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打倒!広辞苑  作者: ぶるうす恩田
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お題:つみさる【罪避る】 弁解や謝罪をして、罪をのがれる。

 京子と大志は付き会い始めてから2回目のドライブでこころもち田舎の山まで行こうと計画した。天気は快晴で風も気持ちよく、車の窓を開ければ都会より空気が美味しい。

 特に観光地やアウトレットストアを目指しているわけでもなく、適当に見晴らしが良い所で車を止めビニールシートを広げてピクニック気分を味わおうという計画である。


 おにぎりというのは愛情がこもりすぎかな、と言い訳して京子は簡単なサンドイッチをつくってお弁当箱に詰めた。


 大志は小学生の頃、毎年夏休みに泊まりがけのサマーキャンプに参加していたこともありインドアよりもアウトドア派である。テントも張れるし釣りの技術もある。ただこのごろの女子は都会派でインドア傾向の虫嫌いな子が多い。前回はそのことを把握できずに失敗した経験もある。今回はあまり自然の良さなど主張せず、慎重に京子の興味を探りながら合わせていこうと考えている。今のところ助手席の横顔は楽しそうに見える。


 大志の見解では、OLは2つに別れる。

 普段から人工的なビルの一室で毎日座りながら事務仕事をしているので都会から離れた遠くへ行くと喜ぶタイプと、遠出をせず都会のおしゃれカフェ巡りやテーマパークの方が楽しいタイプの2つである。どうやら京子は前者らしい。大志は少しスキルをみせてもいいだろうというジャッジを下した。


 小川も流れ見晴らしもよく、他にも人がまばらにピクニックをしているというそこそこのポジションで車を止め、お昼にすることにした。大志は火を起こして湯を沸かしコーヒーを淹れた。

 自然の中でたちのぼるコーヒーの良い香りが京子の目も潤ませていた。


「おにぎりにしなくてよかった!パンの方がコーヒーに合うね」


 話も弾みすぐに夕暮れになった。思いのほか日が落ちるのは早く、キャンプ道具を車にしまい終わる頃には、道は真っ暗になった。人の気配もない。

 帰りはカーブも多く視界が悪く、来る時に走ってきたのと同じ道だとは思えないほど走りにくい。とその時、早く帰りたい焦りでスピードを出したのがいけなかったのかバスンと車のタイヤで何か大きなものを踏んでしまった。


 大志はブレーキをかけ車を止めて降り、後方を確認しに行く。なにか嫌な感じがしたので京子には助手席で待っていてもらった。

 歩み寄っていくと黒い塊がそこにはあった。それはやはり想像したくはなかったが、人間の倒れた姿だった。息をしていない。即死であろうことがわかる。

 なぜこんな民家もない山道で人が歩いていたのか?

 走行している時は姿が見えなかった。やってしまった、という思いとせっかくの休日に京子に迷惑をかけてしまったという後悔の念が広がる。があきらめて京子の座る車に戻り、事情を話し警察と救急車に連絡することにした。

 ほどなく救急車が来たがやはり被害者の命は途切れており救命不能。大志はそのまま連行され、京子は事情聴取ののち自宅に帰された。


 その道路の脇の森で一人の男が一部始終を見ていた。

 その男こそが、あの黒い塊を轢き殺した張本人であった。男は轢いたあと、一瞬でその後の暗い未来を悟り、とっさに車ごと横の森のなかに隠れることにした。

 自白しようかこのまま逃げようかと車の中で悶々と悩むこと小一時間。そのときバスンと大きな音がなった。男が死体をそのまま放置したため、男のあとを走ってきた車がもういちど轢いてしまったのだ!


 そのとき悪魔のような閃きが男の脳に走った。

 死体を轢いた事実をあの車のせいにしてしまおう。男は何も見ていないことにする。犯人は彼になるのだから警察に追われることもないだろう。車は洗車して凹みを直せば問題ない――


 男はひととおり警察や救急車が去ったあと、朝まで待ってゆっくりと走りだした。ごめんなさいごめんなさいと心の中で何度も謝り罪避つみさった。

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