るようになった。
「リョウ!夕飯どっかで食べようー」
毎度毎度誘ってくるリサに俺は断ることなく、ついて行った。
これが無かったら、正直今も怖くて何も出来なかったかもしれない。
リサの強引なアプローチは、どことなく卓に似ている。
卓・・・あいつどうしてるのかな。
あの時からずっと連絡をとっていない。
もっと違う別れ方をしていたら、
今でも連絡を取り合っていたかもしれない。
リサのおかげでどことなくその寂しさを紛らしていたが
思い出すと急に胸が苦しくなる。
だから忘れようと思った。
もうあいつとは会えない。
あんな別れ方をしてしまったのだから。
「そのお守りいつも大事そうに握ってるけど、誰かからもらったの?」
夕食のときリサは俺が鞄につけていた”お守り”に気付いた。
「あっこれは・・・」
卓の事を思い出すとこのお守りを握る癖がついていたようで、
リサはそれに気づいた。
「いつもそれを握る時、寂しそうにしてるよね」
リサの勘の良さは
こういう時非常にやっかいだ。
「友達と買ったただのおまもりだよ」
友達・・・と今は呼べるのだろうか
俺にとって卓は一体・・・
「なんか寂しそうだよ。リョウ大丈夫?」
リサが覗き込むように見た。
美人の顔がいきなり現れたのでドキッとして顔が赤くなった。
「大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけ」
俺はビールをぐびっと飲んでご飯を食べた。
「ふーん。リサ姉さんがなんでも話聞いちゃうよぉー」
「悩んでもないし大丈夫!問題ない!大きなお世話!」
と俺はリサの言葉を遮った。
「なーんだ。つまんないのぉー」
リサはそう言うとご飯を食べ始めた。
それ以降、リサはその話を聞いて来なくなった。
これは俺の問題で、
リサにはあまり話したくなかった。
それに俺がこの話をしてしまったら、
アウティングという事になってしまいかねない。
これは俺と卓の問題
きっといつか仲直りできる日が来るのだろうか。
そんな事をふと空を見上げながら考えていた。




