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日常で世界を変える(喜早編)  作者: mei


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9月23日 ベンチプレス

 グラウンドの隅で大量の汗をかいていた。今日も、相変わらず別メニュー。他の選手たちが一生懸命走り回っているのに。何もできないのがやっぱりもどかしかった。鋼鉄のバーベルが、重量挙げ台の上で冷たく光っていく。グラウンドの騒がしい声が俺にも届いてくる。俺は、後輩の山田と一緒に声を出しながら、ベンチプレスに取り組んでいた。山田は、ベンチプレスの台に横たわり、バーベルを両手で彼の目は、バーベルに集中している。

 俺は、ゆっくりと息を吐き持ち上げる。バーベルは、筋肉に食い込むような重みで、俺に圧をかけてくる。苦しい。苦しい。なんで、こんな苦しい思いをしなければならないんだ。それでも、ゆっくりとバーベルを上げていく。すると、額から汗が流れ落ちてくるのがわかった。バーベルは、段々、頭上に上がる。これ以上上がらないところで、数秒間キープする。しかし、腕がガクガクなってしまう。山田のカウントダウンがあまりにも遅すぎてしまい、声を出してしまった。おい、もっと早く数えろよ!!ニタッと笑いながら、俺の方を向いた。

 あと、5秒。いつもの5秒がとてもゆっくり感じる。こういうトレーニングをしている時にタイムを測られるのは苦手だな。4.3.2.1。終わりーーー。息を吐き、バーベルを一気に下ろした。バーベルを胸の上にあるバーに置いた。俺は再び息を吸った。今のを後5回と思うと、とてもしんどいだろう。もう、既に俺の筋肉は、限界に達している。一旦、起き上がり、みんなの様子を見つめた。今は、PK戦の練習をしていた。この前の練習試合では、PK戦で負けてしまったもんな。キッカーの湊人は、豪快に蹴り上げゴールネットを揺らしていた。ゴールに入っものの、そこに笑顔がなかった。

 現実逃避してはダメだ。今の現実は、ベンチプレスだ。ベンチプレスの台に戻り、タオルで額のを拭き取り再び持ち上げることにした。俺は、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、再びベンチプレスを始めた。今は、苦しいけど毎日のトレーニングに満足している。完治はしていないけど、自分の中で強くなっている気がしていた。ウォー!!!大きな声を出しながらバーベルを持ち上げた。再び、山田がゆっくりタイムを測り出す。なかなか、ラスト5秒までいかない。早く、早く、早く。心の中で叫んでいたら、山田がカウントし始めた。俺は、真っ白い雲の先を見つめながら声を出した。カウントの合図とともに俺は、バーベルを下ろした。

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