海沿いの駅
電車は海沿いのカーブのある線路を、右へ行ったり左へ行ったりして進んでいた。
海岸はリアス式と言うほどでは無いが、入江が多く山が海に迫っている。
そんな場所が続くと思ったら突然、電車は短いトンネルに入り、やがて低い崖の上を走り始めた。
崖の下は少しだけ平地になっていて、日本家屋のような家が並んでいる。
気がつくと、電車はスピードを落とし始めていた。
「まもなくー、松原―、松原―、停車時間は気の済むまでです。」
車掌さんが通路に立って案内をした。
ウォ〜ン、ガタン、ガタガタガタ、ガタン、シュ〜〜〜ッ、シューッ、シューーーーーーーーッ、キキーッ、ガタン!
電車は昨日止まった駅のような、片側だけに線路がある駅舎付きのホームと、線路に挟まれた島式ホームがある駅に止まった。
ただ昨日の駅とは違ってホームは長くなく、留置線も申し訳程度しかない。
「荷物を持って降りてね。」
ミナにそう言われて網棚から荷物取った。
ミナも皮のスーツケースを持って降りる。
ホームに降りると熱さを感じた。
けど海から心地よい風が吹いていて、爽やかな夏と言う感じの暑さだ。
空は抜けるような青さで、ところどころ雲が浮かんでいる。
電車は島式ホームに停車したが、駅舎から最も離れた線路だった。
ホームから駅舎へ行くには階段ではなく、踏切で線路を渡るようになっている。
駅舎は木造で、古い日本の駅のような感じだった。まるでNゲージのレイアウトに飾る模型の駅みたいだ。
改札口は木の角材を組んだもので、魔族の駅員さんが立っていた。
「いってらっしゃいませ。」
切符を確認すると、駅員さんはそう言って僕らを送り出した。
駅の構内は昨日の駅のような感じでは無く、純粋に日本風の古い駅だった。
切符を販売する出札窓口、荷物を取り扱う窓口、そして旅館とかを案内する観光案内所。
本では知っていたけど、始めて見る風景だった。
駅の目の前は2階ぐらいの高さがある崖になっていて、階段で下に降りるようになっている。
階段から降りると少し大きな通りになっていて、人力車やクラッシックカーのようなタクシーが道端に止まって客待ちをしている。
さて、荷物を持ってミナは何処に行きたいのか?
「海に行きたい!」
とミナが言った。
「海か・・・いいかも!」
駅から海はさほど遠くないように見えた。けど荷物がある。特にミナはスーツケースを持っている。運ぶのは大変だろう。
「荷物?大丈夫よ。こうするの。」
ボワッと青い光が出て、スーツケースが浮かぶ。
「凄い!この世界に来てやっと魔法を見た。」
ミナが少し照れている。
「だけどこれじゃー僕の出る幕ないな〜。」
最悪、自分が荷物を持つ事も想定していたのだが・・・。
「あら。持ってくれるつもりだったの?じゃあー・・・」
「いやいや、ここは大魔法使いのミナ様にお任せしたいと存じます。」
そう言って二人で笑った。
駅から海まで一本の道が通っていた。
道の両側には、漁具を売っている店や、海用の魔道具?を売っている店が並んでいる。
途中、Y路地になっていて左が浜辺へ、右が漁港に行く道になっていた。
とりあえず左に進んだ。
道を進むと魚料理の店や魚の直売所、そして海に近付くにつれて・・・ベタ展開なのだが・・・浜辺の入り口に水着の店があった。
ミナがこちらを見て、水着屋を見る。またこちらを見て、水着屋を見る。
そして、こちらの顔を覗き混むようにして少し微笑んでジ〜と見る。
はい。分かりました。分かりましたとも。
「少し泳ごうか?」
「うん。」
ミナが笑顔で返事をした。
ベタ展開、テンプレ展開、サービス展開、なんとでも言ってくれ!
評価してもらえると嬉しいです。
お願いします!