8月2日 芹澤先輩
今日は、昨日に続き、サッカーの練習だった。俺は、練習終わりに、キャプテンの芹澤先輩に時間をとってもらっていた。
俺 「キャプテン、時間とっていただき、ありがとうごさまいます」
キャプテンのごつい体を見ながら話した。
芹澤「大丈夫やぞ。怪我は、治ったか?」
キャプテンは、いつも気さくに話してくれる。
俺 「八割くらいは、治りました」
芹澤「来週ぐらいから、練習参加できそうか?」
俺 「‥‥」
キャプテンの問いかけに返答できなかった。
芹澤「ん?」
俺 「実は、今週でサッカーやめようと思ってます」
一瞬の沈黙があった後、話し出した。
芹澤「そうか‥。選手権終わったあとぐらいから元気なさそうやったのは、そういう理由か」
俺 「そうなんです。あと二年頑張りたかったんですけどね」
芹澤「なんでやめるんや?」
芹澤先輩は、俺の顔を見ながら質問した。
俺 「選手権出て、自分の実力知ってしまって。もう、これ以上無理だと思いました」
芹澤「あと二年で、変わることは難しいか?」
俺 「はい。変わることはできても、あのレベルにはいけないと感じてます」
俺は、嘘偽りなく芹澤先輩に伝えた。
芹澤「レギュラー候補の旭が抜けるのはチームにとっては痛いな。ただ、曖昧な状態でやるならいらんな」
俺 「はい。ほんとは、あと二年で全国制覇したかったんですけど」
芹澤「自分の人生やし、区切りつけるのも大事やと思う」
俺 「はい」
芹澤「でも、今までよう頑張ったな。また、何かあったら連絡してくれたら」
俺 「はい。みんな調子どうですか?」
俺は、怪我でみんなの様子を知らなかった。
芹澤「うーん。やっぱり、得点力がないな」
俺「前は、誰がしてるんですか?」
芹澤「今は、大屋、久保、坂口、鳥居、森谷かな。GWに6試合ほどしたけど、上手くいってないな」
俺 「誰がトップになりそうですか?」
芹澤「監督は、大屋と森谷の2トップを考えてるみたいやわ」
俺 「森谷かぁ。」
森谷は、二年生のサッカー部員だ。俺と同じサイドバックのポジションで、プレースタイルも似ている。入学当初は、俺よりも試合に出ることが多かったが、二年生の際に、不調に陥り試合に出られない場面が多くなったのだ。
反対に、俺は、入学当初に怪我をしてほとんど試合に出ることはなかった。しかし、先輩が怪我をしたり、同じポジションの森谷や一ノ瀬が不調になり、俺にチャンスがめぐってきたのだった。一気にスタメンまでのしあがり、全国大会に出られるまでになった。
この後もサッカー部の話は続いた。だが、サッカー部に未練はなかった。