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打倒!広辞苑  作者: ぶるうす恩田
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お題:いんじょく【印褥】 印をおす時、紙の下に敷く台で、板を紙でおおい、上を布で包んだもの。今はゴム板なども用いる。

 今も夏休みは、電車を乗り継いで各駅のキャラクターのハンコを押して集めるスタンプラリーが子どもたちの間では人気がある。大人向けに、アニメの聖地巡礼スタンプ・映画のロケ地スタンプ・四国のお遍路さんなどの刻印もある。

 全て集めると限定商品がもらえたりするということで収集癖のある日本人には昔から需要があるようだ。

 スタンプも進化していて、従来は赤か黒の一色が定番だったが特殊なインキを使用することで32色以上のカラフルなスタンプが押せるようになってきているのも好評の理由である。


 印褥いんじょくといわれるスタンプ下の板にもデジタル技術が波及し、これまではただのゴム状であったが圧力センサーとGPSを内蔵されたものが設置されるようになってきた。

 全国のどのスタンプがその日に何回押されて、どのスタンプが一番人気があるのかがスマホのマップ画面からひと目で確認できるようになった。

 子どもたちの間では、天気予報のように毎日チェックして、「俺の◎◎ライダーが一番だ」、「××モンスターが強い」などと話題になった。スタンプ1回をキャラクターの攻撃力や体力に見立てて戦い合う遊びが流行ったりもした。

 スタンプを押す手帳にもICカード内臓のものが登場し、デジタル印褥と連携して自分がいつどこでどのスタンプを押したのか?という記録がアプリで見られるようになった。それを互いにSNSで自慢しあうという遊びが子どもたちだけでなく大人や老人たちにまで急速に広まっていった。


 あえて変な周り方をしながらスタンプを押してマップ上に一筆書きの絵を描く者、特定の全スタンプをいかに早く押して回れるかというマラソンをしてスポーツ的に遊ぶ者、あるビルの中に隠して設置されたスタンプを見つける宝探しのようなイベント、足が悪くなった老人のために替わりにお遍路スタンプを押してあげてあたかも四国を巡り歩いたかのような追体験させてくれる者…。各々が好きな様に遊びを見出し、地方がにわかに活性化したのであった。


 ある男は、浮気がバレないように毎日特定の駅でスタンプを押していた。アプリを見れば妻から夫がどこにいるかは一目瞭然である。今いる駅がわかるので帰ってくる時刻もだいたい計算できて、妻は夕食をタイミングよく用意することができて温かいまま提供できることに満足していた。

 結婚前は子供が3人は欲しいと言っていた夫であったが、結婚後は仕事が忙しくてそれどころではない、とベッドに入ってもすぐ寝てしまうのが唯一の不満であった。

 妻が美容院やホットヨガ、エステや美白で磨いて美しくなってみても夫は無反応。さすがに怪しく思いはじめて興信所に夫の浮気調査を依頼することにした。

 夫にはICチップ入りの靴下を履かせ、知り合いと思える女性の家の玄関マットにセンサーを設置した。実は都内の全てのラブホテルの玄関マットにもセンサーが設置してあり、特別なサイトにアクセスすると、ICチップ入りの靴下を履いた者が、いつどのラブホテルを訪れたかが判明してしまうのである。

 その結果、夫は全ての知り合いの女性の家にここ半年以内に立ち寄り、ラブホテルも毎週利用していることがわかってしまった!技術の進化は恐ろしい!

 駅で毎日押していたスタンプ帳は、律儀にも友人に渡して毎日特定の駅で押してもらっていたのだという。


 妻は、スヤスヤと気持ちよさそうに横で寝ている夫の顔面を踏み踏みしてやった。

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