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青春を終えた夏  作者: 浦戸蛍
3/3

破2

「ロリ百合」と「独白」です。

 人の気配の薄い教室に吹き込んだ初夏の風が分厚い本のページをめくる。静謐な空間に混じる微かな紙の音。何処か心地よいその音を聴くのは、その本の持ち主である小学校一年生の佐藤礼ただ一人だ。

 セミも鳴かない頃と言えど、陽光に温められればそれなりに風も熱気を孕んでいる。礼は髪と共にうなじを撫でられ、うっすらとだが汗がにじむのを感じた。気づけば前髪も額に張り付いている。じっとしているにも関わらず身体のそこここに汗をかいていた。だくだくというほどではないが、いくつも珠が浮かんでいる。

 礼はポケットからハンカチを取り出して顔や首周りを拭い、窓の外に目をやった。遠く眩しい太陽。雲は薄く、広がっているのは澄み渡る晴天だ。窓側の席に座る礼を鋭い直射日光が焼いている。独りきりの教室は既に夏のような熱さに満ちていた。

 ウンザリして彼女はため息を吐く。視線を落とすと自然、運動場が写った。同級生が十数人、キックベースに興じている。誰とも知れぬ笑い声が響いていた。男女の垣根なく公平に遊べるのはある意味幼子たちの特権だ。子供の性質は大人のソレと比較してまことに特異なモノなのだから。

 礼は同級生を冷めた目で一度見やり、読書を再開することとした。栞を挟んでいたページへパラパラと戻し、切り替えたように文字を目で追いかけ始める。すらすらと流れ込む文章の水。想起される情景を眺めながら、物語にとぷとぷと浸っていく。

 最初にまず、音が消えた。次いで光が塗り替えられる。代わりに浮かび上がり、広がり行くのは脳内で構築された世界だ。豪華な音楽と豪奢な装飾。絢爛な輝きが視界を埋めてゆく。礼は今この瞬間、確かに世界と切り離されていた。肉体だけがそこにあって、意識は全く別の場所を遊覧しているのだった。

 そしてそのため、不意にもたらされたその刺激に対して、彼女はあまりにも無防備だった。

 後ろから忍び寄るのは小柄な影。ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべながら、ショートカットの影は両手を大きく広げる。ワキワキと人形でも操るように指を動かしてから、そして。

 「おりゃぁああーーーーーーーーーーー!!!」

 読書に夢中になっていた礼のお腹にその両手を当ててから、こちょこちょと指で思いっきりくすぐり始めた。

 「ひゃっ!」

 突然の刺激に反射して礼は背筋を一度ピンと伸ばすも、すぐに姿勢は前傾となる。震えながら机に突っ伏してしまう。耐えかねて、いつの間にか熱く声を漏らしていた。

 「んっ!やっ、あははははくすぐったい。ちょっとアスカちゃん!!んんふ、はははっ!ダッダメェ。そっそれホントぉくすっぐたいからぁ。あははは、だからダメだって――!!」」

 教室を泳ぐ礼の高い笑い声。少女らしい、年相応の可愛らしい音が凛と響く。

 明日香はその声音に呼応するように、より一層指の動きを激しくした。

 ピアノの鍵盤の上でも滑るかのように、指先は柔らかに礼のふにふにとした横腹を舐め回す。第二関節の部分を使って絶妙な力加減でさわさわと撫でこすって弄ぶ。身体の中、血管よりも薄皮一枚内側のところを絶えず奔る微弱な静電気。そのピリッとした刺激はひたすらにこそばゆく、どうにももどかしい。

 我慢できるかどうかの瀬戸際で、しかし少しずつ慣れてきた礼はくつくつと漏れ出る笑い声を抑えようと口に手を当てた。一生懸命に口元を押さえつけるその手の力は、まるで彼女の意志の強さを反映しているようでさえあった。

