8月7日 重なる記憶
昨日、傑と話をした後から、これからのことを深く考えていた。考えるだけで、家にいてもすることは、何もするのとはなかった。俺は、時折、スマホの時間を見ながら暇をつぶしていた。
すると、ドアをノックする音が聞こえてきた。妹の柚月だった。"はーい"。俺は、寝転びながら、返事をした。パジャマ姿の柚月が仁王立ちをして、俺の方を見ていた。俺は、チラッと見るなり、再び、スマホに目を向けた。柚月は、部屋に入るなり、俺の方に真っ直ぐ歩いてきた。
俺「ん?」
妹「何してんの?」
俺「いや、見てわかるやろ。スマホ触ってるんよ」
妹「そんなんわかるわ」
柚月は、笑いながら話していた。
妹「この前の話だけど‥‥」
少し恥ずかしそうに話し始めた。
俺「ん?」
妹「この前は、ごめんね」
俺「そんなん、気にしてないよ」
妹「ありがと」
柚月は、ずっと気にしてくれていたのだろうか?
俺「それより、今日部活はないの?」
俺は、すぐに話題を変えた。
妹「あるよ。昼から」
俺「あるんやったら、早く行けよ。試合に出られんくなるぞ」
柚月を部屋から追い出そうとした。
妹「うるさい」
俺「もう、そろそろ大会あるんじゃないの?」
妹「うん。次こそ選ばれるもん」
俺「絶対無理でしょ」
妹「いや、私はめちゃくちゃ上手いから。お兄ちゃんは、私の上手さしらんからな」
確かに、柚月は、高校の時、県大会でMVPをとるくらい凄かったらしい。冬の大会の時に来ていた柚月の後輩の"高〜なんちゃらさん"が教えてくれたのを覚えている。
俺「そんだけ上手かったら試合出れるでしょ」
妹「まだ、入ったばっかりやから無理なの」
俺「入ったばっかちゃうやん」
妹「うるさい」
俺「ハハハ。まぁ、頑張ってくださいな」
俺は、笑いながら話した。
妹「それより、お兄ちゃん、今日時間ある?」
俺「うん。どうした?」
妹「今日さ、夜に、バスケやるんやけど来てくれへん?」
俺「は?なんで?」
妹「人数集まらんくて、いろいろお願いしてるんよ」
俺「えぇー。嫌やって」
妹「なんでよー。暇やろ?」
俺「いや、女子の中でやるの嫌やって」
妹「北條さんも来るよ」
俺「なんでアイツくるん?」
俺には、なぜ、アイツが来るのか理解できなかった。
妹「来たら、わかるから」
この後、傑とあんなことになるなんて、思いもしなかった俺だった。