10月14日 俺たちのダイ
外山は、既に社会人でサッカーを続けることを表明していた。この時期に決めるのは、異例だ。コイツの力からしたら、普通と言えば普通なのだけれど。
外山「どうだ、調子は?」
俺 「悪くねぇよ。監督に試合出すように言っといてくれ」
外山「ハハハハ。まぁ、試合に出すのは俺じゃねぇからな」
城南大学サッカー部キャプテンというプレッシャーは、コイツには無いのだろうか?
俺 「次の試合のフォーメーション決まってるのか?」
外山「ああ。一応、旭は二列目で考えているって言ってたよ」
俺 「二列目かぁ」
不安はあった。どれだけのパフォーマンスが出せるかどうか。
外山「どうした?」
俺 「ワントップか?」
外山「いや、ツートップだ」
俺 「ツートップ?」
スマホを取り出しメンバーを確認したようだ。
外山「大屋さんと春翔だ」
俺 「えっ、春翔もトップなのかよ」
外山「ここ最近、また結果出してたしな」
外山の言う通りだ。ここ最近の練習試合では、3戦で5ゴールと圧巻だった。
俺 「アイツが前に出られると困るんだけどな」
外山「なんでだよ。いいじゃねぇか」
俺 「よくねぇよ」
外山「俺は、アイツが真ん中でコチョコチョやるよりマシだけど」
外山の言うことも一理あった。たしかに、アイツが二列目だと、勝手にドリブルとかしかけて、動き回るのは迷惑でもあった。
俺 「チョコチョコって言うなよ」
外山「お前も思ってるだろ?」
俺 「まぁな」
外山「どっちにしろ、俺たちのダイになれば、アイツのワントップになるんだから、今のフォーメーションでなれるしかないだろ」
たしかに、来年の中心は間違いなくアイツだ。アイツを生かす練習を今からしないといけないというのは本当だ。
俺 「俺たちのダイのことまで考えてるのかよ?」
外山「当たり前だろ?先輩には悪いけど、さっさと引退してもらわないと」
俺 「それは、助かるな」
先輩が嫌いとかはないけど、いたらいたでめんどくさいというのは本音だ。早く俺たちのダイに。
外山「早く結果出せよ」
俺 「うるせぇよ」
外山「俺と春翔は待ってるから」
真っ直ぐ腕が伸びるその先には、鋭い拳がさしだされていた。その拳に重ね合わせるかのように、俺も拳をさしだしたのだった。