 けれど抵抗空しく、刹那の後に彼女はあえなく甘く声を出していた。

 今までの明日香のこちょこちょは指の平たい部分を駆使したソフトタッチだった。

 それはつまり、面による刺激。

 継続的であるが故に比較的穏やかで、安定的である代わりに決定打に欠けていた、と。

 もしも、そのように理解し解説するならば。

 今まさに明日香が行ったのはその真逆、わずかな隙間さえも切り裂くような線による刺激。

 当然子供らしい柔らかな指による凶行ではない。

 軌跡を描いたのはその指の先の更に先、少し伸びている丸みを帯びた形のいい爪。

 固めたガードを切り開く一閃が、お腹のラインをなぞるように素早く振り上げられたのだった。

 「ひゃん!!!」

 スッと引かれたその刺激に礼はソプラノを上げて一際悶える。今までとまるでベクトルの違う奇襲、そのあまりの不意打ちに、抵抗しようと力を張っていた身体は急速に弛緩してしまう。けれど明日香は全く手を緩めない。再び面でのくすぐりに変更して、容赦なく礼の身体を指先だけでいじり倒し続けた。

 緩急をつけるように織り成される面と線による間断のない波状攻撃。いたずら心を象徴するような手練手管の超絶技巧。

 それは明日香の手に秘められていたあまりに特殊な「こちょこちょ上手」のスキルが生み出した一つの奇跡だった。

 やがてその手は次第におへその方へと移行し、縁をかたどるように爪で平たく引っ掻き始める。カリッ、カリッ。傷が付かない程度に力を込めた愛撫はネコのそれに近しい。皮膚の裏の奔流は際限なく加速し、礼から反骨精神を削いでいく。

 その頃にはもうはーはーひーひーと高らかな笑い声を無防備に上げ、上体を前後左右に揺すらしていた。身体の動きに合わせて少女特有のナチュラルな艶を持った長い髪が振り子を描く。香るシャンプー―の匂いにはほんの少しだけ汗臭さが混じっていた。

 礼と明日香、二人だけの教室で繰り広げられた無邪気な戯れ。

 一々可愛らしいリアクションを礼が見せるために興が乗ってきた明日香は、完全にいじめっ子のような調子で陽気な笑い声を漏らし、この状況を思う存分満喫していた。

 「ほらほらほらー!どうだ、参ったかー?!」

 「参った!参ったから止めて―――!!」

 身をよじりながら、礼は自然と零れる笑い声の合間に何とか叫ぶ。しかし降参を告げるその必死の訴えを明日香は聞いていない。彼女自身、自分が作り出した雰囲気に呑まれて歯止めを見失っているのだった。

 結果、二人のこの絡みはそれから十数秒続くこととなった。ひとしきり終わったとばかりに明日香は満足げに息を吐きながら距離を取る。

 逆に、弱いところを一方的、重点的、徹底的かつ多角的にくすぐられ続けた礼はすっかりあらゆる力を失ってしまって、解放された後も机の上にぐでーっと倒れ伏していた。いまだ触覚が残存しているのか、時折ビクビクと痙攣したように身体を跳ねさせている。

 明日香はその背中にぽんと手を置いて爽やかに声をかけた。

 「いやーごめんねレイ。すぐやめようと思ったんだけど……」

 楽しくなっちゃって、と悪びれずに話す明日香の声に、礼は椅子からがばっと起き上がった。汗に濡れた顔を振り向かせ、赤くなった涙目を震わせながら声を出す。

 「ぜっーたいウソ!!アスカちゃんは最初からわたしをこきゅうこんなんにする気だった!」

 「いやいやホントだって。最初はちょっーとでやめようと思ってたんだから」

 「むーーウソ!」

 「ホントだよーー」

 憤慨する礼に対抗するよう、明日香も声を上げる。「ウソ」「ホント」と言い合う二人の会話は、次第に水掛け論的な様相を呈していった。

 しかし、精神年齢故だろうか。残念なことに議題が上手く定まらない。

 しまいには「アスカちゃんはくすぐるのが上手すぎるからホントに息が苦しくなる」、「レイがお腹コチョコチョされたらすぐに笑っちゃうのがいけない」、「わたしはアスカちゃん以外にはこちょこちょさせるような隙なんて絶対に見せない」と言ったよく分からない主旨の口論になっていた。

