10月16日 心配
ここらへんにボールは、とれくらいあるのだろうか?
朝比奈「外山は、何て言ってたの?」
俺 「一応、二列目でって」
練習が終わった俺は、ゴールの外に出たボールを朝比奈と一緒に拾っていた。春翔や外山たちが、ミドルシュートを放つから、枠外に外れているボールも多かった。
朝比奈「いいじゃない。出れるんだ」
俺 「まだ、練習試合だからな」
出れると言われても満足はしない。もし、次結果が出せなかったら。そう思うと、心配で仕方がなかった。常に、次がラストチャンス。そう思わないと、自分が生き残る道はないと思っていた。
朝比奈「それでも、あの頃と比べるとマシでしょ」
俺 「それは、そうだな」
あの頃とは、まだ俺たちが1年生の頃のことだった。練習についていけず、ずっと下を向きながら、練習が終わるのを待っていた。今では、少し考えにくい話でもある。
朝比奈「ゴール決めれるの?」
俺 「チャンスあれば決めるよ」
朝比奈「頼もしいな」
もう、それしか生き残る方法はないんだ。だったら、やるしかないのだ。
俺 「次の試合で結果出さなければ、おそらくチャンスはないと思ってるから」
朝比奈「そんなことないでしょ」
俺 「あるよ、みんな頑張ってるしな。俺だけ、チャンスが多くなることはないよ」
いくら、昨年結果を出したからといって、ポジションを空けてくれるほどこのサッカー部は甘くない。だからこそ、自分のやれることを精一杯やりたい。
朝比奈「まぁ、旭ならいけると思うよ」
俺 「必ずレギュラーを奪って見せるよ」
朝比奈「カッコいいね」
自信なんかはない。でも、ずっとこの不安と戦いながら今日まで来たんだ。
俺 「レギュラーとって、全国大会行かないと」
朝比奈「昨年は、めっちゃ活躍してたもんね」
活躍をしてた過去の栄光は捨てている。
俺 「それが、今はメンバー外。これが現実だよ」
朝比奈「仕方ないよ、それは。怪我もあったんだし」
心から心配されているようで、嬉しかった。
俺 「でも、レギュラーにならないと試合に出られないからな」
朝比奈「試合に出れなくてもそれは仕方ないよ」
俺 「それは、ダメだよ。戻ってきた以上、絶対試合に出てチームを勝たせるよ」
これは、あの日戻ってきた時に思ったこと。あとは、実現させるしかない。




