8月4日 喜早柚月
今日は、練習が休みになった。急遽、雨が降り出し、グラウンドも使用できなくなり、休養日となった。私は、日曜日で家族全員がリビングにいたこともあり、14時頃に、サッカー部をやめることをつげた。
母や父には、怪我をしてからやめる可能性があることを告げていた。しかし、妹の柚月には、言っていなかった。昨年の全国大会には、柚月が友だちや後輩を連れて応援に来てくれた。私は、柚月たちの目の前で、2つのゴールを決めたのを覚えている。ゴールを決めた直後の柚月の表情は、本当に嬉しそうだった。
そんな柚月に、やめる報告するのは、つらかった。柚月は、聖徳高校のバスケ部で、県大会でMVPを受賞するほど上手だった。その後の全国大会では、スカウトの目に留まり、バスケ部が強い洛摂大学にスポーツ推薦で入学していた。
私「今月で、サッカー部やめることにした」
母「本当にそれでいいのね?」
私「あぁ」
母「もう、退部届けは、提出したの?」
私「いや、明後日に提出する予定」
母は、机を拭きながら話した。
妹「私、聞いてないよ」
机を叩く音とともに、妹の柚月が大きな声が聞こえた。
私「今、言ったから」
妹「まだ、やれるよ。もうちょっとやろうよ」
柚月は、優しく話してくれた。
私「ありがとう。でも、もう決めたから」
妹「何が原因なの?」
私「まぁ、いろいろよ」
妹「なんでやめるかちゃんと教えて」
柚月の表情は、少しずつ強張ってきた。
母「柚月、もういいでしょ。旭が決めたから」
粘る柚月に対して、母は釘をさした。
妹「ちゃんと知りたい。教えて、お兄ちゃん」
私「そんな深い理由じゃないよ。自分の実力の限界がわかったからやめるだけ」
妹「それは、実力がないからってこと?」
私「自分は、これ以上伸びないかなって思ったから」
これから先、あの全国の舞台にいる人にはなれない。それは、どんなに努力をしたとしても変わらない。
妹「まだ、あと二年あるよ。大学卒業するまでやろうよ。就職も部活やってた方が有利になるよ?」
私「みんなからも、そう言われたけど、決めたから」
妹「まだできるって。最後までまやろうよ」
母「柚月、もういいでしょ」
母は、全国大会に負けてショックを受けていたところを間近で見ていたこともあり、俺のことをなんとなく理解してくれているのだろうと思って、母の方を見ていた。