 そもそもそれを口論と呼ぶべきかさえ怪しいのだが、二人は口喧嘩のようなボルテージで言葉をぶつけあう。幼き少女たちはこの頃、まだキャッチボールの適切な距離感を理解してはいないのだった。

 「分かったよ。今回は私がごめんなさいする」

 数分後、歪んだ平行線の末、明日香がそう言って頭を下げた。それを見て礼はむふーと鼻から息を漏らす。依然として不満は多少なりとも残っているものの、一応は飲み込んだようだった。

 「ちゃんと謝ったから、わたしも許す。それが約束だから」

 彼女はそう言いながら何かを宣誓するように手を広げて胸の前に掲げる。シワのない小さな手の平だ。顔を上げた明日香は一歩前に踏み出して、その手に向けて同じように自分の手を伸ばした。

 口づけを交わす恋人の距離で、二人の少女が手の平をそっと重ね合わせる。トクトクと唸りうねる脈がお互いに伝わっていた。揺れる瞳で見つめ合うのもしばし、二人ともすぐに瞼を下ろす。

 上履きのつま先同士がこすれ合う音さえ鮮明に聞き取れる静寂が二人きりの教室を満たす。運動場から響くクラスメイツの明るく無邪気な笑い声。二つの対比がどことなく背徳的な気分を沸き上がらせていた。羞恥と熱で頭がくらくらしてくる。ピタとくっつけた手と手だけで少女たちは倒れないようにお互いを繋ぎとめ合っていた。しかし当然人の手は磁石ではないので、それだけの結びではいずれ離れ離れになってしまう。

 だから。

 文字通りの手探りで、静かに、呼吸を計りながら。

 どちらからともなく、二人はじっとりと汗に濡れる指を絡ませ合った。

 肌の柔らかさと、その裏にある血の温かみと、何より最奥に潜む骨の硬さを何も言わずに咀嚼する。結ばれた二人は床に背丈よりも長い影を落とし、微動だにしなかった。

 もし今誰かが入ってきたら、一体この二人は何をしているのかと疑問に思い、ともすれば激怒したかもしれない。しかしついぞ静寂しじまは乱されなかった。これは礼と明日香にとって厳かな、必要不可欠な儀式のようなもので、だからこそ空間を包む静謐にはある種の緊張感さえ宿っているのだった。

 僅かな面積でも確かに触れ合い、身体が持つ熱を共有し合う。

 そうして二人はお互いが抱えた不満、凝り固まりそうなわだかまりをドロドロに溶かしていく。一人では単純に火力が足りないから、だから二人で協力して処理をする。

 簡単な話で、分け合ったのではなく出し合ったのだ。与えて与えられて、けれど全ては各々の心の内で済まされる。

 二人が共有したのは「感情」という精神的かつ観念的なモノではなく、「温もり」と言う極めて物質的なモノだった。共感や思いやりとは似て非なる独自のコミュニケーションが二人の間では交わされていた。

 「……アスカちゃんは、もうこちょこちょ禁止だからね」

 「えーそれは困る。レイの笑い声、私好きだもん」

 心の整理をつけ終えたのか、礼と明日香はけたけたと他愛もない会話を広げ始める。依然目は瞑ったままで、指も繋ぎ合ったままだ。語り口は穏やかに、清算を終えた二人は後日譚のような軽やかさで緩く間延びしたボールを投げ合う。

