8月5日 選択
俺は、昨日、柚月から言われたことを思い出していた。俺の選択肢は、本当に正しかったのだろうか?柚月があれだけ説得してくれたのに、その期待に応えられなくて後ろめたさだけが残っていた。
ー8月4日ー
俺がサッカーをやめる発言をしてから、10分が経過していた。妹の柚月は、俺がサッカーをやめることを拒んでいた。
妹「よくないよ。後二年くらい頑張れるやろ」
母「旭が決めたなら、それでいいでしょ」
妹「だめ。お兄ちゃんがよくても、私が嫌だ」
柚月は、なぜ、そこまで俺がサッカーをやめることに否定するのかよくわからなかった。
母「柚月、もういいでしよ。それより、今から夕飯作るからこの部屋から出ていきなさい」
妹「嫌だ」
私「じゃあ、俺はどんな理由でもやめたら、ダメなの?」
俺は、柚月の目を見ながら話した。
妹「今のお兄ちゃんの理由じゃ納得できないっていうこと」
私「難しいなぁ。じゃあ、柚月は、バスケずっと続けるの?」
妹「大学生の間は、続けるよ」
私「でも、試合出れてないんじゃないの?」
俺は、つい、柚月が言ってほしくないことを言ってしまった。
妹「うん。今は、一年生だから出られないけど。四年生になっても出れる確率は、ほとんどないと思う」
柚月は、聖徳高校から城西大学へとスポーツ推薦で入学した。しかし、たくさんの部員がおり、レギュラーどころか試合にでることすら難しい状況にいた。
私「‥‥」
妹「‥」
私たちは、うまく話せないでいた。
私「柚月は、何のためにバスケするの?」
妹「何のためかぁ‥‥」
私「‥‥」
妹「バスケが好きだから」
私「俺は、そこまでサッカー好きになれへんかったよ」
妹「でも、全国大会の時、凄い楽しそうやったよ。あの時の気持ちわすれたの?」
柚月に言われて、昨年のことを思い出していた。
私「あれは、試合やからそう見えたんじゃない?」
妹「そうかな?」
私「そうだよ」
妹「お兄ゃん、もう一回サッカーやろうよ。今度は、私のためにやって」
まさか、柚月にそんなことを言われるとは思わなかった。小学校からサッカーを始め、中学校の時には、県大会に出場を果たし、スポーツの名門校である江陵高校に進学した。
その江陵高校では、全国大会に出場し、大学へのスポーツ推薦も勝ち取った。高校も大学も学費を払った上、サッカーのユニフォームやスパイク、度重なる怪我の治療費など今まで、家族には、散々サッカーの手伝いをしてもらった