9月1日 監督
監督「どうだ、脚は?」
俺 「おかげさまで少しずつよくなってきました」
帽子を被りながら全体練習を見つめている監督がいた。
監督「そうか」
俺 「あの時は、本当にありがとうございました」
監督と会ったのはあの日以来だ。普段は、練習に顔を出さず、サッカーを見ながら戦略を練っていた。
監督「なんだ、それは」
俺 「ここに戻ってこれたのは監督のおかげです」
監督「戻ってきてよかったかどうかはこれからだぞ」
監督は、俺のずっと先の人生を見つけてくれているみたいだった。
俺 「はい。簡単じゃないのはわかってます」
監督「柴山から聞いてるぞ」
春翔。何を言ったんだろう?余計なことを言っていなければいいが。
俺 「何をですか?」
監督「新しいポジションやるのか?」
俺 「あぁ、、、。それですね」
どうやら春翔が言ったみたいだ。相変わらず、行動力はスゴイ。だから、簡単に試合にも出れてしまうんだろうな。
監督「なんだ、やらないのか?」
俺 「まだ、なんとも」
言葉を濁した。
監督「どちらのポジションでも覚悟を決めないとこのまま終わるぞ」
監督の言う通り。中途半端にしていても、当然結果はでないのだ。どうにかして、結果を出さないと。
俺 「はい。ちなみに戦術は、どうするんですか?」
さっきより、さらに日差しが強くなってきた。
監督「今のところは、ポゼッションをやろうとしている。今のチームには向いてないと思うがな」
ポジションサッカーは、今の主流だ。
俺 「なぜ、やるんですか?」
監督「決まっているだろ。今のままでは勝てないからだ」
俺が入る頃からポゼッションが流行っていたが、監督は頑なに拒否していた。その監督が。
俺 「なんで勝てないと思うんですか?」
監督「お前も言っていただろう?全国との差を」
俺 「はい」
たしかに、俺たちが全国を制するには、今のままでは絶対に勝てない。それは、選手の力量だけではなく、戦術やフォーメーションという監督の采配も大きかった。
監督「今は、ポゼッションがほとんどなのにうちは、まったくしてこなかった。もう、俺たちのサッカーは時代遅れなんだ。だから、新しくするんだ」
その時代遅れのサッカーで俺たちは全国に出場している。監督のサッカーは決して間違っているとは思えなかった。