 「レイってば、いつも本を読んでばっかりでしょ?楽しそうだなって何となく思いはするけど、イマイチそれが伝わらないんだもん」

 「別に……。わたしは十分楽しめてるから」

 「そうだとしても。私はね、レイに楽しさを伝えてほしいの。レイの楽しい気持ちが分からなくても、レイが楽しいってちゃんと思えていることが伝わったら、私もきっと楽しくなれるから。そして私が楽しいって思ってることがちゃんとレイにも伝わって、それでレイも楽しくなれたなら、もうそれは最高」

 明日香は話す。そして笑う。歌うように、気持ちよさそうに。

 それからするっと、明日香の手が解けて離れた。礼が静かに目を開くと、数歩移動した彼女は青空を背景に満面の笑みを浮かべていた。

 それはひと月ほど前のあの春の日、初めて明日香と友達になった日に礼が負けたと感じた天真爛漫な笑顔。

 その笑顔のまま口を動かし、明日香は元気ハツラツという言葉が相応しい声を上げる。

 「二人の約束、もう一個追加ね。はい、りぴーとあふたーみー!」

 「へっ?」

 唐突な転調に礼は驚いて間抜けな声を漏らすも、明日香は一向に気に留めない。両腕を高く掲げて万歳三唱、意気揚々と宣言した。

 「ひとーつ、友達とは名前で呼び合おう!

  ふたーつ、謝った時は許してあげよう!

  みっーつ、仲直りの時は手を重ねよう!

  よーっつ、楽しかったら笑顔でいよう!」

 明日香の透き通る声はラムネ瓶のビー玉のように涼やかに鳴り空に吸われる。透明で、カラコロとしているのだ。音そのものが心地よく、心をストレートに揺らしてくる。思わず魅入られ聞き惚れてしまう。それが気持ちいいなと、礼は不思議と楽しさが込み上げてきて。

 いつの間にか、その響きに続くように声を出していた。大きく小さく、風に流されてしまいそうなか細さで、それでも声を出す。

 口を閉じた時には、暖かな満足感が胸を一杯にしていた。

 「うん、やっぱりレイは笑顔の方が可愛いよ」

 向き合って明日香は笑う。礼はその笑顔が眩しくて、見つめるのが恥ずかしくて、次第によそよそしくなってしまう。「そっか」と小声で返すと、明日香は「そうだ」と再び大きな花を咲かせた。それもまた熱を感じるほどの輝きを放っていた。

 白光放つ太陽を人間が肉眼で見ることは出来ない。

 それはどうしようもない構造的な許容量の問題だ。

 炎は命を容易く燃やす。

 過度な光は視力を奪う。

 礼にとって明日香は熱で、光で。

 距離を見誤れば、痛みと共に全てが暴かれて。

 否が応でも、白と黒とをハッキリさせてしまうことになるだろう。

 「そういえば、八月の夏祭り、レイも行くでしょ?一緒に回ろう!言っとくけど私、金魚すくいで勝負したら誰にも負けないんだから」

 とや―と言いながら明日香は身振り手振りで金魚すくいを表現する。礼はその姿を見て、何かを噛みしめるように笑顔を浮かべる。

 彼女は時々、漠然とだが考えていた。「私はいつまでこの子といられるのだろう」と。

 あらゆる物語には終わりがある。幸不幸に関わらず、全てのモノは果てまで行きつけば途切れるのだ。まして人間関係の瓦解には数分もいらない。形ないものは重さを持たないモノにさえ壊されるほど脆弱なのだから。

