9月26日 3区
夕暮れがグラウンドを俺は、黙々とドリブル練習に励んでいた。昨日より、だいぶ痛みはひいているみたいだ。足元に吸い付くように滑らせながら、ボールをコントロールする。昔のようにはいかなかったけど、少しずつ思い通りの感覚に近づいていた。
意のままに操られていた。昔の俺だったら、コースを縫うように左右へと切り返し、ディフェンダーを幻惑するようにボールを運んでいるイメージ。けど、今それはできない。いつかできる日を信じていた。
ー9月24日ー
2区を走り出した林は、いったいどこにいるのだろうか。俺たちがいる場所からは、もう見えなくなっていた。2区は、7キロだがアップダウンに林がどう対応するかがポイントだった。3区には、走るのを得意としていない槙が控えているだけに、湊人もハラハラしていることだろう。
湊人「どうだった?」
俺 「いやー、脚がキツかったな」
脚をさすりながら、湊人の方に目をやった。湊人の出番はまだ先だ。
湊人「痛めてないか?」
俺 「ああ。たぶん、筋肉痛程度だと思うよ」
湊人「それは、よかった」
本気で俺の脚の心配をしてくれるコイツはやっぱりいい奴だ。1位の林がこっちへと帰ってくる。もう、だいぶへばっている様だ。
俺 「あんだけ走ったの久しぶりだからな」
湊人「でも、やっぱりお前は速いな」
俺 「そうか?」
できる限りの力は出したとはいえ、まだまだ本気とは言いにくい。もっと頑張ればできたはず。
湊人「ああ。あんだけ差つけれてたら大したもんだぜ」
俺 「だといいけどな」
3区の槙は、大きい体を屈伸させながら、今か今かと林の帰りを待っていた。
湊人「戻ってきたな」
俺 「ホントだ」
俺たちのチームは、帰ってきた林に対してエールを当てた。帰ってきた林は、なんとか1位を死守して、次の槙へとタスキをつないだ。しかし、後続との差はほとんどなくなっていた。俺が作ったものはほとんどない。まぁ、仕方ない。これも駅伝の一つだ。槙の後続の選手は、走り出してわずか1分ほどで並ぶ。大丈夫か?そして、3位の選手も迫っている。ヤバいな、、、、。そして槙たちは、俺たちが見えないる裏道へと走っていったのだ。このままいけば、帰ってきた時に3位というのは全然ありえる。あとは、どれだけ耐えてくれるか。そんなことを考えながら俺はゆっくりと立ち上がったのだ。




