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15.アンドレイ

あの後、ダリシアが落ち着くまでお茶を勧めて。


ダリシアが落ち着いたのを見計らって、予定よりかなり早めにはなってしまったが、解散することにした。


まだまだ一緒にいたい気持ちはあるけれど。

もう、その気持ちはぐっと止めて。

きっと、俺の笑顔の持ち時間も長くないだろうから。


ダリシアは「本当にありがとう、アンドレイ」と、今まで見たことの無いような眩しいくせに柔らかな美しい笑顔を見せて、彼女の父親の執務室に向かった。


ルーエンもそうだが、休日の今日も短時間登城しているらしく、父親の仕事が終わり次第、寮ではなく一緒に自宅に帰ると言っていた。



ダリシアが去った後、俺は倒れ込むように椅子に座り、天を仰ぐ。王太子らしくないが、大目に見てもらおう。




ーーー何となく、解っていた。


ダリシアは、ルーエンを好きなんだろうって。


でもどこか、自分で認めていないようだったから。……そこにつけ込んだようなんだ、俺は。情けないけれど。


ダリシアに弟にしか見られていないのは気づいていた。

初めて会った時からダリシアはダリシアで、お転婆で、俺とサージュを振り回して。……それがずっと、変わらなかったから。成長するにつれて、周りの令嬢たちの視線や態度が熱を持ち始めても、ダリシアは本当に変わらなくて。


「どうしようもないよな」


魔法研究に没頭して、没頭すると周りを見なくなるダリシアが、他に興味を示さないダリシアが。一人の男を視線で追うなんて初めて見た。何とか立て直せないかと思ったけど、想い人が心ここにあらずなのは……やはり辛いものがある。俺は、自分から決着を着けることに決めた。

格好つけただけかもしれないが、精一杯の、ダリシアへの最後の愛情だ。俺の気持ちが嬉しかったと言ってくれたこと、格好いいと言ってくれたことは宝だ。


……正直を言えば、もう少し早く動いていたらと、まだ後悔が頭をもたげて来るけれど。結果論だと自分に言い聞かせる。


ともかく。


「ダリシア、幸せにな」


この後起こる騒動など知らず、俺はそう祈った。



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