異世界の商店街
ミナに手を引っ張られてホームへ降りた。
駅にはホームが二つあって、そのうち駅舎のあるホームには片側にだけ線路があった。
もう一方は線路がホームを挟むように配置されていた。
これを島式ホームと言う・・・鉄オタ以外にはどうでもいい話だけど。
向こうの方には留置線が数本引かれていて、貨物列車が止まっていた。
貨物列車は昔のニ軸・・・車輪が二つしか付いてない貨車で黒いのが数量、それに白い貨車、タンク車、丸太の積んである貨車、そして黒い車掌車が繋がっていた。
これだけでも鉄オタとしては素晴らしい。
駅舎は木造作りのようだけどちょっと洋風。どこかで見たような・・・。
そうだ。有名温泉地に行く某大手私鉄の遊園地最寄り駅だ。
駅舎は歴史的文化財に相当すると言う話だった。
でもあの駅はあまり情緒はなかったように思う。
改札口は鉄パイプで組んだ囲いで、猫人のおじさんが詰襟の制服を着て立っていた。
「切符を拝見します。」
そう言われて、硬券の切符を見せる。
「いってらっしゃいませ。戻られる時も拝見しますので無くさないように注意してください。」
いってらっしゃい?
それよりも、人・・・猫人だけど・・・のいる改札って新鮮な気がした。地方に行けばたまにあるけど、都会では自動改札しか見た事がない。
人のいる改札。これも味があっていい。なんか嬉しい。
駅舎の中は某遊園地最寄り駅とは違ってお洒落な感じだった。
切符売り場は機械ではなくカウンターになっていて、空港のチェックインカウンターみたいな感じだ。
その横には手荷物カウンターもあった。本当に空港みたいだ。
ただ空港みたいにモニターが光っているわけでも無く、綺麗なお姉さんもいない。
カウンターにいたのは、厳つい顔のオークの・・・おばさん。
えっと・・・頭に付けてるそのピンク色のリボンはどうかと・・・って思ったらギロッと睨まれた。
ひーすみません!
待合室にはベンチの代わりにソファが置いてあり、テーブルも置いてある。
まるで喫茶店のようだ。と言うか、喫茶店そのものだった。
メイド服の給仕さんがいるが・・・見ない方がいい気がする。
見てはいけない・・・。
見たら後悔する・・・。
ここはアキバではない・・・。
絶対違う物を見る・・・。
けどそう思ったら見たくなる。
見たらダメ!
けど・・・思い違いかも・・・綺麗なニーソお姉さんかも・・・。
ちらっと見る。
!!!!!
何あれ!?
カッパ?
カッパがメイド服!?
頭にお皿があるんですけど!
化学実験が良く分からない結果になってる!
唖然としていると、ミナから話しかけられた。
「大丈夫?まだこの世界に慣れない?」
心配そうにこちらを見ている。
上目遣い・・・
かわいい。
ジィーーーーー・・・・口直し・・・ミナを見続けてしまった。
「本当に大丈夫?」
ミナが微笑んで言った。
我に返る。
「う、うん。大丈夫。まだいろいろと慣れ無くて・・・。」
「外に出ましょう。」
ミナにそう言われて駅の表に出た。
駅前は小さなロータリーになっていた。
でも車とかバスは無く、人や獣人、亜人の類いが駅から出たり入ったりしている。
ロータリーの向こう側は商店街になっていて、いろんな店があるようだった。
食材らしき物を売っている店、服を並べている店。本屋もあれば魔道具らしい物を売っている店がある。
お店を眺めながらブラブラとミナと並んで歩いていた。
デートみたいだ。
ちょっと照れる。だけど、どんな会話を交わせばいいのだろう?
上手く話題を切り出せ無くて、沈黙してしまった。
商店街には飲食店もあった。
驚いた事にラーメン屋があった。
異世界のラーメン屋・・・どんな味なんだろう?
ラノベで日本人が異世界でラーメンを作った話しがあったが果てして?
「グ〜ゥ〜ッ」
ヤバイ。腹が鳴った。そう言えば朝から何も食っていない。
朝は気分が滅入っていて食欲が無かったし、突然異世界に転移して食事どころでは無かった。
今は何時なのだろうか?
「お腹空いた?」
やはりさっきの音、聞こえてた。
恥ずかしくてちょっと苦笑いした。
ラーメンは食べたいけど女の子と一緒の食事でラーメン屋ってどうなんだ?
「うん。朝から何も食べてないしな〜。」
ラーメン屋から美味しそうな匂いがしてくる。
ゴクリ。
「ラーメン食べようか」
ヤバイ。言っちゃった。