朱雀(Pt.3)
「で、やっぱココからデータ全部引っこ抜くとかは出来ないワケ?」
「あのさぁ……そもそもそういうデータは原則のざらしになって無いの。もし仮にココからアクセス出来る場所にあったとしても、外部から入ろうと思ったら、厳重すぎて時間がかかり過ぎてどうなるやら……」
甘い期待を口にする朱雀に火曜は刺々しい早口をお見舞いする。
「つまり内部から入った方が早いと」
「なんだ、わかってるじゃん。だから普段は一からシステム……ウイルスって言った方が早いか。それを大体十日ぐらいかけて作って、中のデータをこっちに送ってって言うのをやってるんだけど、お急ぎでしょ?」
朱雀から多少の理解が得られ、トゲは抜けたもののそれでも早口は崩さない。
「まあね、十日は流石に待てない」
「幸いそういう施設には直接アクセス場所があるはずだし、現地でやるのが一番早く終わる」
「そうかぁ……」
淡々と言い放つ火曜に、朱雀は残念そうな顔を見せた。
「それで、現地にどうやって行く気?」
「……」
そう言われた黒金と朱雀の2人は何も言わずに火曜の方を向いた。
「また私が運転するの?」
「俺が運転する車にどうしても乗りたいって言うなら構わないんだが」
視線を向けられた等の本人は半分呆れ、残りの半分は諦めた表情をして、
「遠慮しとく。貴方の運転はとてもじゃないけど荒すぎる」
「うむ、出来れば彼の操縦する乗り物には乗りたくないね」
「人と比べて多少雑なところがあるのは認めるが、そこまで言わなくてもいいだろ……」
黒金は少し寂しそうな顔をした。
「まあそうなると思って、機材は全部積んであるんだけどさぁ……」
「悪いね」
「まったく……」
そうは言えど彼から悪びれる様子は一切見受けられない。
「それでは行こうか御二方」
朱雀は笑って言った。
最も暑い季節がその猛威を振るう時刻が来る手前、やれやれといった様子の火曜、バツの悪そうな黒金、心底楽しそうにしている朱雀は"職場"を後にするのだった。
『朱雀』は一応ここで終わりです。