10月10日 孤独感
1時間前の周囲の賑やかな歓声や選手たちの声はここにはなかった。まるで、1年前のように懐かしく感じてしまう。俺の心はどこか曇りがちで、複雑な思いが渦巻いている気がした。これが現実かぁ。夕方の薄明かりは、グラウンドではなく妙に自分が照らされているような気持ちだった。俺は、一人でただただベンチの隅で佇んでいたのだ。一試合目は、2対1。二試合目は、2対0。ともに、城南大学が勝利することができた。決して悪い試合展開ではなかった。これまでの反省をいかしながら、試合を進めることができた。おそらく、みんなそう思ったに違いない。
チームの一員として期待されていたはずだっが、俺が練習試合に出場することはなかった。そりゃあ、そうだろう。つい最近の紅白戦で活躍したくらいで、試合に使ってもらえるほど甘くない。気づけば、冷静に分析することができていた。俺は、ベンチの端に腰掛けながら静かに空を見上げていた。俺が試合に出られなかった理由は簡単だった。それは、相手チームのサッカーの戦略が俺にとって相性がよくなかったからだろう。詳しい理由は聞いてないけど、おそらく間違いない。向こうは、強豪チームであったということもあり、全力で選手にスライディングもしてきたし、ランニング量も多い。
俺が試合に出ても活躍できる余地はまったくなかった。俺の体力は、頑張って45分間試合に出れるか出れないか程度。当然だけど、試合に出ても怪我をしてしまうだけだ。もっと俺が力をつけなければならないのだ。いつの間にか、自分の無力さへの自己嫌悪が入り混じっていた。「サッカーなんかから、離れずにずっとリハビリを丁寧に続けていたらな。こんなことにならなかったのに、、、、、、、、、、、」。思わず、グラウンドの方を見つめながら小さくつぶやいてしまっていた。当たり前だけど、俺の声なんて誰にも届かない。もうみんな部室に戻ってるか、そのまま帰っている頃だろう。
"自分はもう、レギュラーではない"。初めてそう思った。自分だけ周りから取り残されたような孤独感が頭の中をしめていた。このままでは、ダメだ。今のままだと、どんなに頑張ってもみんなのようにピッチに立つことはできない。もう、ここにはいたくない。ここにいるために、サッカー部に戻ってきたわけではない。こんなところで、絶対に終わりたくない。俺の決意が必ず報われるように立ち上がり始めた。




