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異世界電車の旅  作者: TOKU MATSU
異世界初日
5/99

深く考えない方が身の為

ウォ〜〜〜〜〜〜〜〜ん、ごとん、ガタン、ミシミシミシミシ、ゴト、がたがたがた、キ〜ん、がたがたがたん。

電車は発車すると、いくつかのポイントを経て、異世界の東京駅を出た。

異世界の東京駅は日本にある令和の東京駅と違う。

駅舎は復元された赤煉瓦と同じなのだが、八重洲口の方角はビルとか建物が建っていない。

それにホームや走っている車両は全く違う。

銀色の通勤電車やカラフルな色の車両は全くいない。

何より平行して走っている筈の新幹線がいない。

茶色の電気機関車や電車、それに真っ黒なSLしかいない。

ホームも見た目は低く、屋根の柱は木か古いレールを使ったものだ。

異世界と言うよりもNゲージの世界に迷いこんだみたいだ。

結構ワクワクする。


電車はやがて本線に入ったらしく、スピードを上げ始めた。

車窓から見える景色は低い三角形の屋根の建物が続いていて、本で見た昔の東京のような風景だ。オフィス街の高層ビルや雑居ビルが無く、古いアメリカ映画で出て来るような洋風の石作りのような建物が、ところどころに建っている。

知らない街に、コトコトと揺られながら、見たことのない風景を眺めながら行く。

鉄道の旅はこうでなくちゃ!

バスの旅も良いかも知れないけど、バスは酔ってしまう。

飛行機は好きだけど、国際線は下手すると狭いところに何時間も閉じ込められるし、国内線はあっという間に着いてしまって旅を楽しんでいる気がしない。何より席が悪いと外を眺められない。

飛行機の旅はビジネスクラスやファーストクラスで無いとたぶん楽しめ無い。どっちも乗った事は無いけど・・・。

やはり鉄道の旅が一番好きだ。



景色を眺めて楽しんでいると、ミナが話しかけて来た。

「タケルさん。楽しそうね。」

「こう言うの、と言うか古い電車で旅に出るなんて初めてだし、風景も珍しくてなんだか嬉しくて・・・あの・・・名前は、タケルでいいよ。さん付けは恥ずかしいから。」

そう話していたら、ふと思い出した。

ここは何処なんだ?

どんな世界なんだ?

この列車の行き先は?

そもそもなんで切符を持っていた?

「えっと・・・」

「いろいろと分からないわよね。ここが何処なのか、どんな世界なのか・・・」

「うん。分からない事が多すぎて、何から聞いていいのか分からないんだ。僕は、令和の東京駅にいたはず・・・」

「令和?令和って何?」

「え?令和って平成の次の年号だけど?」

「えーッ!!天皇陛下崩御されたの!?」

「違う違う、退位されたんだ。それで元号が新しくなったんだ。」

「そう。そうなのね・・・。」

ミナはそう言ってなんだか寂しそうにしていた。

時代が令和になった事を知らなかったんだ。

と言う事は年号が変わる前からここにいるんだ。

どれくらいこの世界にいるのだろう?

ってあれ?ミナはやっぱり日本人なの?

「ごめんなさい。ここがどんな世界かってお話だったわよね。」

ミナは少し微笑んで説明を始めた。

「ここは異世界よ。ラノベやアニメに良く出て来るのとほぼ同じ世界。だけど少し違うの。騎士とか魔道士とか、RPGに出て来るような人はいるけど、魔王と戦っているって話しは聞いた事はないわ。」

でも騎士は駅にいたな・・・と言っても大阪のオカンって感じだったけど・・・。

「駅で騎士を見たけど、あれは何かと戦っているの?」

「たぶんそれはファッション。かっこいいと思って着ているか、着るものが無くて誰かのお古を着ているか・・・」

「あれがファッション!?鎧を着て?」

「ほら日本でも、平和国家とか言って戦争なんかしてないのに、ミリタリーファッションを着る人がいるじゃない。あれと同じと思えばいいわ。」

?????なんか違う気がする・・・。

「あと、この世界は地球とは全く異なるの。地理も社会も全然異なるわ。何しろ大地は地球みたいに丸くないみたい。なのに遠くは見えない。地球の常識が通じないの。」

地球は丸い。だから遠くのものは見えない。

ここでは遠くのものが見えないのに丸くない?

「深く考えない方が身の為よ。考えると深みにはまって訳が分からなくなるわ。こう言うものだと思った方がいいわ。」

「そ、そうなの?」

「わたしもここに来ていろいろびっくりしたけど、一番驚いたのはお金が存在しない事。」

「えッ!?お金が存在しない?」

異世界の物語では良く聖剣が高いとか、魔導具はいくらとか、魔鼠を退治するといくらとかあるけど、それが無いって事?

「みんなどうやって暮らしているの?物を買ったり売ったりする事は無いの?」

「この世界では、その人がどれだけ社会とか人に貢献しているかで買物をする量や受けるサービスが決まるの。ただし定量的に決まっているのではなくて、人を見て買える量が判断されるわ。」

「え?じゃあ、買い手の見た目で何を買えるか決まるの?」

「そうでも無いのよ。どんなに見た目が怪しくても、どんなに見すぼらしくても、見た目では判断されず、大体このくらいって言うのがわかるの。外れはほとんどないわ。」

「?????何故?????」

「深く考えない方がいいわ」

「??????」

他にもいろいろと説明してもらった。

説明を聞いているうちに、疑問に思っていた他の事も聞いてみた。

「この列車は何処へ行くの?なんで僕は切符を持っていたんだろう?」

「行く先は分からないの・・・もしかしたらずっと乗っているのかも。切符を持っていたのは・・・たぶんタケルさ・・・タ、タケルに何かの役割があるから・・・貰えたのよ。」

ん?何故か少し赤くなった?気のせいかな?

「役割・・・何だろう?それに切符は誰がくれたのだろう?行く先も・・・」

「それも深く考えない方がいいかも。もしかしたらそのうちわかるかも知れないわ。」

ミナがニッコリして言った。

かわいい。

うん。深く考えない事にしよう。


電車は大都会から郊外に向かって走っていた。




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