 年端も行かない子供ながらに、陰鬱で小難しい、言語化しづらい不安を礼は抱えていた。

 きっとそれは生涯解消されない類のもので、一生抱え続けるタイプのものだ。

 全貌も内容もまだ計り知れなくて、知っているのはその重さだけ。

 けれど、今は少しばかり。

 「わたしも……アスカちゃんには負けない。金魚すくいは、得意だから」

 そう言って、ふへっと口元を綻ばせる程度には。

 その重さを忘れて、浮かれている。

 柄にもなく、他の誰でもない自分自身の意思で、礼は笑顔を曝け出していた。

 その貴重な瞬間に触れて、今度は明日香が礼に見惚れる番となる。口も開いて一瞬呆け、しかしすぐに腕をグルグル回しながらその言葉に乗っかった。

 「よーし!レイもその気なら、お祭りの日に勝負だー!」

 おー、と声を揃えて腕を高く上げる二人。そんな少女たちの黒髪を初夏の風が揺らす。うだる暑さを予兆するような熱風がパラパラと本のページをめくった。栞を挟み忘れているから、礼は後で読み返すときにきっと苦労するだろう。二人きりの教室は、いつの間にか明るい声に満ちている。

 言葉は大気を泳ぎ、空に吸われて、太陽へと羽ばたく。

 尾ひれも両翼も持たないそれが、何を頼りに何処まで辿り着けるのか。

 その答えを佐藤礼が、「私」が知るのはもう少し後の話。

 この時の幼き礼は、ただ昼休みがまだ少し続くことを喜んでいただけなのだった。

 結論から言うと、永遠なんて所詮は夢物語に過ぎなかった、と言うことになる。

 いつまでも続くと思っていた輝かしい日常も遥か後方、残像だけを残して消えた。

 時計は回る。しかし時間は流れていく。

 季節は巡る。しかし人間は老いていく。

 「いつまでも」なんてただの言葉でしかないと分かっていたはずなのに、私はそれをきちんと認識できていなかったんだ。

 だからもう、目の前に立つ等身大の影をぼんやりと眺めることしか出来ない。

 明日香はあの日、「はやいね」と呟いた。何だそれはと思い返して苦笑する。

 そもそも「早いね」なのか「速いね」なのかさえも分からない。

 前者だとして、それが人生単位の話なのか、それとも祭りにおける時間経過の話なのかは判然としない。

 後者であっても、それが花火に対する感想か、あるいは光と言う概念自体に対する所感かは曖昧模糊としている。

 しかしいずれにしても、例えその言葉にどんな意味を込めていたとしても、それは私が言うべき台詞だろうと思ってしまう。

 だって、音は光に追いつけない。

 同じ地点から、同じ時点に走り出したはずなのに、光はいつも先を行く。音が必死に追いすがっても、そこにはどうあっても埋められない差があって、見えるのは小さな背中ばかりだ。

 去年の明日香の横顔が浮かぶ。大人びた、私の知らない明日香の一面。アレを見て以来、私は少し臆病になっていた。

 隣に並び立っていると思っていたのは、私だけだったのではないだろうか、と。

 もしそうなのだとしたら、私は何て傲慢だったのだろう。

 ろうの翼を背中に付けて、蒼の彼方の光に触れようと地表を発つだなんて。

 愚かすぎて、悲劇にも喜劇にもなりえない。

 こうして明日香のいない日々を過ごすと、自分がどれほど彼女に依存していたのかがよく分かる。だからこそ、彼女の事すら理解できていなかったと想うことは口惜しく、やるせない。自己嫌悪は針となり、毒となって体を蝕んでいた。

 逃げるように夢を見る。現実から、現在から離れて、意識は過去に微睡む。繰り返し覗く光景。偽りなんてないと信じ切っていた過去の栄華。ぬるま湯に浸っていることすら気づかなかった私の昔。

 彼方と此方は反転し、佐藤礼と言う存在は液体のように薄く広がっていく。

 けれどそんな無秩序な思考の中、わだかまるものが一つだけ。

 永遠はなく、全ては流転し、やがて何もかも失われていく世界で生きて。

 在りし日に、いつか私は「ありがとう」と言えるのだろうか。

 言いたいと、そう思えるのだろうか。

次回は「マジで会話する5秒前」です。

シンジ、ミサトとの祭りに戻ります。


※次回更新は1週間後の12/21です。


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