表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常で世界を変える(喜早編)  作者: mei


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/80

9月5日 旅行

 白く輝く機体の中に座り、周りは静寂に包まれていた。窓からは青い空と雲が見える。俺は、今日から2泊3日で旅行に行くのだった。言葉を交わす人々の声が響き渡っている。その中で、遠くにいたひとりの女性が深いため息をついているのがわかった。

 彼女は窓に手を伸ばし、雲を軽く撫でるように触れるのが見えた。遠く離れた、彼女が目指す場所がどこにあるのか、彼女自身でもよく分からないでいるみたいだった。俺も同じだ。今ここにいることが自分にとっての正しい選択なのかというのは常に考える。これでいいのだろうか?別の選択はなかったのだろうか?

 もうすぐ、飛行機が着陸する。俺は、それに備えて構えていた。俺たちが乗っていた飛行機は揺れもせず、安定した飛行を続けているというアナウンスが入った。乗客たちはゆったりと座席にもたれながから、何かをしているみたいだった。何人かは在座中に眠りに落ちており、何人かは本や映画を見ている。先ほどの彼女は窓に静かに顔を寄せ、小さな世界を眺めながら、心の中で別世界に思いを馳せているみたいだ。

 俺は、時間が経つにつれ、自分の心が徐々に穏やかな気持ちになっていくことを感じた。横にいる妹や親を見るとなんともいえない不思議な感覚だ。俺は今、過去と未来のあいだにいるようなイメージを味わっていた。一瞬、夢かと思うくらいだ。運命に導かれるように、無意識のうちに関西旅行を決めていた。妹に言われたということもあるが、妹自身も一緒に行くことを大事にしているだけであって、旅行である必要性は、おそらく理解できてなかったと思う。

 俺は、窓から見える景色が自分の心の中のように思えた。ここ1ヶ月はいろいろあった。その中で、自分と向き合い続けれたのかもしれない。目の前の世界だけではなく、自分自身の内面の世界も変えずにいたのかもしれない。俺は、自分自身を見つめ、考えを整理するために必要な時間を、今、手に入れているのかもと自分に言い聞かせた。

 飛行機が着陸すると、俺は、大きく深呼吸をしながら、足を地につけた。横を見ると、さっきの彼女が新たな人生を始めるように晴れた顔をしていた。俺も同じように心を落ち着け、妹の後ろをついていくように歩き出した。ここから、4人での旅行が始まる。できるだけ、みんなに楽しんでもらえるようにいつものキャラとは違う自分で動こうと思っていた。そして、新しい自分と向き合うことに巡り会えたら。そう思ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